話しておかなければいけませんね…。
<管理局・次元転移装置室>
[ブ……ッン…!!!シュパァ…!!!!!]
[スタッ…!!]
駿(おっとと…!ふぅ…。
リリ(コツを掴んできたようですね…。駿さん…。
駿(数回目にしてようやく…な。
まだまだぎこちないけど…。
謙遜と取られるかもしれないが、着地の際フラフラとよろけたことは明白なのでただの自己申告として受け取ってほしい。
エリーゼ(帰ってきた~♪
クロ(はぁ…、アンタ反省レポートのこと忘れてるでしょ…。
エリーゼ(ハッ…!!それがあった…(泣)
ノエル(あはは…。
何気ない会話。
さっきまで命懸けで世界のために戦っていたとは思えない。
リリ(駿さんは…、これからどうしますか…?
よろしければ私がご自宅までお送りしますが…?
駿(あ…、そう…、だな。
そうしてくれると助かる、かも…。
明日、朝早いし…、課外の勉強もしたいから…。
リリの提案を快く受けることにする。
もう自分ひとりで転移できるとは言え、正直まだ不安が残る。
それもあって今回もリリに同伴してもらうことにした。
リリ(わかりました…。では、ノエルさん達は先にお部屋の方…、いえ私の部屋の方にレポートを用意しますのでそこへ…。
[ピッピッ…!ピッ!!]
電子パネルを出し、操作。
恐らく反省レポートの用意、ノエル達の部屋の復旧のための操作…だろう。
ノエルも部屋のことを思い出し、3人揃って落ち込んだ様子に…、、、
駿(あ~~~…。
ノエル(うぅ…(泣)
リリ(クス…♪では、駿さん、行きましょう…。
駿(あ、ああ。じゃあ、みんな。また♪
ノエル(あ、はい!また…♪
エリーゼ(むん!またね♪お兄ちゃん♪
駿(みんなも、あんまり遅くならないようにな。お父さんとかお母さんが心配したりするだろ?
エリーゼ(あ……、うん…。
ノエル(は…、はい…。
駿(……?
瞬間、エリーゼもノエルも声が掠れる。
疑問に思ったが、リリが俺を誘導してその場からはすぐに立ち去る形になってしまった。
リリ(駿さん…、行きましょう…。
駿(え?あ……。じゃ、じゃあ!みんな!
[ブ……ッン!!!シュパァ…!!!!!]
クロ(……………。
ノエル(ん…………。
転移装置の動作音だけが響いて、私達は3人とも沈黙していました。
でもエリーゼが私に声を掛けてくれて…、、、
エリーゼ(ノエルん…?
ノエル(あ、ううん。ごめん…。
心配してくれて、名前を呼んでくれると同時にきゅっと手を握ってくれたエリーゼ。
クロ(仕方ないわよ…。
あいつに悪気なんてないわけだし……。
いずれ知ることになるわ…。
ノエル(ん…、そう…、だね。
クロちゃんもぎこちなくだけど自分なりの言葉で励ましてくれる。
私だけじゃない、みんなだって同じ気持ちのはずなのに…、、、
エリーゼ(ん…。……ん!!さぁ!!
ノエルん!!クロちゃん!!
早くお部屋行こお!!
エリーゼ秘蔵のお菓子食べながらレポート頑張ろ♪ね♪
ノエル(あ…、、、エリーゼ…。
クロ(ん…。ふ…♪
そうね。エリーゼの言う通り…。
行きましょ、ノエル。
ノエル(う、うん…♪
エリーゼの言葉で私も、クロちゃんも少し元気をもらって、モヤモヤした気持ちを吹っ切るように私達はリリ先生のお部屋に向かいました。
……………………………………………………
<宮島家 付近の路地>
[ブ……ッン!!!シュパァ…!!!!!]
駿(よっ…と。
リリ(着地はもう大丈夫そう…ですね。
これからは認証紋をパスにして転移をしていただければ…と。
駿(ああ。頑張ってみる。
リリ(あと、これを駿さんに…。
リリは、小さな丸い宝石を渡してきた。
駿(これは…?
