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もうひとつの壁 1

 アラームをいつもより少しだけ遅い時刻にセットする。明日は黄金週間後半の初日、かなりのフリータイムが取れる。芳音はこの連休を利用して、前々から調べたかったことに着手するつもりでいた。

『毎年ゴールデンウィークは遠出しちゃうのね、きっと。私一人でもお店を回せるから大丈夫よ』

『却ってお客が少ないくらいだから、果穂くんだけで充分だよ。学校とここでかなり根を詰めていただろう。少し身体を休めなさい』

 バイト先のオーナーや果穂はそう言って、芳音の休暇申請に快く応じてくれた。帰省すると思い込んだらしく、「準備があるだろう」と、今日は早上がりまでさせてくれた。

 芳音は目覚ましをセットしたものの、念のために携帯電話のアラームもセットした。それをそのままベッドに持ち込み、手の届く場所に置いてベッドに潜り込んだ。


 部屋の灯りを消せば、漆黒が芳音を包む。

 去年の今ごろは、リクの運転するワゴン車の中で、圭吾たちとライブ前のハイテンションでバカ話をしていた。そんなことを思い出したのは、バイトからの帰り道で圭吾からメールが届いたからだ。

《今年も行くぜ! 明日の朝イチに着くからホコ天見に来ねえ?》

 芳音は気心の知れた幼馴染への懐かしさと人恋しさで、返信ではなく直接コールした。

《おおおおおお! どーよ、そっちは》

 と問いつつ圭吾はやっぱり、自分のことばかりを話していて、笑った。あのボルテージの高さがメンバーのテンションを引き上げていく。去年クビにしたはずの自分に、またこうして声を掛けてくれたことが嬉しい。だが。

《綾華が望にも声を掛けたんだってよ。来るってえから、お前、こっち来るとき拾って来てくれよなッ》

 それを聞いて、揺らぎ掛けた予定の変更を、やはり変えないという決断に至らせた。

『あ……っと、ゴメン。バイトのシフト入っちゃってるんだ』

《あ? ンなもん代わってもらえよ。芳音なら絶対コッチ最優先してくれると思って、克美ママからもう荷物を預かって来ちまってるぞ。なあ、来いよ》

『う……ん、悪い。荷物はどっかコンビニから着払いで送っといてくれる?』

 えー、と渋る圭吾の向こうで何人かの声が聞こえ、そして唐突に電話の主が変わった。

《やほ、久しぶり。私よ、綾華。ちょっと、来れないってどういうこと? やっと芳音とのんちゃんがそろった状態でライブを楽しめると思ったのに。去年のツケ返しなさいよ。バイトなんかキャンセルしなさい》

 女はずるい、こういうとき、ずるい。感情論でねじ伏せて、自分の好む方へと無理やり引っ張っていく。これまでの芳音だったら、相手が綾華という鬼門であることも相俟って流されてしまうところだったが。

『ホント、ごめん。のんには、実家に帰ってるってことにしといてくれる? メール送っても返信が来ないから、俺が行くって知ったら今度はのんが行かないって言い出すと思うし』

《ねえ、ひょっとして、のんちゃんと何かあった?》

 綾華がキャンキャンと吠えていたトーンを何段も下げて、囁くように尋ねて来た。

《のんちゃんに芳音の話を振ったときも、急に口数が少なくなっちゃってさ。いきなり“行けたら行く”なんて曖昧な返事をするし。喧嘩でも、した?》

 綾華がいたわるような声で問うときは、大体察しがついているときだ。吐き出して楽になるなら、という、押しつけがましくない優しさの滲む声に少しだけ声が震えた。

『喧嘩してるわけじゃあないよ。ホタにのんとのことがバレちったから。連絡がつかないのも、ほとぼりが醒めるまではお互いにおとなしくしておこう、って意味かなあ、って……それだけ』

