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魔術決戦上の正規術師 修正版  作者: 詩星銀河
序章「九州で術師活動」
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第三話「強敵の出現」

 進級を目指すために魔術協会の上層部から九州で活動してもらうと言う指示を受ける。九州に来てから二週間と四日が経過して受けた任務は四十八件になる。これまでの任務の難易度は殆どが三級弱レベルと思われる魔獣の討伐が中心だった。

 やはり、一件だけ三級強に到達する任務があったけれど、無事に対応して遂行できる結果に至った。その点だと現状は一級弱までの任務の遂行は完了させられるかも知れないと確信していた。現在の実力なら一級術師に上がれるだけの力を発揮できる予感がする。


「ふーん? お前って凄いですね! 二級強の魔獣なんて倒せたのですか? それは相当の実力者とも言えるレベルですよ」

「まぁ、日々の鍛錬で強化して来た成果が実践で大きな力になっているんだろう。お前もどんどん実践を積んで強くなれよ?」

「了解です。お互いに頑張りましょう!」


 俺は九州に居座る期間も残り三日となる。あと少しで強化期間が終わる段階に入るのだと考えると高茂と過ごす時間も僅かに迫る。少しは高茂とも会話を交わしてあげようと気遣うつもりで接した。しかし、大して交わす言葉が見つからないで何となく話を進める中で彼が次の日に受ける任務の話題が挙げられた。


「次に受けた任務は二級弱の魔獣だ。これで俺が失敗して帰って来なかった時は情けない奴だと笑ってくれるか? 実は俺にも好きだった女性がいるんだ。彼女は俺と同じ術師で共に社会の治安を守るために戦うことを決めた時から就職を希望した。もちろん俺たちは魔力が宿っているから術師になることは叶った。しかし、今の俺たちは実力差がある。それが理由であいつは東京の方に出払っている最中なんだ。連絡はしているけど、あいつが出る時はいつも五日の間が空く。それだけ余裕がない状況が続いている。でも、連絡が通じた時の会話が凄く楽しくて短い幸福だけど、それが励みになって今後も頑張ろうって気持ちが湧いて来る。きっと恋しているんだろう。だから、俺だって強くなってあいつに相応しい男になるって決めたんだよ! この気持ちが分からないかな? 悠也はどう思う?」

「まぁ、好きな女のために強くなりたいと思えることは目標を超える努力に励む理由になる点は良いかも知れない。なら、全力で頑張らないといけないな?」

「おう! もちろんそのつもりだぜ! だから、明日は張り切ってんだ!」

「精々死ぬんじゃないぞ?」

「分かった!」


 意外と理想を叶えたい理由が好きな女に相応しくなりたいと言ったことなら凄く応援してあげたいと思える。そんなに男気があるとも知らないで高茂と距離を置きたいなんて思っていた。しかし、やっと二級に上がったなんて遅すぎる。

 俺は十八歳を迎えた時に進級を果たした。それは上層部に高い評価を受ける理由になった。それから一年は二級に留まった状態は続いた。しかし、今年で準一級に上がれるのも僅かに迫っている。この事実は非常に順調で成長する速度が並みの術師を超えているぐらいの才能が見られる。俺の戦闘センスなら一級術師を目指すことは出来るはずだと冷子だって言ってくれた。そんな評価があったからこれまでに努力を諦めなかった。それだけだったんだ。



(大切な人のためを想う心……。それが発揮させる力は果てしなく強くして少し限界の先まで連れて行ってくれる。きっと恋が発生源でも可能にすることが出来るのだろう。ま、俺だっていつか心の底から愛せる相手ぐらいは作って置きたいと思った時はなかった訳じゃない)


 考えた末で俺が出した結論はいつの日か全力で愛を注げる相手を作ることだった。愛情が自身を補強して限界を超える力になる点に少なくとも興味があった。やはり、人が持っている思いは自身に大きく影響して感情は決意すら変えてしまうほどの力を秘めて戦況を覆す奇跡を引き出せる。無自覚に発揮させた力は恐ろしいのだ。


「取り敢えず俺はもっと強くならないといけない。だから、お互いに強くなるためのアドバイスがあるなら共有して向上に努めようぜ! すげぇ良い発案だと思わないか?」

「それは別に構わないが、それなら連絡手段を持っていた方がいつでも共有が可能になる。今すぐにお互いの連絡先を交換しよう。今日は明日に備えて帰りたいから後はスマホで交わせると良いかも知れない。それじゃあ駄目な理由なんてないだろ?」

