不死身の朝1――リプレイ――
――またか……これで四度目だ。
私はなぜか、同じ一日を繰り返すようになっていた。
それは例え話などではなく、本当に同じ日なのだ。
朝六時にセットしたはずの目覚ましが鳴らず、三十分も遅れて起きると、慌ててベッドから飛び出す。その日予定されている重要な会議のために新調していたスーツをクローゼットから取り出すと、急いで身支度を済ませ、階段を雪崩のごとく駆け降りる。「なぜ起こしてくれなかったんだ」と愚痴りながらダイニングキッチンの指定席に座れば、「ごめんなさい」という無愛想な返事と共に、十三歳年下の妻が朝食を運んでくる。ランチョンマットの上に、白ご飯、味噌汁、納豆と並び、そして好物であるハムエッグ……。このとき私は、仕事と家庭の様々なフラストレーションをこのハムエッグにぶつけた。やれ、焼き加減に満足がいかないとか、やれ、コショウが足りないじゃないかなどと、文句を言いながら食べ終え、椅子から立ち上がろうとしたところ――。
ガツン、と、頭に強い衝撃を受けた。耳もとでシンバルでも鳴らされたかのように、脳が揺さぶられた。それはあまりにも唐突で予想だにしない痛みであり、声一つあげることすら出来なかった。
切断された大木のごとく、前のめりで倒れ込んだ私の目の端に映るのは……フライパンを手にした妻の無機質な表情だった。
視界がブレて上手く定まらない。意識が薄れ、二重三重にも霞んで見える視野が、血で真っ暗に染まる。
そして。
私は再び、「はっ!」とベッドから目を覚ます。この繰り返しなのだ。
逃げようとしても、身体は言うことをきかない。ダメだダメだと思っても、寝室を出て階段を降り、食卓のテーブルを前に、どかりと座ってしまう。そして好物のハムエッグが出てきて……。
ああ、ダメだ。文句を言ってはいけない……。ああ、そんなことを言ったら……!
ガツン!
私は、後何度、この死を体験するのだろうか…………。
……うう、なんだか辺りが眩しくなってきた……。
終。




