本来世界というものは繋がっていますから…。
部屋に警報音が鳴り響くなか、リリはポソリと冷静に言葉を発した…。
駿(ちょうど良いって…何が…?
リリは振り返って…
リリ(はい。これは緊急クエストの発令音なんです。
駿(緊急クエスト…?
リリ(本来クエストは受注して行うものですが、たまにその階級限定のクエストがこうやって緊急クエストとして届くことがあるんです…。
駿(そ、そうなのか…?
リリ(はい…。ちょうど良いと言ったのは…これを機に駿さんに仕事の空気だけでも感じてほしいと思ったゆえに…です。
駿(え!?じゃ、じゃあ!!?
リリ(はい…。これはチャンスです…。この緊急クエスト…駿さんも一緒に受けましょう…。
駿(えええ!!!?いやいや!待てよ!?俺まだ魔法なんて使えないし!ましてや戦うなんて!!
リリ(あ、いきなり戦闘をする必要はありませんよ?
駿(え?
リリ(先程も申し上げました通り、今回は仕事の雰囲気を感じて頂くだけで結構です。それにクエスト全てが戦闘関係というわけでは…
[ビーッ!!!ビーッ!!!ビーッ!!!]
[ブ……ッン!!!]
リリ(あ…。
リリの目の前に電子的な操作パネルが現れた。
それと同時に警報音はプツッと鳴り止ま
る…。
パネルを見ながらリリはポソポソとクエストの内容らしきものを読み上げていった。
リリ(……クエスト内容…、魔獣討伐…。
駿(ま、魔獣討伐っ!?聞く限り随分と物騒そうだけど大丈夫なのか…!?
その質問の返しはリリからではなく、隣にいたノエルから発せられた。
ノエル(あ、あの…、魔獣討伐は一番よくあるお仕事なんです…。
駿(え…!?そうなのか…!?
ノエル(は、はい…!
リリ(魔獣討伐は別の世界での任務です…。私達の世界、駿さん達の世界とは大幅に異なることなので考えづらいとは思いますが…。
駿(ま、まあ今更、別次元がどうとか言う話に驚きはしないけど…。ただ他の世界の話なんだろ?別に無理に介入する理由はないんじゃ…?
リリは淡々とした口調のまま、目だけを少し鋭く俺の方にむけて質問の答えと説明を続け出した。
リリ(なにも無理に介入しているわけではありませんよ…?
駿(え?
リリ(世界の均衡を守るということは、ただ自分達の世界を守れば良いというものではありません…。世界とはひとつひとつを指す場合もありますが、本来世界というものは繋がっていますから…。
駿(世界が…繋がっている…?
リリ(はい…、世界はお互いにバランスを取り合いながら成り立っています…。
故に、別の世界の均衡を保つということは、同時に私達の世界の均衡をも保つということ…。
例え別次元の世界であろうとも私達が救って…、そして保っていかなければならないのです…。
そう…、私達…魔法少女が…。
駿(ん…。それをサポートするのが…、使い魔の俺の仕事ってことか…。
リリ(その通りです…。
駿(………。
ノエル(あ……。
リリ(……流石に動揺されてますか…?
駿(あ、いや…、そうじゃなくて…。改めての再確認というか…。
動揺って件ならもう最初の方に嫌ってほど出しきったし…。
リリ(…?では…、再確認…とは…?
駿(俺が今まで生きてきた世界には、そういったルールが存在していたって事と。
確かにそれを守ってきた存在がいたって事…。
そして…、その存在に俺もなるんだって事を…。
納得はさっきした…。
けど不安はまだ消えてない…。
勿論、不安というのはリリが説明してくれた世界のルールや魔法少女の存在についてじゃない。
それを理解した上で俺がどこまでやれるか…
それが一番の不安に他ならない。
駿(安請け合いしといてなんだけど、思ったより大変そうだな…。怪我せずにすむ話ばかりじゃないだろうし……。
そんな後悔にも似た言葉が口から零れる。
リリはただ「はい…。」と小さく答える。
ノエルもクロもエリーゼも、その言葉を聞いて少し不安な顔になっている。
…けど、俺はもうこの子達の使い魔なんだ。
二度と不安にさせちゃいけない…。
だから俺は、俺自身の不安を取っ払うためにリリに言葉を続ける。
駿(……けど、やる価値は十分ある…だろ?
三人(あ…♪
リリ(……ふ。はい…。それは勿論…♪なんせ世界を救う手伝いなのですから…♪
駿(ん。それを聞いて安心した…っていうのは流石に調子乗りすぎかな?
リリ(それくらいの器量と度胸は必要じゃないでしょうか…♪
リリがクスリと笑う。
不安を取っ払うためには見栄を張るのが一番だなんて、我ながら変な理屈だ。
けど、今はこれでいい。
駿(ん!
リリ(ふふ…。
[スッ…]
駿(あ…。
リリは俺に少し微笑んだ後、俺から視線を外して部屋の入り口の方へと向き直った。
リリ(では…、行きましょうか…♪4人での初クエストへ…♪
駿(ん。ああ…!
ノエル(は、はい!
クロ(了解♪
エリー(お~るら~いと♪
返事はバラバラだったけど、俺も含めてみんな自然な笑顔で「勿論!」とリリに返事を返した。
駿(あ、えっと、その前に…。
リリ(ん?何ですか?駿さん。
駿(この部屋はこのままで良いのか…?
壁も天井もボロボロになってしまっているノエル達の部屋を俺は指摘する。
三人(あ………。
リリ(……………まあ、後でなんとか。
リリは適当すぎる返答を俺に告げるとそのままドアの方までスタスタと歩き始める。
訂正すると、さっきまでドアがあった方向へとだが……。
俺もノエル達もチラチラと部屋を気にしながらリリの後に続いて部屋を後にした…。
はい。今回もあとがき書いていきます♪
今回はちょっと変なところで区切ってしまって申し訳ない( ̄▽ ̄;)
今回の話自体も思い直せば蛇足みたいなもんなんですが。
前回でようやく駿の決心がついたみたいな流れだったのに今回も改めて少し駿はもやもやしてしまうというのが今回の6話です。
意図としてはですね。魔法少女の存在と世界のルールを新たに頭に入れた上での駿の葛藤というかそういうのを改めて付け足しで入れてみたかったというわけです。だからちゃんと意図があるだけまだ蛇足とは言い切れないと……思います(笑)
いやー、それにしても前回に引き続き説明台詞過多ですね(-_-;)
しょうがないんですよ…。こればっかりは(笑)
前回もそんな言い訳をあとがきに書かせて頂いたんですが…。
やっぱり説明台詞というと寡黙なキャラに言わせるのが一番自然なんですよ。そう作者が勝手に思ってるだけなんですがね(笑)
リリは幸い、この物語を書く上で一番先に設定がまとまったキャラでして、属性も寡黙、こんまい(小さい)、土星好き(?)と謎の設定も入れつつ練らせて頂きました。一番最初に登場する女の子キャラ、しかも主人公を物語の中心へと誘う重要なキーパーソンなので逆に最初にまとまってないといろいろダメでしたね。
これからもリリは物語の重要なキーパーソンであることは変わりないので、彼女に注目しつつ物語を読み進めていってください♪
お願いいたします♪ではまた次回のあとがきで♪