《そう。それだけ。ならいいんだけど》

 じゃあまた次の機会にね、とだけ残して綾華から電話を切った。少しだけ冷たいその言い方は、芳音の嘘が綾華にはばれていると遠回しに伝えていた。


 ふと心細くなり、携帯電話を手に取った。

「……」

 今日も望からの連絡はなし。待受画面をぼんやりと眺めていたら、日にちの数字がひとつ増えた。

「二十五日目、か」

 入学してから二十五日目。穂高に宣戦布告してから二十五日目。そして、そんなにも長い時間を望と隔てたのは、再会してからは初めてのことだ。


 ――いくら似ていても、君はあいつじゃない。

 お互いに、ちょっとだけ甘え過ぎていたね。逃げてちゃダメだよね――。


 果穂にそう言われた日から半月近く経とうというのに、芳音はまだ彼女から出された課題をクリア出来ていなかった。

 彼女に言わせると自分は鈍いらしい。それがヒントだと判断した芳音の中で、あれこれと推測が浮かんでは消える。これと言った明確な指針を定められられず悶々と過ごす日々に、疲れを感じ始めていた。

 どうしても妥協出来ない部分を曲げないせいで答えが見つからないのだろうか。そこを譲れば、果穂の出した宿題すべてについての答えが出たことになる気がしないでもない。

 果穂と適切な距離を取れるようになった今なら、理屈ではなく感情でも、彼女に甘えていた自分だったと理解が出来た。いつも先を往くくせに、時折自分を振り返るように心許ない脆さを見せる果穂は、確かに一緒にいる間だけなら芳音の気を紛らせていた。

 彼女の中に、望を見ていた。厳密に言えば、遠い昔に見ていた小さな望。嫉妬や独占欲や劣等感を刺激する“恋情”なんて感情を知らずにいられた。味気ない代わりに、穏やかに凪いだ気持ちのままでいられた。ただし、果穂が賑やかに駄々をこねる瞬間だけだった、とも言える。

 ふと独りになった途端に反動をつけて寄せ返して来るのは、どろどろと渦巻くネガティブな迷いや不安。

 望にとって、自分が彼女を異性として見ることは、疚しくて“悪い”こと、なのだろうか。

 穂高に嘘をついたりごまかしたりしてまで、隠さなくてはいけない“後ろめたいこと”なのだろうか。

 不器用でうまく立ち回れない自分は、いずれ望の足手まといになってしまいやしないか。

 自分にとっての望の存在価値と、望にとって自分の存在価値は、本当に天秤が釣り合っているのだろうか。

 またぐずぐずと湧いて来た不安要素にはたと気づき、固く瞼を閉じてポジティブな発想に切り替えようと足掻く。

 謝ってしまえば、きっと望は赦してくれる。果穂にわざわざ会いに行った彼女の行動から容易に想像がついたそれは、ほぼ確信に近い。

「でも……やっぱ、ムリ」

 芳音にとって、望を異性として見ることや穂高に自分の意向を宣言したことは、決して疚しいことでも後ろめたさを感じることでもなく、ましてや悪いことなどとは露ほども思っていない。それなのに「ごめん」と折れてしまうことは、自分までが自分の本心を裏切ってしまう気がした。

 かと言って、何もなかったかのように望と接する器用さも持ち合わせていない。

 そんな堂々巡りを繰り返しては、最終的に望への不信や自分の存在意義などという出口のない迷路に迷い込む。果穂に「逃げるのはおしまい」と言われても、そして自分でもそうしたいと思っても、エンドマークのつけ方が解らない。

