中学めおと漫才!
川里隼生小説第40作記念作
また詰まらぬ小説を書いてしまった……。(後悔はしていない)
「どうもー」
Zombie Nationの『Kernkraft 400』をBGMにステージ中央へと姿を現した茶髪の中学生男女。観客席から見て右側に男、左に女が立つ。女は数枚のフリップを持っている。
男が先に切り出した。
「僕たち『東中の光と影』でーす」
「どーもー。私は本馬快奈と言います。姉ちゃんがアイドルしてまーす」
「聖沢洋介です。ところで本馬さん」
「なんだよ?」
「漫才ってスーツでやるもんじゃない? なんで野球のユニフォームとショートパンツ?」
「いいだろ、私バファローズ好きだし」
「まあ、いい……のか?」
「いーよ。何か今日暑いし」
「暑いって半袖で? まだ春先なのに」
「あ、ユニフォームの裏に貼るカイロ貼ってるからかも」
「何貼ってんの? 外したら?」
聖沢がユニフォームを引き上げた。素肌だった。
「おわああああああ!」
「きゃーエッチ」
「ああああああ!」
「何騒いでんだよ」
「せめてシャツ着てよ!」
「暑いもん」
「カイロのせいだよ!」
「私が何着ててもいーだろ」
「何か着てほしかった」
「ところで話変えるけど、私たち今年から3年生になるじゃん?」
「うんうん。話戻すけどユニフォームだけって」
「変わらせろ!」
「そう言えば今日はそれやるんだったね」
フリップを見て聖沢が言った。
「そーだ。今日は、これを皆さんに訴えたい!」
『不審者情報の不審者は本当に不審者なのか』
最初のフリップには黒いゴシック体の文字でそう書いてある。
「どゆこと?」
「警察から『で、出た〜、不審者発生奴〜』みたいなメールくるだろ?」
「うん……表現が不自然だったけどほっとく」
「で、たまにホントにこの人不審者か? ってのもあるんだよ」
「ああ、なんとなくわかる」
「それをまとめてみたんだ」
「じゃあ最初のは?」
本馬がフリップをめくる。
『午後5時頃、帰宅途中の女子小学生の背後を男が歩いてきた。しばらくすると、男は交差点を曲がって立ち去った』
「ただ歩いてだけだぞ」
「なるほど、ただ歩いてただけに思えるね」
「だろ? じゃあ次」
『午前7時頃、登校中の女子高校生のスカートをめくり立ち去った』
「これ思いっきり不審者じゃん! もはや犯罪者じゃん!」
「ただスカートをめくって立ち去っただけなのに」
「充分まずいよ!」
「じゃ次な」
『正午頃、大阪府大阪市西区千代崎三丁目中2番1号に住む大阪市立織句巣中学校3年1組の銅子千尋さん18歳が男に「車に乗らないか」と声を掛けられた』
「被害者の情報多すぎ! むしろ被害増えるよ!」
「ちなみにこの住所、バファローズの本拠地の住所なんだよ」
「へえ……ってよく見たら中学校の名前バファローズのスポンサーじゃん!」
「これが最後な」
「え、もう?」
「前置きに時間かけすぎたんだよ」
『大阪市在住の女子中学生が汗だくになっているにも関わらず隣の男が涼ませてくれない』
「……」
「……」
「……カイロオオオオオ!」
「どうもありがとうございましたー」