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文字保持者〈ワードホルダー〉  作者: ピーナッツバタークリーム
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1章、出会い

簒奪が強盗たちを退治したその日の夜に、とある場所の一部屋で6人ほどで話し合っている人影があった。


「試作番号3番は”大義賊”により銀行襲撃を失敗したそうじゃ」


髭がすごい伸びている60代くらいの小柄なおじいちゃんみたいな人がそう報告した。


「まったく。【悪】の手下たちは本当によく”大義賊”にボコボコにされてるわよね〜?大丈夫なの?そんなので?」


「大きなお世話だ【化】。”大義賊”にやられたあいつらがカスだっただけの話だ。次あったら俺の手で息の根を止めてやる」


”悪”に近づいて声をかけたのは”化”とよばれている女性だ。見た目は20歳前後に見えるブロンドヘアの美女だ。しかし”悪”達はそのことに微塵も興味がなそうだ。なぜならその見た目が、というより性別そのものが本当なのかもわからないのだ。


「静まれ」


ちょうど”化”が何かを言おうとした時に横からドンとした声が場に響いた。


「いつまでも遊んでいるんじゃない。そんなことよりまずやるべきことがあるだろう」


「はいはい、もうやめますよーだ」


”化”は拗ねたような顔をして席に戻った。制止させたのは【極】の文字を持った6人のボス的な雰囲気を醸し出している。


「お前たちに集まってもらったのは今後の計画について説明するためだ」


「この前の計画だと試作5号まで作るということで計画は固まったはずだが?」


「ああ。だが今回の3号が”大義賊”に敗れ我々の実験が途中で解けるということが起きた。計画通りなら解けることはなっかた筈なのにだ。それを踏まえて新たに試験体をいくつかふやすことにした」


”大義賊”という単語を聞いた瞬間”悪”は露骨に嫌な顔をした。


「またあいつか。いい加減鬱陶しくなってきたな」


「そうね〜。そろそろ消しとく?」


「いや、性能テストも兼ねて試験体にやらせようと思っている。だからもう暫く手出しはむようだ」


「わかった。で?4号はどうなっているのだ?」


簒奪に手を出さないことになったため興味をなくし次の話題に入る”悪”。それに答えたのは3号の失敗を告げた年寄りだった。もちろん文字持ちだ。【合】だ。


「もう最終調整を終えて待機させておる。ついでに5号も最終調整中じゃよ」


「へぇ。文字は?」


「4号が【風】、5号が【雷】だ」


「よく現象文字持ちが協力してくれたな。どんな手を使ったんだ?」


”極”は少し楽しそうにこう答えた。


「ん〜?くくく、そんなの決まっているじゃないか。嵌めたんだよ」


「やっぱりな。それでいつテストするんだ?」


「もう決まっている。2週間後だ。場所はーーー」


ーーーーーー簒奪達が行く修学旅行と同じ場所だった・・・









翌日、簒奪が学校に行きクラスまで行く途中から、すごい盛り上がっている声が聞こえてきた。


「ーーーな!ーーやっぱりーーー」


「だろ!ーーーー」


「なにをあんなにさわいでんだ?」


自分のクラスの扉を開けると後ろの方でみんなでかたまって一つの机を囲んでいた。

簒奪も気になって見に行くと1人の女子クラスメイトが大きめのパソコンで動画を流していた。(ちなみに簒奪が通っている高校は私立[上野高校]という。ちなみに[うえの]じゃなく[かみの]とよむ。)その動画はなんと昨日銀行強盗が現れてから簒奪が強盗を倒し帰っていくところまでが綺麗に写っていた。


「!?な、なんだこれ!!」


つい声を荒げてしまったためにいつもの三人が気付いてしまった。


「お、簒奪じゃねーか!お前も見てみろって!すごいぞ!」


「ああ!まじですげぇ!!”大義賊”が戦っているところがみられるぞ!!」


「こんなこと言うと悪いかもだけど、上野って運いいよな〜。まさか生”大義賊”に会えただけじゃなくこんなのまで撮れたんだから」


「?上野って、誰?」


簒奪の声が聞こえた人は一斉にはぁ?という顔になった。そんな中パソコンの前で座っていた女子が立ち上がって簒奪の方を向いた。その女子生徒は笑っていた。


「くははは!まさか同じクラスになってもう3ヶ月経とうというのにまさかまだ名前を覚えられていなかったとわ。面白かった。不覚にも笑ってしまったぞ。上野というのは私だ。〔上野 桜〕という。桜と呼んでくれ、以後覚えていてもらえると嬉しい。」