「けど……」

 本当は、今すぐにでも、声が聴きたい。顔が見たい。そして――触れたい。

「う~……」

 ふと浮かんだ自分の言葉が欲求不満を自覚させた。途端に襲って来る自己嫌悪。芳音をすっぽりとくるむ布団の中から、くぐもった呻きが床に転がり落ちた。




 あくる日、芳音は休日を得たときに予定していたとおり、都内の方々を練り歩いた。バックパックに詰め込んだのは、克美に内緒で持ち出して来た資料の一部。倉庫に収められていた、芳音が生まれる以前の記録だ。それと藪から見せてもらった、辰巳と克美が信州へ逃亡して来て間もないころのカルテや個人情報などのコピー。真新しいファイルに挟んで持って来たのは、都内の住宅地図と十九年前からこちら数年分の都内で起きた事件の情報資料だ。上京してからの二ヶ月弱で国会図書館の図書や新聞を漁ってどうにか調べ上げたものだが、これで情報が足りているのかは解らない。

 まずは克美が姉に匿われて住んでいたという、深川方面に向かった。当時の風景を撮った写真のコピーと同じ位置に佇んでみるが、面影はない。芳音が感じるのは、自分には場違いで居心地の悪い歓楽街であるということ。昼間なのでまだ閑散としているほうなのだと思うが、それでも、下衆な顔つきで悪びれもなく下品な話に興じる人たちとすれ違うたびに、奥歯を噛んで憤りを堪えた。どうしても、そういう奴らと望を陥れた奴らのイメージが重なって見えた。


 次に向かったのは、東京湾の花火大会が室内から一望出来るらしい辰巳地区にあるマンションだ。克美とその姉を身請けした辰巳が住んでいたマンションは、時の流れだけをひび割れた壁面に刻んで今もそこに建っていた。海藤組の所有物件だったそれは、今では国有財産になっているようだ。ここにも、芳音が探し求めているものはなかった。芳音は小さな溜息をつき、そして深々と一礼してその場を去った。


 芳音が続いて赴いたのは、葛飾・鎌倉地区。信州に逃亡して来たばかりで精神的にも疲弊していた辰巳は、一度だけ藪の催眠治療を受けたことがある。芳音がカルテを見て詳細を尋ねたところ、藪が「辰巳が海藤の親父さんに拉致られるまで暮らしていた場所らしい」と教えてくれた。

 改札を出てすぐのメインどおりに並ぶ商店街は、夕暮れの買い物客で賑わっていた。松本市の伊勢町商店街がシャッター街と化してから久しい。だがこの商店街は今も現役で華やいでいて、その光景が芳音に賑わっていたころの伊勢町商店街を懐かしく思い出させた。買い物客が店主やおかみと談笑しながらも、ちゃっかりと値引き交渉なんかをしている風景が微笑ましい。子どもたちを見ても、芳音が住む世田谷近辺で見掛ける子どもたちと違い、いい意味で素朴な子どもたちに見えた。

(いい環境で育ってた、ってことなのかな)

 克美の奔放な気性も、そんな辰巳が育てたからだろうか。ふとそんな憶測が脳裏をよぎった。

 だがここにも、本来の辰巳自身を感じさせる何かを見出すことが出来なかった。


 そんな形でこの連休は、辰巳の軌跡を辿ることに終始した。三十八年という辰巳の時間の半分以上がここにある。それを辿ってみたいと思い始めた中学卒業間際のころの自分は、多分辰巳を父親として実感したいと思っていたのではないか。芳音は自分のことを他人事のように俯瞰で振り返り、不意に自分の中で起きていた変化に気づく。

(過去形になってら……)

 では、今の自分はなぜ辰巳の軌跡を確かめようと思ったのだろう。そこに自問が及んだ途端、どろりとした嫌な感覚に囚われた。

 回り切れなかった海藤組事務所のあった場所や旧警視庁、そして辰巳と高木が熾烈な闘争の末最期を遂げたという日本帝都ホテルには、次の機会に回ることにした。




 必要最低限の生活をしなくてはならないので、ネット環境は信州にいたころとは雲泥の差だ。差、どころではない、設備ゼロ。

 佐藤が両親から入学祝にネット接続の許可付で新しいパソコンを買ってもらったがどうすればいいのか解らない、と言っていたとき、LAN構築や設置設定、以降のサポートをする代わりに調べ物に使わせて欲しいと交換条件を出した。

