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魔術決戦上の正規術師 修正版  作者: 詩星銀河
第一章「準一級術師が見せる可能性」
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第五話「活動不能になった友」

 すぐに魔術協会の本部を訪ねて現状を確かめた瞬間に本来の任務に俺が経験したことが高茂にも起きた。

 普通にこなせる任務を受けて遂行した後で不正術師の乱入があって高茂と一戦を交えた時に大きく開いた差が悲惨を極めた話に繋げる結果を招いた。


「マジで言ってるのか……?」


 そこで目前に映った画面は高茂の無残な姿を示した。


「俺は魔剣を扱う不正術師の乱入で応援要請して三人が駆け付けてくれたらしい。でも、右腕と左足が切断された状態の俺が意識を取り戻した後で活動の復帰は望めない話を聞いた。それでお前に知らせたんだ」

「何でぇ! お前が戦えなくなるなんて嘘に決まってるだろ!」

「残念だけど本当だ。そこで見た姿が真実なんだよ」


 俺は信じられなかった。あれだけ幼馴染みと並んで一緒に術師をやるんだと言っていた高茂がもう活動できなくなったなんて思いたくない気持ちで溢れた。実際に高茂は俺を助けてくれた。それなのに俺と別れた後で活動不能になるなんて考える余地もない出来事である。

 俺は内心で凄い罪悪感に襲われた。高茂の傍にいれば恩義が返せたはずだって思った時から自然と涙が流れる。この瞬間を画面の先で目前にした高茂の目からも涙を流す様子が窺えた。


 そして会話を終えて俺は通信室から出た後であまり話したことのない女性とすれ違った。彼女は腰に剣を下げている同じ術師の一人で通信室に何の用事があるのか不思議に思った。すると、そこで彼女が通信室のドアを開けて入って行く姿を目撃した。


(――なんだろう? 確か彼女は準一級術師の……?)


 俺の疑問が脳裏を横切ると、少し彼女の存在が気になった。あの部屋は高茂と面会するために用意された場所である点が何らかの関係性を持っていると予測できるだろう。高茂に面会したいと思うだけの関係性が彼女にあるなら多少は話を聞いてみたいと考えた。


 そして俺は彼女が部屋から出て来るまでの間を外で待った。これも彼女を知りたいと思った気持ちが生じて取った行動だった。高茂と関係する人物と言う点に加えて準一級の資格を持った術師なら知る余地を得ることに意味はあると考える。だから、部屋の外にある椅子で待ち伏せることを選択した。少し話がしたくて部屋から出た瞬間を狙って声を掛ける機会を窺う隙を作るのである。


 しばらくして彼女が部屋を出た瞬間に出くわす。彼女は暗い表情を浮かべながら部屋のドアを閉める。そこを呼び掛けて彼女と話す機会を得る。


「は? 私の素性を知りたいだと? それってそんなに必要かな?」

「あぁ。ちょっと興味本位で聞きたかったんだ。だから、少しだけ時間をくれないかな?」

「実際にこの後は時間があるから少しは話してやることは出来る。けど、そこまで興味が湧かなかった時はすぐに会話を打ち切る」

「それでも構わない」


 そんな感じで俺は素性を知らない女性と会話することになった。そこで俺たちが向かった先は本部を出たところにある喫茶店に決めた。


「んで? 何か用?」

「さっき入った部屋は高茂と面会するために設けられた場所だったにも関わらず、貴方は彼のどんな関係なんだ?」

「私は単純に彼の幼馴染みよ。小さい頃に術師を始めた仲でお互いの実力差が現在に至る理由だわ。私は準一級術師として東京の派遣が決まった時から高茂といつか同じ場所で活動しようと約束したの。それが今回の件で戦えなくなる状況に追い込まれるなんて思わなかったわ。私もあいつの仇が取りたいと思うほどよ」

「ええっ⁉︎ 貴方が高茂の幼馴染み⁉︎」

「そうなるわ。ちなみに私の名前は狭間美夜子だ。私が持つ術式は【ミッドナイトアイズ】よ。これは右眼に宿った魔力が作用することで一定区域を薄くて簡単に破れない壁で閉じ込める。壁が張られた領域内は夜と同じ性質に変換される。術式で変換された夜の空間は右眼と別で肉体に宿した魔力を緻密に操作して形状の変化を自在に操れて硬質を伴わせることが出来る。操って変化させた形状は武具の役割を成すことや自身に纏わせて強化するなどの利点を生み出すんだ。まぁ、魔力が形状を変えて真剣や鎧などを作り出せる。それらが身体の強化を促進させる作用を及ぼして戦闘を有利に進められる。それを利用して私は準一級術師に上がったんだ」

