好み
朝の通学路。住宅街を、二人の女子中学生が並んで歩いていた。
知的そうな黒髪ストレートロングの女の子が、隣を歩くショートボブの女の子に話しかける。
「ねえ、今日の朝食はなんだった?」
「普通に、ごはんとお味噌汁、それに目玉焼きよ」
ショートボブの子がこともなげに言えば、
「目玉焼き……」
ストレートロングの女の子がポツリと繰り返し、
「――そういえば、目玉焼きには醤油派とソース派がいるらしいわね」
唐突にそんなことを言い出した。
「そうね。私は醤油派だけど、お父さんはソースをかけてたかな」
ショートボブの女の子は思い出すように、視線を斜め上に向けながら言う。
「あっ、ケチャップやマヨネーズって言う人もいるみたいよ」
何気ない一言のつもりだったが、それを聞いたストレートロングの女の子の表情が曇る。
「そんなの全部、安直な味になるだけじゃない。子供じゃあるまいし、理解不能ね」
「そ、そうかしら?」
「ええ、絶対そうよ。通ぶって、塩派や何もかけない派なんてやからもいるみたいだけれど……邪道だわ邪道」
ストレートロングの女の子は、ふんと可愛らしく鼻をならし、機嫌を損ねたように首を振る。それを見て、ショートボブの女の子が窺うように訊いた。
「じゃあ、あなたは何をかけて食べるの?」
するとストレートロングの女の子は、キリリとした表情で前を見据え、こう答えた。
「デスソースよ」
「………………」
それを聞いて、ショートボブの女の子は目を細め、諭すように小さく呟くのだった。
「あなたが一番、邪道だわ」と。
終。




