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ヒの国  作者: 木耳
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第二話 魔法のある世界

あれから多少の年月が経過したと思う。

俺は、気を失って倒れていたところを拾われて以降、その人たちの元でお世話になっている。


どうやらその人たちは夫婦だとのことで、妻の方がキク、夫の方がエルモアという。


2人は長い間子供が欲しいと願っていたらしく、やっと願いが叶ったのだ、とかなんとか言って俺の存在をすごい喜んでいたらしい。


2人は、オルドー領にマイホームがあって出生もオルドー領らしいが王都の騎士団に所属しているので、有事の際は王都に向かって任務を全うする。


2人が騎士であるということは必然的にその子供(養子)である俺も騎士の英才教育を施されるということであって、剣術をはじめとした様々な素養を叩き込まれる日々であった。


それをもう一つ。この世界には、魔力という者が存在していて、この世界の生物はみな、これを扱うことが出来る。


ただし、この魔力を扱うには適正というものがあって、適性がない者は、とても簡単な魔法しか使えなかったり、そもそも魔法が使えなかったりする。魔法適性がある者は、ペルギアと呼ばれていて、バルティカには、たくさんのペルギアがいる。


俺は、どうやらこの魔法適性があったみたいで、魔法を使うことが出来た。魔法というのは、簡単に言うと、世界や自然界に対する干渉、表面上では見えない魔力というものを自在に扱うことで、大炎を作り出したり、海を割ってみたり、雷を落としたりとにかくやりたい放題出来るすご技らしい。


キクとエルモアも魔法を使うことが出来るいわゆるペルギアらしくて、「お前も俺と母さんみたいに魔法と剣の二刀流でいくか?」とか言われたが、なんかめんどくさい訓練が増えそうだったから丁重にお断りしといた。


ただ、せっかくの魔法を使わないのは勿体無いのでこちらは自分自身で研究して使えるように極秘に訓練していくことにした。


あと、しばらく経って気づいたが、この世界には、ヒト以外にも様々な種族が存在している。俺が普段生活しているオルドー領は、国境を含む領土で、お隣さんが連邦国なのだが、この連邦国からたびたび商人や入国者などがやってくる。


その時に連邦国から来るのは、獣人、竜人、小人(ドワーフ)森人(エルフ)、妖狐、亜人などなど。他にも聞いたところ、連邦国にはいないが、世界には魔族や天使、竜、妖精とかも存在しているらしく、いまだに見つかっていない種族などもいるかもしれないと言っていた。


正直、初めてエルフを見た時は、子供の体ながらかなりくるものがあった。流石にいますぐにエルフとの出会いを求めるというのは、まずい気がしたので、もう少し成熟するまで我慢しよう。ただ、大人になったらまずはエルフに会いに行こうと心に誓った。


この話をエルモアにしたら、得意気にエルフとのデートエピソードを話していた。最終的には、そのエピソードトークを聞いていたキクに半殺しにされていたので、キクの前でエルフの話をするのはやめようと思う。


「ロムにひとつ教えておかなきゃいけないことがある」


ある日のこと、いつものように訓練を終えた夕方、エルモアは真剣な眼差しで話を始めた。俺は、神妙な面持ちでうなづく。


「この世界にはな、タクラマクラの霊廟と呼ばれる謎の建造物があるんだ」

「タクラマクラの霊廟…?」

「あぁ、なぜ作られたのか、どうやって作られたのか、誰が作ったのかまったく分かっていない謎の建物なんだ」

「それがなんなの?」

「かつて、そのタクラマクラの霊廟を欲しがって多くの国々が争い凄惨な争いが繰り広げられたことがあったんだ。その戦いは、何百年もの間続き、やがて終わりのこない戦争に終止符を打つために数人の英雄が世界中を奔走して、ようやく戦争は終わったらしい」

「そのあと、それはどうなったの」

「その英雄は、誰もタクラマクラの霊廟を手に入れることを禁じてそれを世界の国々で絶対不可侵の条約として締結させたんだ。だから、タクラマクラの霊廟はいまどこの国のものでもなければ、誰のものでもないという訳だ」

「それが教えておかなきゃいけないこと?」


エルモアは、沈んでいく夕日を眺めながら歩き出す。そろそろ、うちで夕飯を食べる時間だから歩きながら話そう、と言う。俺は、うなづくとエルモアについていくように小走りで歩き始める。


「いま話していたタクラマクラの霊廟とペルギアってのは、同じようなものだと思うんだ」

「同じもの…」

「いま、バルティカはペルギアのある人材を積極的に集めて収集しては、他国の需要に沿う形で供給していたり、また他国もバルティカにペルギアを求めてやってくる。これって、さっきの話と似ていると思わないか?」