「すげぇ……」

「まぁ、大したことはないわ。でも、本当は高茂と一緒に戦いたかった。私たちは実力差があるが故に距離を空けた活動に徹するように言われた。だから、今回の件は許さない。相手は魔剣を使った不正術師で高茂を戦闘不能に陥らせるほどの実力を持っている。しかし、私が相手ならきっと殺せるはずだと考えたんだ。つまり、私は九州に行く。そこで不正術師が活動しているなら私が倒す。それだけだ」


 これから美夜子は仇を取るために九州に向かう途中だったらしい。その気持ちは俺だって良く分かる。恋人のような関係だった奴が片腕と片足を損失して引退に追いやられたなんて殺せるだけの実力があるなら復讐しない手はない。現に美夜子は準一級術師と言う階級で活動して来た実績がある。それなら高茂を活動不能に陥らせた術師だって倒せるはずだ。

 しかし、その戦いに俺も参加したかった。それは友が傷つけられた恨みを晴らすためである。実際に九州のどこかで未だに俺を倒した不正術師が出回っている件も片付いていない。今度はそいつも倒す意味でも再び九州を訪れることは誤りではないと思った。目的が出来た今だと俺も美夜子に着いて行く決意を抱いて話を切り出した。


「その一戦に俺も着いて行かないか? 高茂は俺の友でもあるんだ。それに九州で俺が敗北した不正術師に再戦を挑みたい件もある。だから、俺にも戦わせてくれ!」

「貴方は何級かしら? 階級で連れて行くかを決めるわ」

「俺は二級だ! けど、以前に準一級と等しい魔獣を倒したことがある! どうか信じて欲しい!」

「しょうがないわね? まさか高茂もこんな友人を持っていたなんて思わなかった。それに準一級並みの実力者なら共に来ると良いだろう」

「ありがとう! 是非ともお願いするぜ!」


 そんな感じで俺は急に決定した予定を魔術協会の上層部に連絡して休日をもらう。この一ヵ月で九州から東京を往復しないといけない予定が現地に向かう途中で話された計画だった。

 そして九州まで行く際に使った交通機関は飛行機である。飛行機の方がおよそ二時間四十分で到着する手段であるが故に新幹線よりも選択した理由になった。なるべく早く到着して帰りの最終予定日を迎えるまでに美夜子が討つ敵を優先して残る俺の目的は余裕が出来た時に果たすことを約束した。とにかく魔剣を扱う方の探索に努めて倒す作戦を言い渡された。高茂が相手した時の周辺を探索範囲に絞る方向性を確実に通す指示が出されて少し疑問に思った。しかし、理由は高茂を襲った現場の周辺で被害報告が頻繁に出ている情報を上層部からもらっていたことが確信に繋がるのだと話してくれた。そこは九州で活動する何人かの術師を派遣したが、高茂が生きて発見されて以降は生存者がいなかったことで捜索を中断する現状に置かれていたらしい。そこで特別に俺と美夜子の二人で現場に向かって処分する任務を与えられて移動に必要となる費用を全額支給してもらう許可が降りていた。それに加えて目標打破を実現させた際の報酬も用意してくれる条件を事前に交わした上で九州に向かっている。全て美夜子が手配してくれたらしくて俺は凄く頼もしく思った。


「着いたな?」

「はい」

「捜索方針は伝えた通りだ。あくまで貴方は無理を強いる必要はないことだけは約束して欲しい。もし、敵わないことが分かった時点で撤退する。取り敢えず今日は近くの宿に泊まって体調の調整を行う。残りは一日を余すつもりで捜索期間を設ける。見付かった時点で周囲の安全を確保して即座に交戦を開始する。こちらは手っ取り早い遂行と効率を優先して急襲に出る。この際は卑怯だとか関係なく任務の遂行を確実にすりことを考えて出来るだけ短時間で仕留める。良いな?」

「了解」


 美夜子が考えた方針に隙はなかった。とにかく効率良く進める策を的確に計画して勝利の確信を優先するスタイルは準一級に上がった理由の一つだと教えてくれた。敵を駆除する際に一切の躊躇と正々堂々に固執した思考は死の可能性を強める。それは交戦時間の短縮と生存率の保証を高めるための教訓だと飛行機の中で語っていた。その話に意義はなくて勝率の確証を極めることに徹した合理的思考だと俺は強く思わされた。術師は生きるためならどんなに卑怯でも構わないと言った考え方なんだろう。


