1章、5人目
暑い・・・
ショッピングモールから逃げるように出てきた簒奪たちは人目を気にして地下から逃げていた。
「しかしあいつら何者なんですかね?」
〝隠〟は簒奪に聞いた。
「奴らはワードシーカーって組織にはいっているらしい。・・・〝アカシックレコード〟か、やっかいだな、もし奴らが手に入れたらと思うと・・・」
最後の方は聞こえてなかったみたいだ。みんな悔しそうな顔をしている。不意を突かれたとはいえ4人まとめて吹き飛ばされてしまったのだ。さらに簒奪の邪魔までしてしまったという責任がのしかかっているのだろう。
「それで我々はどこに向かっているのだ?」
桜は微妙な空気を払うように凛とした声で聞いた。
「とりあえず俺たちのアジトに行っている」
「ボス、彼女たちは何者ですか?知ら無い者を連れていくのはどうかと思うんですが」
「安心してくれ〝見〟。俺の姉と友人だ。」
そのセリフに4人とも驚く。
「ボスの姉御とご友人ですかい!こいつは驚いた、あまりにも綺麗なんでてっきりボスの女かと」
そう言いながら笑っているのは〝盗〟だ。
「そういうのはもっと声を抑えてだな」
簒奪は呆れながら二人に失礼だと思い訂正しようとした。だがここでも桜が声をだした。
「ははは!そうだなぁ、あなたの女になったら楽しそうだな!」
桜が簒奪の名前を呼ば無いのは仲間の人が誰も簒奪と言ってい無いので、もしかしたら名前を教えてい無いのかと思ったのだ。
「からかうのはよせって。それと変な気遣いは無用だ。こいつらは俺の名前を知っている」
4人とも今の会話である程度心を立て直したようだ。
「・・・そろそろ言えるな。まあ今回勝てなかったのなら次は勝て!次も負けたらその次に勝て!死ななきゃまた挑めるからな。そのためにゴリゴリ鍛えてやるからな!」
「そうか、制裁の剣はもっと殺伐とした組織だと思ってたんだがな。なかなか楽しそうだ」
そんな会話をしているうちにアジトに着いた。
「まあ適当な椅子にかけてくれ。これから今後の行動について詰めていくだけだから帰ってもいいぞ」
若干帰れ感を含めて桜に言うが躱されてしまう。
「まあそういうな。これも何かの縁だ。いさせてもらう」
やれやれと頬を書くと簒奪は顔をしめて話し出した。
「奴らの目的は〝アカシックレコード〟。これは要するに一人の人間が複数の文字を持てることをいうんだ。仮にそんなものが奴らの手に渡ってしまってはいけ無い。幸いまだ手に入れて無いみたいだからな。我らの今後の目標は〝アカシックレコード〟に成ると思っててくれ」
「だいたいはわかったけどよ、その〝アカシックレコード〟ってのはそんなにやばいのか?実際には複数文字を使えるってだけだろう?」
「そうだな、仮に〝核〟と〝爆〟という文字を同時に使えたとしたら?他にも〝地震〟や〝隕石〟なんかも起こせる可能性を持っている」
簒奪はよどみなく説明を続けた。そんな簒奪にみんなは疑問を持った。
「ボスはなんでそんなに詳しいんですか?見たことあるとか?」
「・・・正直わから無い。なぜか知識として持っている」
「ふーん、まあ俺らはとりあえずその〝アカシックレコード〟を手にいれることを目的とする感じでいくんだよな」
「ああ。それと奴らが次に現れる場所と日付も確証は無いがわかっている。13日後の京都だ。細かい場所までは掴めなかったが」
場所と日付を聞いた響歌と桜は目を見開いた。
「そ、それって!」
簒奪は何も言わずただ頷いてみせた。それだけでどういう意味かわかってしまう。
「だからお前たちには13日後、京都に行ってもらう。俺も別口で行くからな」
それを確認してから解散した。簒奪は少し急ぎめに隣の部屋に入っていった。その後を響歌が追っていったので桜は好奇心から覗いた。
「くっ」
簒奪が横になって響歌が寄り添っていた。桜は強化のてから光が出ているのを見ておそらく文字を持っているのだと考えた。入っていこうと思ったのだがその先がきになったので少し見ていくことにした。
「敵に弱みを見せないためとは言え肋骨が何本も折れているのに無茶しすぎよ。他に使える文字はなかったの?」
「くっ、・・はは、かえす言葉もねえな。とにかくあいつには隙をみせ無いようにって思ってたからな。それに俺の文字は普通より使い勝手が悪いんだ」
「だからって、その場で治療すればよかったのに」
「姉さんの文字を他の奴に見せるわけにもいか無いだろう。それに敵さんだってなんか隠球持ってたっぽいしな。あのまま残ってたら別の面倒ごとに巻き込まれちまう可能性だってあったからな」
会話をしているうちに響歌の手から出ていた光が弱くなった。
「はい、おしまい。あとは2日ほど休めば良くなるわよ」
「いつもいつもありがとう。すごく助かってる」
