ゴットオブカルテ
「先生、これはヤバいですよ。著作権ギリギリじゃないですか。」私の原稿を読んだ、担当の海音寺が焦った声をだす。
「なかなかインパクトがあるだろ。」
「インパクトとかそういう次元を超えてますよ。先生ほどの高名な作家がこんな某国のような手口を。内容は面白いですから、せめて題名は変えましょうよ。」
「『坊っちゃんは猫であると思ったら三四郎だった』の何が悪いの?」我ながら良い題名だと思っている。
「先生、芥川武者小路というのは世間的に言えば大作家なんですよ。お偉いさんなんですよ。
芥川賞作家芥川先生なんですよ。あーーー言いにく。」
言い忘れていたが私のペンネームは芥川武者小路。本名は山本翔。
「だってペンネームも2人の偉大な作家の名字をくっつけただけだし、原点回帰ということで良いじゃん。」
「というかまずこの作品には、坊っちゃんらしき人物も、猫という動物も、三四郎という名の人も出てきていませんけど。」
「海音寺君、君には私、芥川賞作家芥川武者小路の感性が分からないのだろう。私が良いと言ったらこれで良いのだ。あーーーー言いにく。」私は海音寺に若干失礼だと思ったが、いまさら題名を変えるのが面倒なので、厳しく言った。
「先生は、ラノベ作家でも、ステマ狙いの売れない作家でもないんですよ。芥川賞作家芥川武者小路に恥じない行動をしてほしいです。あーーー言いにく。」
「仕方ないな。が主人公の名前を漱石君にすればいいんだろ。」と、海音寺君を皮肉る。
「それは、許可おりません。せめて、鴎外君か、龍之介君にしといてください。いや、それもだめか。」
海音寺はまさにパニック状態というかんじであり、なぜか普段はしないノリツッコミをする
「分かった、若干変えよう。」このままでは海音寺君が可哀想だと思い、言う。
「ホントですか?」途端に、海音寺君が落ち着きを取り戻し、僕に詰め寄ってくる。
「主人公が草枕が好きという話に。」
「題名は?」未だに俺の言いたいことが分かっていない海音寺は安心しきった顔である。
そんな顔を見てると、もうちょっとおちょくりたくなってきて思わず答える。
「予定ではカルテオブゴットにするつもりだけど。」なんとか笑わずに言いきれた。
「訳すると神のカル、、、、、、」
「冗談だから。」
少しの間が空いた後、絶句する海音寺に向かって、俺はそう語りかける。