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掛け声
その剣道選手は、道場一といってもいいくらい、とてもすぐれた腕を持っていた。しなやかな竹刀捌きを見せ、相手の面や胴を鮮やかに打ち払う。
さわやかな顔つきをした青年で、非常に明るい性格の持ち主でもあったが、いかんせん、練習や試合では、相手に向かっていく際に、おざなりな掛け声しか発さないため、いつも師範代に怒られてばかりいた。
あるとき、それを不思議に思った仲間の選手が青年に訊いた。
「なあ、お前。なんで剣道のときは、あんな声になるんだ? それに、相手の手の甲を叩く『小手』の技も全然使わないよな?」
すると、青年は笑いながらこう言った。
だって、剣道の掛け声は、メン・ドウ、だからね。
終。