(こいつは良く考えている。それが機能して遂行させた任務の比は俺が誇った件数の三倍に至る結果を示した。それだけの差が生じるなんて彼女のセンスは並みじゃない。それはb保証できる)


 そして宿に向かうまでの間はどこで敵に聞かれているか分からないことを考慮して無言で進んだ。目的地に着いて部屋に入った時点で美夜子は事前に考えていた攻略作戦を打ち明ける。それを聞きながら用意した夕食を取った。お互いの術式を理解した上で大体の戦術を練り上げた。殆どが美夜子の考えた策で話が進められて就寝前に整理を終える。

 やはり、美夜子は自身が扱う術式を通した対応策はこれまでの実績が活かされていることが窺える戦術を立てた。後は俺の時は今までの経験談を聞いて実践に活かす戦術に美夜子の意見で補われた上で決定した。俺が駆使する術式は初めて話したにも関わらず、彼女は性能と積み上げた経験を踏まえて解釈を深めて答えを導き出した。そこで見せられた判断力は俺も否定できない意見が非常に多くて参考になった。今後に活かせる戦術の提案を受けられたことが一緒に来た点に大きく安心感とやる気を生じさせた。


 そんな会議が済んで就寝に入る。俺は就寝を共にする際の注意事項を軽く聞かされてから少し距離を開けて眠った。本来なら別室で良いと俺が提案したが、その必要はないと断られてしまった。それほどまでに信用されていることに感謝して絶対に寝込みを襲うなんて行為はしないと心に誓った。それ以前に俺が望んで与えてもらった機会を逃す上に彼女の目的を邪魔する結果を招く行いだけは起こす訳がなかった。そんな卑劣とも言える人間になるなんてことは俺の人望に関わる点は良く理解していると自身で強く信じていた。だから、決して不良な欲求に負けて失態を犯す行為に深い拒絶思考を抱く。


 次の日。余裕を持って朝の八時に起床して朝食を取った。食後は十五分の間を開けて捜索に掛かる。捜索範囲に指定した場所を厳重に探して歩いた。術師であることを悟られないように変装を整えて街中を探した。

 今日は特に目標人物の姿は見当たらなかった。やはり、一日目から見付かることはなかった。それでも今回の結果は想定内の範疇だった。もし、一日目で見付かった場合は交戦に入った時の運勢が最悪を呼ぶ可能性が高いと美夜子は安心を兼ねた発言をする。早いうちに運が回って来ると後で都合の悪い状況に置かれるリスクを伴うのだと帰る途中で話してくれた。その後は宿で夕食を済ませて早めに就寝した。明日は今日よりも早く捜索に出る予定を伝えられた。それに俺は従って捜索を進めて行くのだった。


 そして事前に組んだ予定に沿って捜索が進められる。捜索を始めて二週間と三日が経過した頃に美夜子が何となく遭遇する予感を口にする。その予感が言い渡されてから近いうちに彼女が訴えた話は的中してようやく目標人物を発見した。


「あいつが例の奴か?」

「そうね? あの腰に下げた魔剣は確かに高茂の言っていた情報と一致する。なら、早く周辺にいる人たちを避難させて急襲に入るわよ?」

「分かった」


 そして密かに進められた避難誘導が完了して交戦の準備が整った。変装を解いて交戦しやすいように余計なものを置いて敵のいる場所に乗り込む準備を完了させた。


「一気に襲撃するわよ? 今回の任務は目標でもある不正術師を速やかに始末する使命が与えられている。息の根を止めることが任務の内容であるが故に加減は無用だと注意された上で急襲を仕掛ける。

 やっと本番を迎える瞬間に立ち会えた時の美夜子は非常に気を引き締めた表情を浮かべていた。その表情が示した感情は確実に仕留めて仇を討つ気を持った術師の目だった。


(こいつがいれば絶対に遂行できる。後は俺も足手纏いにならない程度の活躍を見せて強くなることに繋げられると良いかも知れない。美夜子の交戦は初めて窺うから、どんな戦いが見られるのかが凄く気になる。準一級に相当する実力が目前で見られるなんて滅多にない機会だ。学びながら戦おう!)


 そうやって俺たちは準備できた状態で交戦を開始する。敵が気付いていない状況下にいることを活かして確実に殺す意識を持って挑んだ。

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