立派な…、魔法少女ですから…♪
< 次元空間Type-C シグルド草原 >
[キィィィ…ッン…!!シュパァ…ッ!!]
駿(うわわっ!!?ぐっ!!?
[ドザッ!!]
説明するまでもないが、見事なまでの不時着だった。
最初と同じく背中から地面に激突しての不時着となった。
背中がズキズキと痛み、険しい顔で背中をさすりながら起き上がる。
どうやら転移からの上手い着地方法を一番最初に学ぶことになりそうだ。
[スタッ…!]
ノエル(だ、大丈夫ですかっ!?
不時着した俺を心配してノエルが少し涙目で駆け寄ってきてくれた。
当然と言えば当然だが俺以外の4人は何の苦もなく着地に成功したようだ。
リリ(見事な不時着ですね…。まあ、まだ最初の内は慣れないでしょうが段々と体が覚えていくと思いますので早く慣れて下さいね…?
クロ(ダッサイわねぇ!転移からの着地なんて基礎の基礎の基礎よ!?こんなんじゃ先が思いやられるわ!それでも私の使い魔なわけ!?
エリーゼ(まあまあ、クロちゃん♪そこまで言わなくても~♪確かにちょっとダサかったけどね♪お兄ちゃん♪にゃはは♪
ドン・マイ♪
駿(ぐっ…、、、
不時着した物理的な痛みよりも年端もいかない女子小学生に罵倒される方が何倍も痛いことを俺はこの時知ったのだった、、、
駿(えっ…と、ここが……?
ノエルに腕を引っ張りあげられながら辺り一面を見渡して問いかけた。
リリ(はい…。ここがハイドラ出現場所のシグルド草原ですね…。
[ピッ…!ピッ…ピッ…!]
電子パネルを操作しながらリリが俺の問いに答える。
リリ(気温25.4℃、空気量・空気正常度いずれも問題なし…。天候も良好…。特にクエストに支障のない環境のようですね…。
駿(あ…、もしかしてそういうのも使い魔の仕事?
リリは俺の質問を受け取り、電子パネルを閉じて俺に向き直る。
リリ(はい…、その通りです。クエストの転移先の情報は転移前に確認出来ますが、再確認は必要不可欠です…。環境がいつも正常な状態で保たれているとは限りません…。
なのでこうして転移前に調べた情報と照らし合わせて本当に安全な環境かどうかを確認するのも魔法少女のサポート足る使い魔の大切なお仕事です。
駿(りょ、了解…。
リリ(まあ、S級レベルのクエストで悪辣な環境の世界が指定されること自体あり得ませんので大丈夫なんですがね…。
クロ(けど、この前クエストで行ったコノマノロ洞窟は最悪だったわよね…。臭いしジメジメしてたし…、何より討伐相手がでっかいカエルだったし…。うっ、思い出しただけで気分悪くなってきたわ…。
駿(カ、カエル?
エリーゼ(あ~、あったねぇ♪にゃはは♪ノエルんその時、カエルさん見た途端気絶しちゃってぇ♪クロちゃんとエリーゼだけでやっつけたんだよね~♪
ノエル(わ、わわわー!?エリーゼ!駿さんの前で変なこと言わないでー!?
エリーゼ(え~、でもほんとのことだよ~?
ノエル(だとしてもだよ~!(泣)
駿(あはは…。
俺の苦笑いにノエルはさらに顔を赤くしてうずくまってしまった。
ノエル(うぅ…。(泣)
クロ(それはさておき…、ハイドラなんて見当たらないんだけど…?
キョロキョロと辺りを見回してクロが本題に切り替える。
駿(そ、そういえば…そうだな。ただだだっ広い草原が続いてるだけ…。
リリ(変ですね…?座標はここで間違いないはずですが…?
クロ(あ、ふふん♪私に恐れをなして逃げたのかしら他愛ないものね!
クロが相変わらずの口振りで鼻で高らかに笑って見せた。
エリーゼ(うーん…。確かになーんにもないねぇ~♪あるといったら~、おっきなお花さんがいるくらいだね~♪
クロ(はあ?おっきなお花さんなんてどこにいるのよ?
エリーゼ(え~、いるよぉ?私達の後ろに~♪
クロ(は?
リリ(え?
駿(へ?
ノエル(ふぇ?
[ズズッ……]
振り返るとそこには確かに巨大な植物が立っていた…。
植物が立っているという表現に違和感を覚えるかもしれないが、今コレを目の前にしてそれ以外の言葉を発することなど出来ない…。
今目の前にしてしているコレは、立っているとしか言いようがないのだ。
駿(こ、これは…、何…なん…だ?
思いがけない未知との遭遇に顔が引きつり、言葉も途切れ途切れにしか発せられなかった。
リリ(あ…。
クロ(ひっ!?
ノエル(う、う、あ…っ…!