「たしかに。他国の人々はペルギアを求めていて、バルティカにやってくる。また、バルティカ自身もペルギアを求めている。これはまるでタクラマクラの霊廟のと同じことが起きてるみたいだ」

「そう。そして、ペルギアは他国の軍事力や政治などに利用されている。ペルギアとペルギアが違う国の兵士として戦うことだって珍しい話じゃないんだ」


「それってとても悲惨なことだと思うんだ、ロム」

「…うん、そうだね」

「だから、お前にはそんなペルギアをいいように使う奴に使われてほしくないんだ」

「…うん」

「魔法はとても便利なものだし、いざという時は自分や大切な誰かを守る為に使うこともできる素晴らしい側面もある。同時に、悪用すれば多くの人の命を奪ってしまい、戦争の火種になる危険性も秘めているんだ。だから、お前には是非、良いことをする為に魔法を使ってくれると俺は嬉しいよ」

「…うん。約束するよ、エルモア」

「おぅ!」


魔法のある世界は狂気の凄惨な世界を作り出す危険性を持っている側面と未知のチカラを得ることが出来るという希望の側面がある。エルモアは、王都の騎士団として、様々な国の争いを見ている中で、魔法のある世界の狂気の側面の危険性を身をもって痛感しているのだろう。だからこそ、1番大切な息子であるロムにわざわざその思いを真剣に伝えたんだと思う。


その思いを胸にしっかりと刻み夕食が準備されている家に走りながら帰っていく。


―――――


それからロムの魔法研究の日々が始まった。

もちろん、毎日の剣術の修行はあるのでそれが終わった後の自由時間を使うことになる。それに、ロムはエルモアの忠言をしっかりと……………守っていなかった。


ここ何週間か魔法について色々研究してみたが、色々なことが分かった。


まず、魔法というのは魔力を源泉として行使することが出来る訳だが、自身で保有している魔力と行使できる魔法には種類があって、それぞれによって得意な魔法やたくさんな魔力を保有することが出来る種類があるということだ。


例えば、火、水、木、雷、土などが挙げられる。これらは、すべての者に基礎的に与えられている5つの系統魔法である。多くの者は、この5つのうちの誰かの系統に大きく補正が掛かっていて、その系統の魔力の保有や魔法の行使を最大限まで発揮することが出来る為に、各系統における最大クラスの魔法行使が可能となる。


もちろん、他の系統の魔法に関してもまったく使えないというわけではない。他系統魔法についても、行使することは出来る訳だが、保有できる魔力の量と適性魔法系統との親和性、それぞれの魔法行使の練度、独自の持つ特性、種族など様々な要素が複雑に絡み合っている。例えば、火は雷・土と親和性があり、水は木・雷と親和性がある。木は水・土と親和性があり、雷は火・水と親和性がある。そして、最後に土は火・木と親和性があると言った感じである。


そして、さらに5つの基礎系統は、複数魔法系統の練度を上げることや一つの系統を限界値まで上げることによって、上位系統というものを扱うことが出来る。ただ、今の時点では、上位系統に関する資料は少なく、家にある資料と自分の魔法研究では全てを知ることは出来なかった。


そして、基礎系統の5つに加えて、陰と陽の特殊系統というものがある。これは、生まれ持った段階で基礎系統とは別に、あるいは基礎系統プラスで特殊系統を持っていることがある。陰と陽は、治癒や蘇生、攻撃の無力化や精神攻撃、幻覚、加護の付与、召喚など多岐に渡って様々なことを可能にする。ただし、陰と陽の系統魔法は、完全に適性を持つ者のみが使う事が出来る魔法であるので、特殊系統魔法の適性を持つペルギアは、各国においてとても重宝される。


これ以外にも、魔法には基礎的な能力を向上を可能にする(基礎魔法)。例えば、身体の強化や硬化なのが最たるものだ。これに関しては、魔法適性をまったく持っていない、つまりペルギアではない者でも、扱うことが出来る魔法でおおよそこの世にいるすべての者は基礎的な能力を魔法によって向上させることが出来る。


基礎魔法についても練度というものは存在していて、仮に練度の差があるものが互いに身体強化を使った状態でぶつかり合った場合、練度の高い方が低い方を圧倒することになる。これには、保有できる魔力の量も関係していて、身体強化や硬化において、その状態を維持することや良質な魔法を自身に付与する為には練度が必要であるが、そもそも個々の保有する魔力量によっては練度が高くても魔力量が低い為に上手く魔法が付与できないこともある。そして、同じ練度同士でぶつかり合った場合や多少の練度の差でぶつかり合った場合は、魔力量の多い方が圧倒することになる。


