プロローグ
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何でこんなことになったんだ。
すごく面倒臭い状況だ。
必死に走りながら自問自答する。
何処を見ても目に入るのは草木のみ。
だが、ただの木々ではない。
唇のついた花。
触手のような蔦をウネウネとさせて、甘い香りを漂わせている食虫植物が鹿のような動物を食べている。
木も人が苦悶を浮かべているような模様がついていたり、根を足のように使い歩いている。
というか、今はそんなことを考えている暇はない。
今現在、俺は命の危機に瀕している。
俺の後方から物凄い速さで追いかけてくるデカくて赤い熊がいるのだ。
大きさでいえば、ヒグマの3倍はデカイぞあれ。
頭部に生えている一本の角で邪魔な木を薙ぎ倒しながら一直線に追いかけてくる。
苦悶を浮かべている木がデカイ熊に薙ぎ倒されるたびに、ギャアァァとか、ア゛ア゛ァ゛ァ゛とか絶叫をあげている。
うん。めっちゃ怖いです。
「クソ!またかよっ!!」
逃げている俺の邪魔をするように、前方に赤い狼が群れで現れる。
その数は8匹。
こいつら逃げている間度々、俺の邪魔をしてくるので非常にウザい。
しかも、倒して逃げる度に数が増えていたりする。
「お前らの相手をしてる暇はねぇんだよ!」
飛びかかってくる狼を避け、避けられない奴は手に持っている唯一の武器で頭をかち割る。
狼達が怯んでいる間に包囲を抜け、熊の足を少しでも鈍らせる為に木々を盾にしながら鬱蒼とした樹海を駆ける。
「なんもかんもあのクソ幼女のせいだ!絶対ぶん殴る。泣きながら土下座させた後にまたぶん殴る!!」
俺をこんな化物のウヨウヨしている樹海に放り込んだ幼女に恨み言を吐きつつ、道なき樹海をただひたすらに逃げ続けた。
「...おいおい、こんな展開アニメや漫画で十分だよ。リアルでやらせんじゃねぇよ。」
ひたすら逃げ、辿り着いたのは。
底の見えない崖。
向こう岸は遠く、橋もない。
しかも崖の下には、ムカデが昆虫に似た羽根を生やして飛翔している。
(なにこれ、風の谷かなんかか?落ちたらどうしようもないぞ。)
引き返そうにも、既に後ろにはデカイ熊。
「グルルゥゥ」
「あー、はいはい絶対絶命の大ピンチですねー。」
もう死ぬしかないじゃない!!と言いたいくらいの絶望感である。
「やらなきゃやられる、か。
めんどくせぇ...。」
後ろは崖。
前はデカイ熊。
退路はない。
俺の使える手札は、右手にある武器のみ。
(確か、魔法もあるし俺も使えるって言われたが、使い方わっかんねー。)
使い方もわからないものは、無いと同じである。
アニメや漫画のように土壇場で使えるようになったりは現実ではありえない。
(勝ち目は...あるのかこれ?
一応、コイツの使い方は頭に入ってるが...。)
そう思いながら右手にある武器をチラリと見る。
憎き幼女から渡された唯一の武器。
使いたくないが身を守る物はこれしかないのだ。
まぁ、武器武器と言っているが、どう見ても武器には見えないんだが...。
「ガアァァッ!!」
熊が左の腕を振り上げ、鋭い爪を振り下ろす。
受けることはできない。した瞬間に押し潰され、肉片になってしまう。
「ッ!」
受けれないのならば避ければいい。
そんな単純なことではないのだが、ギリギリで回避に成功する。
「粉砕せよっ!!」
熊の振り下ろした左肩に武器の先端を突き刺し、『言霊』を発動させる。
突き刺した部分からグチャッという肉の潰れた音と共に熊の左腕が弾け飛ぶ。
「ギャガ!?」
「地よ、沼とかせ。」
今度は地面に突き刺し、熊の足元だけを沼に変える。
沼に変えたのは逃げる為ではない。
熊の動きを阻害し、確実に殺す為だ。
熊は足を沼に取られながらも、バランスを保ち、右腕で薙ぎ払う。
「地よ、隆起せよ。」
俺の足元の地面を隆起させて、熊の左上に跳躍。
左腕は潰したので叩き落とされることもない。
後ろで隆起した地面が熊に粉砕される音を聞きながら、熊の後頭部に武器の先端を突き刺し言霊を発動。
「終わりだ!破砕せよっ!」
言霊が発動し、熊の頭部が潰れズズンと巨体が倒れる。
勝った...。
結果だけ見れば無傷での勝利。
だが、数十分も逃げ続け、度々狼を殺しての勝利だ。
(...もう動きたくない。)
よく此処まで持った方だと思う。
今までなら片腹大激痛どころではない。
「なんもかんもあの幼女が悪い。」
俺がこんな面倒臭い状況になったのはあの幼女...邪神のせいなのだから。