「良いのか⁉ 悠也の都合で駄目だと思った時から言い出せなくて困ってたんだよ。お前から言い出してくれるなんて一気に解消できたぜ!」

「あぁ。それは良かった。それじゃあ早く済ませよう。時間は大事にしたい」


 俺は以前まで交わしたくなかった連絡先を教える決意に目覚めた。それは高茂の熱意が伝わって自然と許せる気持ちが生じて下した判断だった。高茂が語ってくれた

思いがなければ短い付き合いで終わらせるつもりで接していた。それを覆す理由を自分の力で芽生えさせたのだ。


(取り敢えずこれで高茂からいつでも連絡が来るようになった。まさか後悔する出来事が起きることなんてないよな? 心配だけどもう遅い)


 高を括った決断はいつの日か後悔を呼んで絶望に悩まされる時が訪れる心配は少しだけあった。しかし、それは覚悟した上で決行に移る判断を下していることが今後にどんな影響を与えるかなんて分からないだろ。それだけが確実に予測できない時点で後悔の到来は避けられる保証はない。だから、この先で後悔に追われても良いと思って実行した。


 そして高茂と連絡先が共有できた後で自室に帰った。部屋に着いた時に済ませて置きたいことは食事だった。なるべく食事は抜かない習慣を継続して体調の不良を起こさない態勢を取ることが日頃の成果に繋がる点を重視する思考が根付いて今がある。やはり、日頃から工夫と改善を尽くして自身の理想を叶えることに徹する。それが積み重なって成果が見出せる道に誘導して行くのだった。


 次の日。俺はいつもと同じ時間に起床した。まずは洗面所で顔を洗って台所に向かう。そこで冷蔵庫に仕舞ってあった食材を使って料理する。それが今日の朝食で身体に栄養を送る手段の一つに数えられる。栄養が身体中を回ることで活動が出来る態勢に仕上げられる。

 そして食後は十分の経過を待ってから運動着に着替える。朝の日課でもあるランニングに出掛けるために運動着を着ることは必須だと考えている。それが済んだ後で部屋の鍵を閉めて外出を実行する。


「ふぅぅぅ~!」


 ランニングはいつも時間を決めて行うようにしている。時間でランニングに臨むことは持久力の強化に相応しい手段であると考えて決行していた。一定の距離を走ることよりも無限に挑戦できる手段を採用して挑んでいるのだ。


 ランニングが終わった後は基礎筋力を鍛えるトレーニングを始める。これらをこなして肉体を強化させて行くことが強い秘訣とも言えた。これを欠かさないで日々の習慣として徹する意味は非常に重要だった。だから、毎朝のトレーニングはそれなりの意味を成していた。


 そして今日の午前は任務の依頼が届くこともなく過ぎた。しかし、午前の一時五分を腕時計が示した時にスマホが鳴った。


「分かりました。直ちに向かいます」


 連絡して来た相手は上層部だった。任務が依頼されて俺は即座に支度を済ませる。支度が整った後で急いで家を出た。そこで外に差し掛かったところに魔術協会が用意した車が待機していた。それに乗り込んで現地まで移動すると着いた先の雲行きが怪しい様子が見た感じで分かった。これは車の中でもらった情報によると魔獣の持つ能力が作用して生じた環境であることは理解した。取り合えず車を降りて魔獣が居座っている場所に向かって走った。


「こいつが今回の相手だな?」


 そこで目撃した魔獣は巨体に四本の腕と足をを生やして四本の剣を握った状態を視覚で確認できた。それに加えて多少の知性があると情報は示している。これを相手した二級術師は全員が倒されてしまう実力を持っていた。つまり、これは俺を試す機会だと思って良いらしい。


(情報が確かなら空に広がった黒雲は雷を起こすために発生させた可能性が高い。あれが搔き消せる手段は残念だけど持ち合わせていない。なら、雷は回避しながら対処する必要がある……!)


 こいつは二級の中でもさっき中レベルに認定された魔獣だ。つまり、想定以上の相手になることが予測できる。


「ま、とにかく行くか!」


 俺は手始めに術式を構築する魔力を操作して起動の準備を施す。そして攻撃が当たる距離まで接近して術式の発動を開始する。


「これでも食らえ!」


 俺が掌から炎を放出させると魔獣は素早く反応していきなり攻略の一手を施した。それは口から吐いた突風が炎にぶつかって打ち消したのである。その防御策を知った時に放出する炎は通じないことに気付いた。


「マジか……。それなら打撃で向かって行くしかないな!」


 俺は即座に接近で攻略する方法を考えた。これは俺の最終手段とも言える策だった。実際に俺が持つ術式は放出か殴るの二択しか攻撃方法はない。後は通常の殴打で攻撃する以外に攻撃は出来ない点が大きく不利を招いた。


(こうなるなら武器を携えて置くべきだったかも知れない。武器があれば攻撃手段の幅が広がって術式の不利を補えた可能性が高い)