皆それぞれそびえ立つソレに圧倒され一時体が静止してしまっていた。
皆が動かない中、静けさが場を占める。
その静けさを切り裂いたのは他でもないその未知そのものの発する雄叫びだった。
?(グゥゥゥ…!ガギャァァァァ!!!!
駿(ぐっ!?うう!!?
リリ(ん…!
エリーゼ(お、お~っ!?
ビリビリと強烈な圧迫感が雄叫びと共に放たれ、地面を、体を、そして静寂な空気を一気に震撼させた。
ノエル(ひぎゃあああ!!?お、お花のお化けえええ!!?
ノエルがあまりの恐怖に泣き叫ぶ。それを感じとり魔獣がノエルの方向に巨体を向ける。
?(グゥゥッ!!!
駿(あっ!?まずい…!!
?(ガァァァ!!!!
[シュルル…ッ!!ブァァァ…ッ!!!]
駿(ノエルっ!!!
ノエル(ふぇ!?あ、キャア…ッ!!
[バッシィィ…ン!!!!]
魔獣は太い蔓のような触手をノエル目掛けて振りかざして攻撃してきた。
俺は咄嗟に身を乗り出してその攻撃から間一髪ノエルを守ることができた。
駿(ぐっ!あ、危なかったぁ…!
ノエル(うっ…、あっ!す、すみません!駿さん!助けていただいてありがとうございます…っ!
駿(あ、いや…。てか…、コイツが…?
リリ(はい…。間違いありません…。今回の討伐対象…、フラワーハイドラです…。
駿(ふ、フラワーハイドラ…?
リリ(その名のまま…、花型のハイドラです…。
フラワーハイドラ(グゥゥゥ…!!!
異形の姿形を持ったまさに魔獣だった。
花瓶のような胴体部分から体を支える脚がいくつも生えており、腕のような触手が2本ゆらゆらと構えられている。
首が長く目が2つ…、それに加え大きな口がガパァッと開いておりヨダレとも粘液ともとれる液体をボタボタと垂れ流していた。
クロ(ふんっ!植物のクセに人間様に楯突くなんて1万飛んで1億万年早いのよ!
ノエル!立てるわよね!?
ノエル(あ、う、うん…!
クロ(エリーゼも!
エリーゼ(おー!行けるよ~♪
クロ(ん!それじゃあ、やるわよ!!
[バッ!!ババッ!!]
駿(あ…っ!だ、大丈夫なのか!?
リリ(ええ…。あのくらいの魔獣なら…。
フラワーハイドラ(ガァァァ!!!!
[バシィィン!!バシィィン!!]
クロ(ふん!そんな攻撃当たるもんですか!!
[キィィィ…ッン!!!]
クロ(喰らいなさい!Warnen:Schlag(ヴァルネン:シュラーク)∴警告せし一撃!!!
[ズシュン…ッ!!ドガァン!!!]
駿(なっ!?
フラワーハイドラ(ギギギャァァァ!!!?
クロが右手から放った単発の魔力弾がフラワーハイドラに直撃する。
その一撃でフラワーハイドラはメラメラと燃えていき絶命してしまった。
クロ(あ、あら???思ったより手応えなかったわね???はっ!ま、まあこの程度の相手私一人でもヨユーよねぇ♪あーはっはっ!
クロは途中で思い出したかのように高笑い混じりに偉ぶってみせた。どうやら思ったよりも簡単に片付いてしまったようだ。
エリーゼ(え~~!!?エリーゼ達の出番なしぃ!!?クロちゃんだけずるいよぉ~!!
クロ(あーはっはっ♪先手必勝ってやつよ♪
ノエル(よ、良かった…♪もう終わっちゃった♪ふふ♪
駿(す、凄いな…!今のが…、魔法…!?
リリ(ええ…。攻撃魔法の初歩の初歩程度の魔力弾ですが…。
[ズズ…ッ!]
クロ(もしかして今までの最速記録じゃない!?特別手当とか出ちゃうかも♪ふふん♪
エリーゼ(え~~!!? 私も私もぉ!特別手当欲しい~!!
[ズズズ…ッ!!]
クロ(あんた何もしてないじゃない?貰えるとしても私だけよ♪当然でしょ♪
エリーゼ(うみゅ~!ずるいずるーい!クロちゃんのズルしんぼ!ズルズルクイーン!
クロ(何よズルズルクイーンって!?意味わかんないし!変なあだ名つけないでよね!?
エリーゼ(だってズルズルだもーん!クロちゃんのズルッシー!ズルズルズルッシー!!
[ズズズズ…ッ!!!]
クロ(だから変なあだ名つけないでって言ってるでしょ!?
ノエル(ちょ、ちょっと…、ふたりともケンカしちゃダ、、、
[ズボァァァ!!!シュルルルゥ!!!]
ノエル(メ…!?って!きゃああ!!?