「構わないけれど、芳音って本当に、見た目とキャラのギャップがかなり」

「うっさい。うちは佐藤んちみたいに、渋谷区内に家を持てるような商売やってる親じゃないっつうの」

 芳音がそんな口汚い物言いをしても、佐藤はもう怯えたり落ち込んだりしなくなった。彼は芳音や君塚の前でなら、どもらずに喋れるほど打ち解けてくれるようになっていた。

 彼が学校でよく見せる過剰な卑屈さと低姿勢は、吃音と体形に対するコンプレックスが原因だろう。自分の持っている引き出しの多さにそこそこの自負があった芳音は、最近知った佐藤のそれに目を見張ったばかりである。

「えへへ。ありがとう。そんな言い方するけどさ、本当はそれだけが親切の理由じゃないんでしょう?」

 と言われると、返答に困ってしまう。彼のそんな鋭い観察眼も、長所として自信を持てばいいのに、と芳音に思わせるもののひとつだ。思ったことをそのまま口にするのに好感を抱かせる。そんな彼の雰囲気は、持って生まれた宝物なのにもったいない、としみじみ思う。

「セーカイ。佐藤がこの間貸してくれたDVD、レンタル品じゃないのにナンバー張ってあったろ。“あ、コイツ相当集めてるな”って思ったからソッチの物色も目当て」

 と適当にこじつけたら、「うそつき」と一笑された。

「佐藤のことだから、それもリストを作ってるんだろ」

「さすが、鋭い」

「見たいの見つけたら、貸して」

「いいよ。データの移行してる間に、お父さんのパソコンから覗けるかな」

 などと、話はさりげなく、なんとなく逸れていった。


 煩雑になっていたフォルダの仕分け方も説明しながら、佐藤の親が所有するパソコンから佐藤のパソコンへデータのコピーを取っている間に、彼の所有データをひと通り見せてもらった。こちらはもちろん、単なる興味というだけだ。

 グルメレポフォルダ、それは至極納得する。料理番組の録画データ、さすがだ。階層をひとつ上に戻し、次は動画関係だ。

「あ」

 とか細い声が隣から漏れる。

「ん? なに?」

「えっと、それは、あんま、ちょっと」

 と口ごもる佐藤の耳と顔が赤くなる。ああ、と納得し、少しだけ意地悪心が働いた。

「エロ画像とか、ソッチ系? いいじゃん、別に恥ずかしがらなくたって。健全な証拠でしょ」

「ち、ちちちが」

 と言っている佐藤のマウスを取り上げるよりも、ショートカットキーでフォルダを開いてしまう方が早い。

「さっとうのおっかずはなーにか……え?」

 今度は芳音の方が赤面する番だった。そのフォルダに収められていたのは、アダルト系の何かではなく。

「おおおオカルトとか、怪奇げ、現象とか、ちっさいころから、そういう不思議なモノって、すごく好きで……か、芳音の、ほほ欲しい、その、アレじゃなくて、ご、ごめんな、さい」

 謝るな、クソ恥ずかしい。とは言えず、気まずい無言が佐藤の部屋いっぱいに漂う。

「ビリー・ミリガンの多重人格も、佐藤にとってはオカルトなのか」

 縮小表示で並ぶフォルダの名前を見て苦笑でごまかす。

「あ、これはね、僕にとっては貴重な記事だったんだ。結局は解離性同一性障害が事実ということが証明されたんだけど、死者の憑依っていうオカルト研究家の話の仕立て方が面白くて、一応保存してるんだ」

 そんな解説を聞きながら、佐藤に明け渡された椅子に腰掛けた。とても流暢に話す佐藤の講釈に苦笑しながらフォルダ内をスクロールして物色する。きっとこんなマニアックな趣味を誰かと語ってみたかったのだろう。