 接近しながら内心で倒す際に効果のある別の手段を考えていた。それは今後に繋げて行くための発案で浮かんだ策は今回の任務を遂行した後で有効的だと捉えることが出来る。

 とにかく今は目前の敵を倒して終止符を打つことに集中する必要がある。まずは目前に立ちはだかる敵が握る剣で斬られないように避けて攻撃することを目標に接近を試みる。


「グァァァアアア!」


 敵は四本の手に握られた剣を振るって斬りつけようとして来る。それをギリギリで回避して術式が作用した拳で顔面に殴打を決める。しっかり攻撃が顔面を目掛けて下されたそうになった瞬間に再び口が大きく開かれて突風を吐いた。


「ぐぁぁぁあああ⁉」


 空中に浮いた状態の俺に突風で吹き飛ばされてしまった。バランスが崩れて上手く着地が出来ないで地面に叩き付けられた。これでダメージが確実に受けて身体中に痛みが走る。そして次攻撃が余裕で俺に向かって伸びる。剣撃が四連続で地面を斬るが全て外して攻撃の下されたℬ所に俺はいなかった。


「あぶねぇ。危うく殺されるところだった」


 俺は横に転がって剣撃を逃れていた。四連続に渡る剣撃は避けた後で態勢を立て直す余裕を作らせてもらった。実際に遠距離の放出とブレスが直撃する範囲に身を置か

ないことで攻略が出来ると判断した。つまり、素早く走って背後に回る策が有効だと考えた。


(実際はこんな巨体の背後を取るなんて難しい。しかし、勝利条件は絞られた。それしか攻略法はない!)


 俺は全力で走った。敵の背後は遥かに遠回りする必要性がある。つまり、殆どぼ場合は回り切れないと思う方が自然だろう。だけど、取り敢えずブレスが的中が外れる範囲に回って顔面を攻撃することが有効となる一撃を下しやすい。


「走りながら結論を出して速やかに実行に移す。敵は剣撃を続ける素振りを見せるが、実際に走って避けられる攻撃でしかなかった点ℬが幸いだった。

 すると、忘れていたせいで敵が持つ特性を思い出させる攻撃が下される瞬間に立ち会う。敵は剣を振るうことを止めて今度は黒雲を駆使した雷撃を繰り出す手段に出た。


(まさか来るな……!)


 そう思った一瞬で俺の走る一歩前に雷が落ちた。すぐ後ろに雷を落とした敵が次々に同じ攻撃を繰り返す。それも、落雷は後を追うだけでなくて前にも攻撃が及ぶ寸前で停止する。雷は俺の目前に落ちて危うく的中するところだった。


「マジか……。落雷を仕掛ける場所を工夫して下せるなんて危ない野郎だ。これだと簡単に近づけない!」


 そんな一瞬に気を取られていた俺は警戒心を強める。すると、今度は立ち止まった俺に向けて剣撃が放たれた。


「おっと⁉︎ 危なねぇ⁉︎」


 四連続の剣撃を咄嗟に避けて敵と縮めた距離が遠くなった。この状況が続いてしまうと俺の勝利は望めないと考える他になかった。


(一体どうすれば良いんだ? 剣撃は四連続で放たれる上に接近すると雷が走って向かう先のどこかで落ちる。これじゃあ幾ら慎重に接近したとしても時間が掛かり過ぎる。ここは取り敢えず退散するしかないかも知れないな……!)


 俺は諦める道を選んだ。他の術師だって同じ条件で逃げ出した可能性も考えられる。なら、俺も退散して命を優先する必要があるかも知れないと判断した。


 そして走り続けて逃げた時に魔獣の攻撃が止んだことに気付く。安心して走る足を緩めると少し離れた場所に車が停められているところが視覚で捉えられた。

 そこまで歩いて向かうと車から降りて来た補助術師が姿を見せる。彼は魔獣が討伐できたことを確認するが、それを深刻な顔で出来ていない事実を聞かされて項垂れる。


「そうですか……。それは残念です。しかし、これで準一級クラスに認定されることになるかも知れません。後はこちらに任せて帰還しましょう」

「それしか道はない。しかし、まだ諦めた訳じゃない! ここであいつが倒せないと言うことは進級なんて無理だって思われる。それだけは絶対に嫌なんだ! だから、あいつよ相手は少し考えさせてくれないか?」

「僕は別に構いませんが、上層部がなんて返事するか分かりません。そこは了承を得てから実行してください」

「分かった」


 俺は諦めなかった。この一戦は準一級を目指す上で自分が受け持つべき好機だと考えていた。これを逃すなんて後で悔いが残る行いになる恐れがある。それを踏まえて俺の意思はあいつを倒す一心を胸に誓って再戦を決めた。それが今後の任務に関係して来る経験に繋がっていつか諦めないで立ち向かった瞬間を糧にする時を迎えるかも知れない。だから、俺が抱いた意思に逃げるなんて言葉はなかった。

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