クロ(ヘッ!!?わっ!?ひああっ!!?
エリーゼ(にょわっ!?ふやあぁぁ!!?
駿(な、なんだ!!?
リリ(あっ…!?
無数の触手が地面を突き破り現れてノエル達3人を一瞬で絡めとって拘束してしまった。
その触手は先程倒したフラワーハイドラのモノと同じもので新たに10体近くのハイドラが地面から姿を現した。
FH1(ギギ…!ギギガァ…!!!
FH2(ガギャァァ!!!
FH3(グガァァァァ!!!!
駿(ま、まだこんなに!?地面に隠れてたのか!!?
リリ(そのようですね…。
FH1(グゥゥゥ!!
ノエル(きゃあー!!きゃあー!!放してー!!(泣)助けてー!!(泣)
クロ(こ、の、!油断したわ!放しなさいよ!この変態植物!
エリーゼ(アハハ~♪捕まっちゃったね~♪
[シュルル…!シュルルルル…!!]
ノエル(ピッ!?ふわあ!!!?
クロ(ちょ、ちょっと!?どこ触ってんのよ!?このエロ触手!!ひあっ!!?
エリーゼ(きゃはははは!そこ!そこくすぐったい~!きゃはははは~!
FH1・2・3(グゥゥゥ…!!
駿(お、おい!やばいだろ!?コレ!!
リリ(ええ…。これは…、18禁はまずい…、ですね…。
駿(…………は?
リリ(このままでは児○ポ○ノ法に引っ掛かってしまいます…。とてもまずいですね…。
駿(え、いや、そういうことじゃなくて…。
リリ(しかし、魔法少女と触手とは裏の世界では切っても切れない関係…。くっ…。一体どうすれば…っ!
駿(いやいや!普通に助けろよ!!?
ノエル(助けてくださいー!!(泣)
FH1(グゥゥゥ!!グガァァァァ!!!
[シュルル!!!ギチ…!!]
クロ(うぅ!!ぐっ!!
ノエル(うっ!くっ!んっ!
エリーゼ(おっ!?う!?んん!!?
ノエル達を捕らえていた触手の拘束が徐々にキツくなっていく。顔を歪めてその痛みに耐える3人。
駿(!?くっ!俺が何とか!!
[スッ…]
駿(なっ!?おい!?
リリは俺が助けに行くのを止めて俺の前に立ち塞がった。
リリ(待ってください…。
駿(な、何で!?今は魔法少女と触手の関係がどうとか言ってる場合じゃないだろ!?それに何よりもまずあんな怪物と戦わせるなんてそもそも危険すぎるだろ!?
リリ(ええ、危険です…。だから駿さんは近寄らないでください…。今のあなたでは助けに行っても歯が立ちません…。
駿(ばっ!?危険なのは俺じゃなくてノエル達だろ!?あいつらはまだ小学生の女の子なんだぞ…!?
目の前で自分の教え子達が苦しんでいるのに顔色ひとつ変えずに冷静な態度を取っているリリに俺は怒りと不信感を抱き声を荒げた。
その俺の言葉にもなに食わぬ顔でリリは答える。
リリ(……はい。確かに彼女達は幼い…。心も体も未成熟です…。そんな彼女達に戦いを強いること自体、間違っているのかもしれません…。
駿(だった…ら…!?
だったら今すぐ助けろ…!
そうリリに言おうとした…。
だがその言葉を俺は途中で飲み込んでしまった。なぜなら…、、、
リリ(お忘れですか…?それでも…、彼女達は…、、、
[キィィィ…ン…!!!!!]
駿(!!?な、何、……だ!!?
はっきりとした違いが目に見えた訳じゃない。
ただ背筋にゾクリと悪寒を感じ、俺は無意識に生唾を飲み込んでいた。
言葉を最後まで発せられなかったのはこの悪寒のせい…。その悪寒の正体が小さな3人の女の子からのものだとは知るよしもなかった。
途中で言葉を止めた俺に…、リリがクスリと笑いながらこう告げる…。
リリ(ふっ…♪彼女達は…、立派な…、魔法少女ですから…♪
第8話無事投稿完了いたしました!
いやー、前の話から随分時間が経ってしまっていたんですが、何とか8話を投稿することが出来ました♪
今話からやっと戦闘パートに入ることが出来て良かったです♪まあ、この8話ではまだほんの少ししか戦ってないわけですが…。( ̄▽ ̄;)
次話から戦闘マシマシでいきたいと思っておりますのでよろしくお願いいたします♪
けど正直心配が絶えません…。( ̄▽ ̄;)
戦闘パートの書き方、これでいいのかな?とかいろいろストイックに考えたりしてて…、まあ読者さんが見やすいようになるべく工夫しようと思っていますのでご理解のほどよろしくお願いいたします…。(泣)
ではまた次話で!