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神の御声を聴きて

こーんにーちわーww

もっくんです

更新できてなくてすみませんでした<(_ _)>

では、どうぞ


神よ


我が神よ


私の声が聞こえておりますか


聞こえていらっしゃるなら、どうか


どうか


そのお声をお聞かせ願いたい












蝋燭の燈が怪しく揺れる。

閉め切ったこの部屋では焚いた香の匂いが溜まるばかりだ。

茜は祭壇を前にして舞っていた。

神楽、これはそう呼ばれる舞。

神を祀り、その御言葉を身におろすためのもの。

茜は赤と白の巫女服に身を包み、舞を踊ると共に唄を唄っていた。

と、いっても祈りのようなものだが。

この部屋には茜以外誰もいない。

入れるのは巫女の血族だけ。

それ以外の者が入ると巫女は穢れ力が落ちてしまうと言われている。

やがて立ち止まると、茜は祭壇の前に跪いて両手を空へと突き上げた。


「神よ…わが身に御言葉を…。」


茜がそう呟いた瞬間、その体を衝撃が貫いた。


「あああああああああああああああああああああああああっ!!」


絶叫に近い叫びをあげる。

体が燃えるように熱くなり、全身を痛みが支配する。

そこで茜の意識が途切れた。






霧雨が漂っている。

どこか現実離れしているかのように音が鈍い。

茜の見知った民がいる。

だがその民は突然背後から何者かに刺され倒れ伏してしまった。

周りを見渡せば家々が炎に包まれ崩れ去り、民たちも次々と殺されてゆく。

襲ってきた兵たちのいる方へと目を向けた茜は固まってしまった。

氷の瞳。

あざ笑うかのような、蔑みの笑み。

刀を二振り腰に差した黒い軍服に身を包んだ男が立っていた。

その男が茜に向かって何事かを呟く―――――






「…っは!」


茜は目を覚ました。

すでに蝋燭は消え辺りには香のむせ返るような香りだけが残っている。

茜はふらつく体を支えながら立ち上がる。

神おろしをすると酷くだるくなる。

壁に手をつきながら障子まで向かう。

開こうと手をかけた時、障子の向こうに影が映った。


「…姫?大丈夫か?」


「しゅ…う…早く…父上の…ところへ…。」


開いた瞬間茜はバランスを崩し前のめりに倒れる。

集はそれを受け止め、抱え上げた。


「…いつもより疲れてるな。」


「ん…父上のところへ…。」


集は茜を横抱きにしたまま廊下を歩いて、領主のいる部屋の前までやってきた。

そこで茜を気遣いながら下ろす。

茜が支えられながら立ち上がると、部屋の中から声がかかった。


「茜、集。入りなさい。」


スッと障子を開くと、奥に一人の男が座っているのが見えた。

茜の父、藤原(フジワラ) 義虎(ヨシトラ)だ。

茶髪にこげ茶の瞳、と茜とはあまり似ていないように思える。


「茜、ここに座りなさい。」


「はい…。父上、神降ろしのことで…」


「焦らなくていい。ゆっくり話しなさい。」


焦ったように口を開く茜の言葉にかぶせるように言う。

愛娘を気遣うのはやはり一人の父としてか。


「はい。あの、先ほど神降ろしをして、見えたことをお伝えしようかと。」


「ふむ、何が見えた。」


茜は見えたことを話した。

真剣に聞いていた義虎の顔が軍服の男の話に入ると歪んだ。


「それは…蒼龍(ソウリュウ)の皇帝『夜兎(ヤト)』だな。」


「ヤト?」


「うむ。前皇帝と自らの兄を殺して皇帝となった恐ろしい男。つねに二振りの刀と漆黒の軍服を身に着けている。人を殺すことを躊躇わず、冷酷で残虐、氷の王と呼ばれている。」


そこまで言うと義虎は立ち上がって控えていた集に声をかけた。


「三人衆を集めよ。敵が来るぞ。」


「はっ!」


集が部屋を出ると座ったままの茜に近づきその頭に手を置く。

そして父であるときの瞳で優しく囁く。


「よくやった茜。後は私たちに任せて休みなさい。」


「はい、父上。」


茜は褒められたことが嬉しくて頬を染めた。












「何故この俺があんな小さな国をわざわざ攻めねばならん?」


蒼龍の中央に建つ城の奥。

その玉座に男は座っていた。

漆黒の軍服と二振りの刀を携え、足を組んで目の前に立つ彼の側近に文句を言う。

氷の瞳で見つめられながらも側近は怯むことなく口を開く。


「もう決めたことですし兵たちも準備をしてしまったのですから仕方がないでしょう。」


「そんなもの関係ないな。」


即答する男に側近は苦笑いを浮かべる。

ならば次の手だ、とニヤリと笑う側近。


「…あの国には面白いものがありますよ。」


「面白いものだと?」


食いついた!

小さくガッツポーズをする側近。


「ええ。なんでも神の声を聴きその御業をも扱える美しい巫女がいるのだとか。」


「ほお。」


男が口角を上げる。

ここまで乗せれば後は楽だと側近は微笑む。

さも、この男のためを思ってかのような口調で。


「あなたの暇つぶしにはなるかと思いますが。」


男は側近の思惑すら見透かすように目を細め、口を開く。


「それは、面白そうだ。」

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