「!」

 ひとつのフォルダ名が、芳音を釘付けにした。その間にも佐藤が「ガキっぽいものを集めていると笑われるかと思って」とかなんとか言っていた気がする。だが、芳音は自分がそれにどう返事をしたのかさえ解らないほど、意識がそこへ集中していた。


 ――一九XX年九月号 日本帝都ホテル・高千穂の間の怪――。


『警視庁旧庁舎消失の謎』『中禅寺湖の水位半減/水龍伝説』などのフォルダ名に混じって、それが芳音の目に焼きついた。

「……佐藤。これ、中を見てもいい?」

 それは、図書館で閲覧した当時の新聞記事や週刊誌にはない情報だった。

「うんっ」

 佐藤の顔がぱあっと明るく輝く。フォルダのデータをひと通り見れば、オカルト雑誌をPDF化させたデータが大容量で収まっていた。

「僕たちがまだ二歳とか三歳とか、そんなころの記事らしいんだけど」

 と、やはりオカルト好きらしい佐藤の父親から聞いたという当時のオカルトブームについて、掻い摘んで説明された。

「僕らが生まれた年に、このホテルですごい大きな暴力団の抗争事件? みたいなのがあって、たくさん人が死んだらしいんだよね。捜査が終わって営業が再開されてもこのホールの借り手はいなくって。で、しばらくしてからこの小ホールがあるフロアで銃声を聞いたとか、血まみれの男の姿を見たとか、エレベーターがこのホールのある四十八階で突然止まるとか、そういう噂が流れちゃって」

 それが経営難に拍車を掛け、あわやホテル倒産というところまで追い込まれたらしい。だがそのときに、建て直しを声高に宣言して今の経営陣へ総辞職を強く訴えた女性職員がいたそうだ。その女性職員が従業員たちと一丸になって、半ば強引なほどの宿泊プランなどを打ち立てたらしい。その結果、日本帝都ホテルは今のレベルまで再興されるに至ったという。その女性職員は、今でも支配人としてホテル経営を切り盛りしているとのことだった。

「その人のホテルの売り込み方が、“高千穂の間・怪奇現象体験プラン”っていうやつで、それからオカルトブームに火がついたそうだよ」

 佐藤からのそれを聞きながら昇順でファイルを並べ直してみると、彼の言うとおり、藤澤会事件の一年後に発行された雑誌の『高千穂の間の怪』を先頭に、東京を中心として関東近県にさまざまな都市伝説や奇譚などを連想させる見出しがファイル名として使用されていた。

「佐藤、これ、コピーもらってってもいい?」

 芳音が努めて嬉々とした表情を装って頼んでみると、彼は貴重なマニアック仲間を見つけた喜びに破顔した。

「うんっ、もちろん! もし現地を訪ねるくらい興味を持ったら、僕にも声を掛けてよ。一緒に泊まってみよう」

 その申し出には、経済的および時間の事情を盾にして、丁重にお断りさせていただいた。


 斜め読みしたファイルの中に、芳音の知らない名前が幾つか出ていた。その人物を探して辿れば、当時の辰巳を知ることが出来るかも知れない。喫茶店の店主という偽りの姿ではない、本来の辰巳を掴めるかも知れない。

(あ……あ、そういう、ことか)

 浮かんだフレーズでようやく自覚する。そして、自分勝手な自分も認識する。

 辰巳の素顔の中に、自分との類似があるかも知れない。多分、穂高なら知っているであろう辰巳の本質。穂高としか関われなかった今の自分は、彼の影響が大き過ぎる。だから彼にあんな錯覚を起こさせるのだ。ならば自分の父親が誰なのか、知らしめてやればいい。

 散々憎んでそしって来た実父を、我欲のために利用しようとしている。それに気づいたら、気持ちが悪くなった。それでも走り出した自分をとめることが出来なかった。

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