鳥さんぽ
「もう我慢ならん!」
立派なトサカを持った一羽の鶏が言った。
「人間という奴らは、我々をこんな檻に閉じ込め、虐げている! これが許されて良いはずがないっ」
怒りを訴えるかのように、一際甲高い鳴き声を発すれば、
「そうだそうだ!」
と、他の鶏たちも、一斉に同調の声を上げる。
「今日は奴らの目にモノを見せてやろうじゃないか。人間が檻の戸を開けたら、一斉に外へ飛び出すんだ。奴らを困らせてやれ!」
「分かったぜ、リーダー!」
すると、足音に気づいた別の鶏が慌てたように言う。
「リーダー、人間が来ましたよ!」
「ようし、皆、準備はいいな? …………今だ! 行くぞ! 自由を勝ち取るんだ!」
檻の戸が開かれると、リーダーを先頭にして、鶏たちが走り出した。
「うわっ! 今日も元気がいいなあ……。ほら、エサだぞ」
飼育員が手に持ったバケツの飼料を、小屋の一角に設置されているエサ箱に補充すると、鶏たちは一転して、身体の向きをエサの元へと変えた。
――あれ……何だったっけ?
――さっきまで何かをしようと思っていたんだが。
――うーむ。
「リーダー! 飯の時間っすよ! 食わないんすか?」
「おう、分かってる……って、お前ら! 何、俺より早く食ってんだっ! ちょっと待て! 俺の分も残しておけっての!」
こうして、今日も、鶏たちの平穏な日々は過ぎてゆく。
終。