そう言いながら右手を差し出してきた。しかし簒奪はボケっとしたままだった。


「ん?」


「ああ、すまない、こっちでは握手は基本しなかったな。なにぶん小4から中3までアメリカで生活していたものでな。まだ向こうの癖が抜けないのだ」


そう言うと桜は手を引っ込めてしまった。が、簒奪は右手をだした。


「ああ、そういうことね。わからなかったわ。よろしく桜」


今度は桜がボケっとしてしまった。


「どうした?握手しないのか?」


「本当に面白い男だな。まさかこの流れで握手するとは思わなかったぞ」


今度は2人とも手を出し握手できた。その時に簒奪は気付いた。それは桜がすごい美人だということに。髪はツヤのある黒髪で目は綺麗なブラウンをしている。

普通なら腰が引けて話すらできないような感じになってしまいそうなのに、桜が常に微笑み、醸し出す雰囲気でそれが中和されているのだと。一方桜も一瞬だけビックリしたような顔になったがすぐにいつもの微笑みに戻った。そのあとすぐ先生が来て皆自分の席に戻り朝のホームルームが始まった。しかし桜は違うことを考えていた。


(神羅 簒奪か。・・・何か武術でもやっているのかな?常人にはわからないだろうが掌が特別な硬さをしていた。)









その日の授業終わりに桜は下校するために理事長室に行った。ちなみに、名前からみてもわかると思うが桜は上野高校の理事長の長女なのだ。そもそも上野高校の経営者は上野グループの現当主で桜の父だ。更に上野高校は他にも分校や姉妹校がある。もちろん海外にもあり桜はそこの小、中学校に通っていたのだ。


理事長室の前まで行った桜は扉をノックした。


「入っていいぞ」


中からそう聞こえたので入ると、3対3で座れるふかふかのソファーに応接用テーブルを挟んで置いている。そのソファーには燃え盛るような紅髪をした女子生徒が座ってお菓子を貪っていた。


「ふぁ、あうぇーひゃん。おふふぁふぇ」


「おい紅葉、はしたないから食べながら話すのやめておけ」


「・・・ごくん。たはは、ごめんごめん。お姉ちゃん、おつかれ。(いや、その言葉使いもどうかと思うけどね?)」


この女子生徒は桜の妹で名は〔上野 紅葉〕と言う。もちろん美少女である。桜が活発系なら紅葉はやんちゃ系だ。歳は1つ下の1年生である。


「もう授業は終わったのか?」


「もう終わった。父さんは?」


理事長の名前は〔上野 幸多〕と言い、見た目完全に”や”から始まる組の頭でも通りそうな見た目をしている。が、とても有能で特に自分の子たちには甘い一面も兼ね備えている。


「まだかかりそうだな。なんなら先に帰っていてもいいぞ?」


「お姉ちゃん、どうする?」


「私はちょうど欲しいものがあったから別で帰ると言おうとおもっていたからな。そんなわけで父さん、先に帰るから」


父は残念そうな顔になる。ここで紅葉が寄ってきた。


「お姉ちゃん、付いていっても?」


「良いぞ。秘密にしようと思っていたが元々明日の紅葉の誕生日のプレゼントを買いに行くためだったからな。一緒に行った方が自分の好みのを買えそうだしな。好きなの1つ買ってやろう」