リリ(そのまま胸の位置にかざして下さい…。
言われるまま、その蒼く光る石を胸の丁度中心に持っていく。
すると宝石がキラリと光り、あっという間にペンダント型に形をとった。
リリ(それは、簡易型の通信端末です。
お仕事の連絡はそれを通して通知いたします…。
駿(へー。通信…、端末。
リリ(音声通信に限らず、映像通信、カメラ機能、メモ機能、えとせとら、えとせとら…。
駿(便利な物ってことな…。
リリ(はい…。
物珍しく、宝石の部分を持って掲げ、近くの電灯の光りに照らしてみる。
蒼く輝く中に、電子的な回路が見えては隠れ、見えては隠れとしていた。
リリ(駿さん…。
駿(ん?
リリ(改めて…、今日はありがとうございました…。いかがでしたか…?
人生初のバイトは…?
駿(え…と、バイトとしても、人生においても最大の経験をさせてもらったと思ってるよ…。
信じられないくらい出来事続きで、驚きのオンパレードだった…。
リリ(だと思います…。そんな中、よくあれだけの仕事をして頂いたものです…。
駿(正直、自分が一番驚いてる…。
火事場の何とかってやつ…かな?
それくらいフワッとしか自分でも捉えられてない…。
リリ(私は…、駿さんの才能であると、思っていますが…、、、
駿(い、いやいや…。
リリ(いえ、冗談ではなく、無意識とはいえ、事を成したのは事実ですから…。
駿(ん…。今言ったばっかりだけど…、実感が無さすぎて逆に不安っていうのが、正直な感想…かな。
でも、リリがそう思ってくれて、あの3人がそれで認めてくれてるなら…、頑張らなきゃって思う。
みんなの期待に応えられるように努力するよ…。俺は…。
リリは言葉を聞いて満足したように微笑みながらコクりと頷く。
リリ(ありがとう…、ございます…♪
駿(ん…。えっと、俺のことは良いんだけどさ。ノエル達、流石に帰らした方が良いんじゃないか…?
もう夜遅いし…さ?
俺のその気遣いの言葉に、リリはふっと視線を落とす。
一瞬時間を置いて、俺がそれに尋ねる前にリリは口を開き始めた。
リリ(……駿さんには…、話しておかなければいけませんね…。
駿(え?
背中にややゾクリと嫌な感覚が研ぎ澄まされる。
リリ(ノエルさん達には…、帰る場所がありません…。
3人共、両親を亡くされているんでさ…。
駿(え……!?
嫌な感覚がより鋭敏になり、背中にまるで小刀をいくつも突きつけられたようにチクチクと背中を伝って心臓に痛みが浸透する。
リリ(ノエルさんのご両親は、お2人共ご病気で…、漆黒さんのご両親は交通事故で亡くなられ、唯一の身寄りであったお祖父様も亡くなられました…。
エリーゼのご両親は…、彼女を残したまま自ら命を絶った…、と聞いています…。
駿(そ、そんな…!
心臓の痛みが激しさを増す。
キリキリと痛む度に、冷や汗が背中や額からにじみ出てくる。
けれど、リリの口からさらに衝撃的な言葉が紡がれるとは、思ってもみなかった。
リリ(……しかし、身寄りを失くしているのは彼女達だけではありません…。
駿(!?
リリ(私達の管理局に配属されている魔法少女の大半が…、身寄りを失った天涯孤独な子供達なんです…。
駿(な、何…、で…、、、?
整理が追い付いていない…。
息をするのを忘れ、苦しくなる。
まれに口呼吸をすれば、運動もしていないのに息切れをしたような感覚に陥る。
リリ(我々、魔法少女育成機関は、身寄りがない子達に、何らかの形で生きる術を失った子達に、魔法少女としての道を指し示し、希望を与える仕事も請け負っています…。
駿(確か、機関の最初の成り立ちは別…、だったよな…?
その…、魔法少女に安定した育成と収入を与える為…、だったか…?
