八章 デス・パンプキンと名乗る少女とデス・パイロと名乗る男
寒気のする声に振り返ると、黒いローブが宙に舞っていた。
「なっ……デス・パンプキン?」
ハズが小さく呟く。サミは無表情で、黒いローブを睨みつけていた。
「デ、デス・パンプキンだって?」
「嘘……」
遊馬もさくらも、黒いローブを見た。よく見ると、黒いローブから、サミのような真紅の瞳が光っているのが見える。
「……サミ=リュードュにハズ=ナイリーターか……かなり優秀な人材ではないか」
「……マクシン=リテルね」
「おっと、これはこれは、私を知っていたんですね。いやはや、嬉しいですな」
「てめえ、舐めてんのか!」
マクシンが不気味に笑い、ハズは吼える。しかし、サミがハズを抑えた。
「マクシン、あんた、どうしてここに?」
「おや? 人間界に来てデス・パンプキンの宿命を忘れたのですか? もちろん、決まってますよ。そこのお嬢さんの魂をいただきに来たのです」
マクシンはローブを取った。サミが小さく舌打ちをし、そのまま続ける。
「マクシン、あんた、デス・パイロに入ったんだ」
「何?!」
「デス・パイロ?」
遊馬とさくらが不思議そうな顔をする。マクシンは乾いた笑い声をたてた。
「デス・パイロはデス・パンプキンの人が、人間界に来てからも人間の魂を狩り続ける種族の事よ。デス・パイロはライフ・クロシーに最も狙われているの。いわば、法律違反をした違反者よ。マクシンはその中でも幹部に入るの。デス・パンプキンで知らない奴はいないわ」
「え……」
「どうです? サミ=リュードュとハズ=ナイリーター。貴方達がデス・パイロにくれば、デス・パイロはかなり大きな組織になりますよ?」
「誰が、あんな薄気味悪いところに行くんだよ!」
「薄気味悪い? ひどいですねえ。ともかく」
マクシンは不気味な笑いを引っ込め、さくらへと目を向けた。さくらがその視線に気付いて、体をすくめる。
「そのお嬢さんの魂はいただきますよ」
マクシンがさくらに鎌を振り上げながら、かなりの速度で向かってきた。そしてそのまま振りかざす。
さくらは動けず、そのまま立っていた。遊馬も、マクシンの速さについていけず、立ち止まる。
――――ガキィィィィィィン
今にもさくらに鎌で引き裂かれそうな時、大きな金属音が響いた。
「こっちの人に手ぇ出してもらっちゃ困るな」
「この人たちには借りがあるの」
マクシン鎌は動きをとめた。サミとハズが鎌で防いでいたのだ。さくらが驚きながら力が抜けたようにへたり込む。遊馬は急いで、さくらに駆け寄った。
「まさか、お二人さん、人間を助けるなんていいませんよね?」
「そのまさかよ」
サミが繰り返すと、マクシンは力を弱め、またもや、宙に浮き、乾いた笑い声をたてた。マクシンの笑い声が響く。
「貴方、デス・パンプキンなんですよ? 人間の命なんか救えるわけないでしょう。それとも、人間になったんですか?」
「てめぇ、さっきからごちゃごちゃと」
「おっ、そちらの方は……。まさかお二人とも気付いてないってことはないですよね?」
「何を?」
サミが睨みつける。しかし、マクシンはサミから目を逸らし、遊馬を見た。
「そのお坊ちゃんが、貴方達の敵であることを」
「……」
「気付いていないのですか?」
「くそっ……」
「気付いていて、庇うなんてことありませんよね?」
「黙れっ!」
マクシンが口々に言うと、サミはそれを制するように声をあげた。サミとハズはものすごい殺気を立て、マクシンをにらみつけた。
マクシンが少し後ずさりをする。
「あんたは」「俺らが」
「ぶっ殺す!」
戦いシーンは次回になりそうです……。
頑張りたいと思います。