そして、魔法による強化は自分以外の有体物(武器や防具など)にも付与することが可能で、使用は自身に付与する場合と同じである。


更に、これは魔法とは関係ないのだが、人によっては、先天的に特性(タレント)を授かっている者がいる。この特性というのは、魔法適性を大幅に上昇させることやそもそも魔法適性が複数の系統になるようなもの、更には魔法以外にも剣術に関する才能を最大限発揮するもの、魔物や動物を思い通りに動かすことが出来るようになるもの、学術の才能を最大限に発揮させるもの、商人としての才能を開花させるもの、豪運を獲得するものなど、その種類は数え切れない。


後天的に身につけることができる特殊技能(スキル)とは区別されるもので、殆どの者は後天的に特性を授かることはない。加えて、なかには特性(タレント)を複数所持している者や普通の特性よりもより強力で珍しい能力を有する上位特性(グランドタレント)、更には世界そのものに変革を齎すことが出来るほどの神話的な能力を付与する究極特性(エクストラタレント)などもある。そして、特性は所有者の能力に応じてより上位の特性(タレント)に変化することもある。


更にさらに………


―――――


この世界において魔法には無限大の可能性がある。

それに、この世界ではどうやら魔法の存在を前提とした文化や制度、設備も多く、日常生活においても魔法の存在は必要不可欠なものである方が分かった。


例えば、バルティカの王都には、国家行政の一つとして、魔法省という魔法使用に関する規則や魔法研究など、魔法士の育成などを取り仕切る機関がある。それに付随して、バルティカでは、魔法行使に関するルールや禁止行為の規則の施行、魔法士育成の一つとして、魔法士育成のための専門教育機関などを運営している。また、この世界には、魔法の術式を羊皮紙に保存している魔封じの書(スクロール)というものがあり、それらの商取引に関する規則の制定も行なっている。


他にも日常的なところでいうと、魔力を動力として動く日用品や交通手段の乗り物、世界に存在する高度な発展を遂げる都市では、魔力自体を生活インフラとして盛り込んで生活基盤を作り出しているなんてこともあるとか、とにかくやりたい放題なのである。


次に、基礎系統の5つのうち自分が火の魔法や魔力に適性があることが分かってきた。他の魔法に比べて、火の系統魔法の方が使いやすいし、威力や制度、練度の上達も体感的には速い気がする。


ただ、最初のうちは扱いがとても難しかった。

ある日の練習中に、火球(ファイヤーボール)を的に当てることで制球力を高めようとしていたところ、もともと、自分の保有できる魔力量が膨大であったこともあってか、近くにあった森林を全焼させてしまい危うく大惨事になってしまう事件があった。


あの時は、エルモアにバチボコに怒られて、「なぁ俺あの時言ったよなぁ?」と詰められた。流石にあの時は、100パーセント自分が悪かったので反省しておいた。


しかし、驚いたのは、その後に全焼させてしまった森林を魔法を使って森林を再生させていたことだ。どうやら、キクは木系統魔法の適性があるらしいく、更には高レベルの木系統魔法を行使することができるのだ。


魔法の練度を高めると森林を作ることも出来るのか、ととても驚嘆した。


キクが言うには、基礎系統魔法は普通遺伝的に受け継がれるもので、父親と母親のどっちかの系統に適性が出ることが大半らしい。中には、同一適性を持つ者同士で子供をつくることで代々一つの魔法系統を代襲している一族もあるみたいで、5大魔法家という一般的に名の知れた一族があると言っていた。


キクはなんでも木の魔法系統家系の系統樹の1人だそうで、私も有名な一族の出生なのよ、とドヤ顔で自慢された。


それならエルモアも木魔法系統の家系なのかと聞いてみたが、どうやらエルモアは水魔法系統の家系の出身らしく、キクと同じように名門家系の出生らしい。


そんな2人がどうやって出会ったのかちょっぴりだけ気になったのでついでに聞いてみたのだが、キクが「それはもう…とっても運命的な出会いでね…」と言ったあたりで、長い2人にロマンスラブストーリーになる予感がしたので、「あ、もう大丈夫!」を潔く切り替えしてその場から即座に撤退した。


2人のラブストーリーを長い間聞かされるのはごめんだ。


ロムはキクから逃げるような足取りで、いつもの魔法訓練のために外へと駆け出していくのであった。

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