リリ(はい…。管理局が作られたきっかけはそれですが、それよりももっと前にこの保護プログラムは実施されていました…。
育成機関の設立者、クーネルディア・E・リオット氏は、機関を設立する前は、身寄りのない子達の為に孤児院や学校の設立を援助する団体のリーダーだったと聞いています…。
リオット氏は、常に他人の救済へと力を注いできました…。
彼は後に、魔法少女の存在を知ります…。
駿(ん…。
リリ(自信の犠牲、利益を省みず、ただ純粋に命を、世界を守るために戦う魔法少女達の境遇に胸打たれ、彼は機関を設立することになります…。
駿(でも、それじゃ…、、、
リリ(はい…。続きをお話しします。
魔法少女の為に機関を設立したっていうのは分かった…。
けれど、それでは身寄りのない子が機関に多い…、という理由には直接関与していない。
その続きを尋ねる前にまたリリは話を続けていく。
リリ(身寄りのない子達が魔法少女として機関に多い理由は、そういった子達を魔法少女に育成するというプロジェクトを後に立ち上げたからです…。
管理局の当初の目的は、<あらかじめ魔法少女だった子達を援助する>でしたが、後にその子達含め、いわゆる<孤児の女の子達を魔法少女に育成して管理する>というプロジェクトを立ち上げた為に、今のような現状になっています…。
駿(え…と、じゃあ、保護された子達は、全員魔法少女に…?
リリ(いえ、全員…、というわけではありません…。
特性がそれなりにある子にだけ魔法少女の契約をさせて頂いています…。
見て頂いた通り、あのように危険が伴う仕事です…。
そこは、きっちりと理解と納得をして頂いた上で魔法少女になって頂きます…。
駿(そ…っか…。
リリ(もちろん、働くことを強制して勧誘しているわけではありませんので…、、、
適性がない子に関しては、こちらで保護責任者や孤児院を探したりして、後のケアも欠かさず執り行っています…。
働きたいという子には、こちらでご用意したお仕事をこなして頂いたりもします…。
駿(ん……。改めて聞くと、途方もなく大変な仕事だって思う…。
そういった所まで管理するとなると…さ。
リリ(いえ…、決して全てを救えているわけではありませんから…、、、
それに結局…、私達がやっていることは、生きる術を失った子供達に…、希望をちらつかせて危険な目に会わせているだけです…。
正しいことをしているかのように見えますが、根本はそうではない…。
私は今でも…、彼女達にこんなことを強いているのが、心苦しくて…、なりません…。
駿(ん……。
今までにないくらい、リリは悲しい目をしていた。
近くを見つめているようで、その先の遠くを見ているような目で…、、、
リリ(駿さんのことも…、、、
駿(え…?
リリ(強引に勧誘して…、あんな危険な目に会わせてしまいました…、、、
私にこんなことを言う資格は元よりありません…、、、
けれど…、少しでも救えることに繋がるならば…、少しでも可能性が広がるならば…と。
決してリリだけが抱える問題じゃない…。
それでもリリは背負おうとしてる…。
途方もない、世界の摂理とも言うべき巨大な責任を…、、、
決して自責を軽くするための行いじゃない…、、、
本来、戦うことさえしなくて良い子達に少しでも可能性を与える為に…、、、
その為に俺を選んで導いた…、、、
なら…、、、
駿(………。俺は…、後悔なんてしてない…。
リリ(え……?
駿(何かを失ってしまった子達に、希望を与えること…。
リリの言う通り、元を正せば、完全に正しいことだなんて言えないかもしれない…。
リリ(ん……、はい……。
駿(けど…、何も出来ないまま見捨てるなんてことは、もっと出来ない…!
リリ(あ……、、、
駿(それに、これは俺が決めたことだ。
導かれた結果だとしても、後悔しない選択をしたって…、俺は言うことが出来る…。
俺の選択で、救える命が少しでもあるなら…、その可能性が広がるなら…!
俺は…、何度だって同じ選択をする…!!
リリ(しゅ、駿さん…、、、
駿(だからリリも…、後悔なんてしないで欲しい…。
心が苦しいって思うのは…、良いと思う。
けど、そう感じても、後悔だけはしてほしくない…!!
皆の為にも…、自分の為にも…、、、
リリは、うつむいて口をつぐむ。
前髪が垂れ下がって、目元はハッキリ見えなくて、けれど低い声だけが小さい口からこぼれていく…。
リリ(……分かりました…。
ありがとうございます…♪駿さん…♪
駿(ん、ん…♪
優しく微笑みながらありがとうと伝えてくれたことに少し照れながら短く答える。
伝えたいことを思ったままに伝える…、なんて普段しないから余計に照れ臭くなってしまった。
その照れ隠し…、というわけではないが、俺はリリにひとつ提案を持ちかけることに…。
駿(え…と、リリ…。話戻って…、ひとつ、お願いがあるん…だけど…?
リリ(え……?