「簒奪にとって私の力が必要なくなることが1番なんだけどね」
これ以上聞いていても悪い気がしたのでそっと扉を閉めようと扉を押したときに本当にわずかな音がなった。その音を簒奪はとらえた。
「誰だ!!」
桜はやってしまったという顔で中に入っていった。
「すまない、二人が部屋に入っていくのが見えたのでこっそり後を付けてしまった」
「・・・と言うことは全部聞こえていたってことか。選べ。ここで俺らの仲間になるか今日の記憶を全部なくすか。好きな方を選ばせてやる」
「ち、ちょっと待て、さすがに今日の記憶がなくなると皆に説明ができなくなってまう。それに仲間ってことは私に制裁の剣に入れと言っているのか?」
有無を言わさない表情で頷いて桜を見つめる簒奪。響歌は黙って見守っている。簒奪に全て任せているのだろう。
「もし仮に入るとして何かすることはあるのか?」
「文字を使って契約を結んでもらう。情報秘匿の契約だ。後は有事の際は俺たちと行動を共にしてもらう」
「契約はなんとなくわかる・・・後行動を共にするとは?」
「俺たちは無所属だが世間の認識としてはダークホルダーのくくりに入っている。だからもしこの街、いや最悪この国から出て行くことになった場合付いてきてもらう。一生だ」
制裁の剣に所属する場合のリスクが大きすぎて子与が出ない桜。制裁の剣に入ってみたいのは山々だが今の生活や人間関係を壊してでも付いていく気にまではなれない。
「なぜそんなにきついリスクを設定するんだ?」
「姉さんの持ってる文字は〝治〟。この文字はランクでいうとSSSランク相当。能力は完全完治と統治力を引き上げることができる。俺は家族が1番大切だから死んでも守る」
完全完治とは文字通り死んでいなければ正常だったときの体に戻すことができる。1日や二日の期限を設けるのは怪我をみてから治るまでがすぐなので体の神経が誤認してしなう可能性があるのだ。もう一つの統治力とは、対象1人の政治的能力を引き上げるものだ。しかし政治的能力を伸ばす分、何かしらの感情を削る。楽しみ、悲しみ、怒り、憎しみ、恐怖、それらの感情を削ってしまうため使用させたくないのだ。人間の器を治すと同時に人間そのものを壊してしまう。
「なるほどな、1日、待ってくれないか?家族の顔を見て決めたい」
「わかった。しかし俺も付いていくからな」
その日の夜に簒奪たちは桜の家にお邪魔をした。
「ただいま、今かえたぞ!」
「あ!おかえりお姉ちゃん!無事だったんだね!」
玄関を入ると早速紅葉に出会った。どうやら桜が帰ってくるのを今か今かと待っていたそうだ。
「お邪魔します紅葉ちゃん」
後ろの簒奪に声をかけられて気がついた。
「あ、どうもこんばんわ!この時間にいらっしゃるってことは泊まっていくんですか?」
「ああ、そのつもりだ」
「!!ついに、ついにお姉ちゃんに春が来た〜!これはお父さんに報告だね!」
それだけ言うと脱兎のごとく駆け出していた。
「ちょ、ああくそ、行動力だけは私に似ているな」
桜は両親に話があるのでリビンングに出てきてもらった。ちなみに理事長の幸多は簒奪を見たときに睨み殺せるんじゃないかというぐらい眉間にしわが寄っていた。ちなみに紅葉は端っこでお菓子を食べながらこっちを見ている。
「単刀直入にいうとだな、もしかしたらたびにでるかもしれない。その賛否を聞きたくてな」
「旅っていうのはどこまで?」
桜の母で〔上野 朝顔〕という人だ。専業主婦をやっているらしい。
「期限も場所も決まってはいない。もしもの話だよ母さん」
それだけ言うと二人は見つめ合ったまま動かなくなってしまった。視線を幸多に移すとこっちを向いたのでそのまま見ていると話しかけてきた。
「あい小僧。まさかてめぇ、うちの娘たぶらかしたんじゃねーだろうなぁ?」
「あなたすこし黙ってて。・・・もし旅に出る場合、この男に付いていくの?」
幸多が話し始めると朝顔が遮り質問した。
「そうなると。旅に出るとしたらこの男に付いてくことになるだろうと」
桜から簒奪に視線を移した。
「あなたはどうなの?」
「桜がついてくるというのであれば全力で守りますよ」
「そう・・・わかったわ、許可します。娘をよろしく」
それだけ言うと紅葉と幸多をつれてリビングを出て行ってしまった。
「まさかこんなにあっさり許可されるとはな」
「いい家族を持ったな」
「え?」
「いや何でもないさ、それよりどうするんだ?」
桜は今後を聞かれ元々許可がでたら付いていくつもりだった。
「私はまだ見たことのない世界を見て見たい。それに簒奪とだったら毎日楽しそうだ」
そう言って微笑みかけてくる桜に少し照れくさそうに答えた。
「そうか。なら付いて来い。今日からお前も〝制裁の剣〟だ」