「本当!やった〜!」


桜に抱きつきお礼を言った。


「えへへ〜、ありがとお姉ちゃん」


「だから先に帰るよ」


扉から2人で出て行った。娘達がハグしあっているのを見て、内心とても羨ましがっている父だけが残ったのだった。


下駄箱まで行くとまた一人立っている女子生徒がいた。


「あ!紅葉ちゃん、と桜さん!今から帰りですか?」


「うんそうだよ!」


「確か、月夜ちゃん、だったな?」


「!覚えていてくださったんですね!」


〔夏野 月夜〕、一度遊びに来たときに挨拶した覚えがある。


「あ、そうだ姉えちゃん。月夜ちゃんも連れて行っていい?」


「?いいが何故だ?」


桜と月夜は紅葉が何が言いたいのかわかってなくて困惑している。


「実はねー、月夜ちゃんね服のセンスが良いんだよ!たまに買い物に付き合ってもらうぐらい!」


「ほう、それは興味深いな。月夜ちゃん!悪いが買い物に付き合ってくれ!!」


「え?ええ!?私も行っていいんですか!?」


3人で行くことになったようだ。








放課後ショッピングモール内


「いやーそれにしてもまさか簒ちゃんから買い物に誘ってくれるなんてね」


「最近姉さん達と買い物行ってなかったからな。たまにはどうかと思ってな」


簒奪は以前思ったことを家で話したら即座に3人とも用意したのだ。


「えっへへーお兄ちゃんと一緒〜。」


「簒奪が荷物持ちやってくれるからすごい楽ね〜。それにしても簒奪って見た目より力あるわよね」


「まあこれでも鍛えてるからな。そこそこには強いつもりだ」


「じゃあ変な虫が寄ってきたらお兄ちゃんに退治してもらおー!」


「任せとけ。でもそんな都合よく現れたりしないけどな」


それからしばらく歩いていると愛歌が何かに気付いたように声を上げた。


「おーい、紅葉ちゃ〜ん、月夜ちゃ〜ん!」


「「ん?」」


簒奪達と桜達が出くわした。


「よお、桜じゃねーか。お前たちも買い物か?」


「ああ。妹の誕生日のプレゼントをかいにな」


簒奪は紅葉と月夜を見てどちらだと顔をしたところを桜に目線でこっちだと教えて貰った。

「お前が誕生日なのか。お前は、家族がいる幸せを感じているか?」


「はい!姉えちゃんと一緒に買い物できて嬉しいですよ?パパとママもやさしいし!」


それを聞いた簒奪は滅多に見せない笑みをうかべて満足そうに笑った。それはたとえ眼帯をしているため左目部分が見えなくても周りに絶大な印象を与える。


(ま、まさか簒奪がここまでかっこいいとは)


(何この人!?かっこよすぎだよー!)


(はうぅぅ〜)


3人が少し固まっている横で響歌達がコソコソと話す。


(久ぶりにでたね〜。簒ちゃんのアレ)


(アレやられちゃうと、ねー)


(お兄ちゃんの隠れた武器だよね)


「何はなしてんだ?」


「「「なんでもなーい」」」


「?」


簒奪達が話していると当然目立つ。何故なら全員が人の目を引く美少女たちだからだ。そのほとんどだが無害なものだが、ごく少数いる有害の目も引いてしまうときがある。ちょうど今のように。


「よぉ、ねえちゃんたち、今ひま〜?」


「そんなヒョロっちいもやしみたいな男ほっといてさ、俺らとアソボウぜ」


簒奪達に、いや、簒奪以外に話しかけてきたのは完全に頭飛んでるだろというような見た目のヤンキー12人だった。


(コレは・・・もしかして絡まれているのか?)


もしかしなくても絡まれているが、絡まれたことがないのでわからないのだ。そもそも喧嘩も素顔では絶対に関わらなかったぐらいだ。なので簒奪は確認してしまった。


「あー、もしかして絡まれてる?」


簒奪のなんとなくな態度に切れるヤンキー達。響歌達は全員簒奪の後ろに隠れている。


「だ、大丈夫なのか?少し怖いが?」


「簒ちゃんなら大丈夫。ああ見えてすごいから」


そんなこと知らないヤンキー達は簒奪に答える。


「あぁ?てめえには話しかけてねぇんだよ。おれらが用あるのはそっちのネーちゃんたちだからな」


「それはつまり俺はどっかに行って、その間あんた達と俺の連れとを一緒にいさせろと?」

「わかってんじゃねーか。わかったらさっさ「断る」と・・・なにぃ?てめぇ、何言ってるかわかってんだろーな?」


簒奪が断ったことにより完全にキレたヤンキー達。それもちょっとやばいキレ方なのだ。

ナイフやメリケンサックなど凶器を取り出してきた。


「女どもの前でかっこつけんなよ?やろーども!やっちまえ!!」


簒奪は凶器系を全て見切り、避けている。そして殴ってきたやつの拳をわざと受けた。その際に後ろに飛んで殴り飛ばされたのだと錯覚させた。


「はん。たいしたことねーな。じゃあネーちゃんたち、おれらと「これで正当防衛成立かな?」まだ起き上がれたのか。しつこい奴だ」


「ちなみに一部始終録画してるから。殺人未遂と婦女暴行未遂、あと銃刀法違反にもひっかかりそうだよね?」


それを聞いたヤンキー達は顔を歪めるが簒奪が撮影しているであろうカメラを壊せばなんとかなると思ったようだ。


「じゃあいくぜ?」


簒奪はギリギリ常人にも見えるスピードで一人の顔を殴った。面白いぐらいに顔を歪めて、10メートルを超える飛距離を出した。しかし技の見た目と違ってそこまでのダメージはない。そんなことを知らない周囲は唖然とする。簒奪はそんなの関係なしに言葉を発する。


「ふー。ま、こんなもんだろ。よし、次!」


「なめんなこらぶげふぁ!!」「ひ、ひぃぃ!!げは!」


一瞬にして10人を一気に片付けてしまった簒奪は残り1人に魅せ技的な技を使った。


「これで終わりだ!(拳刃式魅了の型、百花繚乱)」


魅了の型は他の型と違い人体破壊の技ではない。簒奪がかっこいいかもと思って作った、いわば厨二的な意味を持つものなのだ。百花繚乱は流れるような連続攻撃で相手に反撃を許さず、ひたすら殴り続ける技である。


「か、は」


「簒ちゃん!もういいんじゃないかな?」


呼ばれたので見るとみんな若干ひいていた。


「あー、やりすぎたな」


殴るのをやめてその場から離れようとしたらショッピングモールの一箇所が爆発した。


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