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第51話 勇者リスタ

 この世界とは別の世界。その世界にも魔法と魔物が存在していた。そして魔物には魔物の頂点に立つ存在魔王がいた。人々は魔物と魔王の脅威に脅かされていた。

 人々の中には魔物と戦うことを決め立ち向かう者もいたが魔王を倒すことはできなかった。

 魔王は圧倒的な力で自身に戦いを挑んだ物足りない達を返り討ちにした。魔王を倒すために何百人という戦士がチームを組んだ時もあったが生きて帰ってきたのは僅か10数人。

 魔王がそこまでに強い理由は2つ。1つは単純な肉体の強さ、もう1つは魔王が魔法を使えることだ。


 魔法は魔力を持つ者であれば使える。それは人間以外にも該当する。しかし魔法を使えても扱えなければ意味がない。

 魔王は人間のように知性があり会話ができる。だから魔法の使い方を学び理解し、そして応用する。そうして人間達を次々と倒していき、ついには魔物を率いて戦争を引き起こした。

 

 魔物と人間が戦い死んでいく中、強大な力を持った1人の青年が現れる。彼は迫る無数の魔物を倒してき劣勢だった人類は優勢になる。

 青年の力と活躍を見た人々は彼を''勇者''と呼んだ。


 そして勇者は2人の仲間と共に魔王と対峙する。戦いは4日間も続き長い戦いの末に勇者達が勝利した。


 魔王を失った魔物は人類に倒され残った魔物は人類への攻撃をやめそれぞれの住処に帰っていった。こうして人類は平和を手に入れた。


 数年が経ち文明は発達し豊かな生活を過ごしていた。

 そんなある日彼女らが現れた。突然現れた5人の少女はたったの数日で勇者の国を滅ぼしその後もいくつもの国を襲った。

 もちろん勇者達も戦ったが力の差があり敵わなかった。

 大小合わせて10もあった国々は気がつけば残り3つとなった。


 少女達との戦いの中で友達や家族だけでなくかつての仲間の1人まで失った。


 1人の少女に拠点が見つかってしまった勇者は仲間であり親友であるアランと戦ったが負け世界に平和をもたらした英雄は死んだ。


 そして死んだ勇者はこの世界で転生し新しくできた友達と過ごしていたが自分を殺した少女と再会した。



 ベールの話を聞き終えたオペラは少し考え彼女の顔を見て口を開く。


「待ってもしかしてベールちゃんの前世って」


「この話に出てくる勇者。前世だと勇者リスタって呼ばれてた」


「勇者かっこいい」


 キラキラとした目でベールを見る。


「カかっこよくないよ。何も守れなかった。友達も家族も仲間も国も大切な人も!」


 拳を握り悲しみと怒りが混じった声を出す。目には涙を流している。


「エリスって子はその5人の1人なんだね?」


「そうです。エリスと一緒にいたグレースもです」


「だからあんなに怒ってたんだね」


「それにしてもなんでこの世界に」


 ベールは頭の中に浮かんだ疑問を口にする。


「ベールちゃんは何か知ってることはないの?例えばベールちゃんの世界にきた理由とか」


「分からない。どうやって他の世界へ移動してるかも分からなかったんだ。分かってるのは少なくとも5人1人1人が魔王よりも強いってことかな」


「それ以外は何も知らないんだね?」


「知らないです」


 返事を聞いたシェリーは部屋の扉に向かって歩く。


「シェリーさんどこに?」


「あの子達について分かってる事は聞いたから帰る。一応リカールにも伝えとこうかな。それじゃあゆっくり休んで。おやすみ」


 扉が閉まり足音が遠ざかる。


「ベールちゃんとりあえず寝ようよ」


「そう…だね。寝よう」


 2人は布団の中に入り横になって天井を見る。


「リンちゃんにも後で話さないとね」


「オペラちゃんは信じんですか?さっきの話を」


「うーん正直に言うと半信半疑かな。勇者や魔王は分からないけど女の子は信じる。実際に見ちゃったし。私怖かった。怒ったベールちゃんもだけどあの子…エリスちゃんが怖かった。怖くて体を動かせなかった。でもベールちゃんが戦ってくれた」


「あの時俺は怒りで守るなんてことは考えてなかった。死んだ皆の仇をとるっていうことしか頭になかった。ははっこんなこと考えるなんて勇者失格だよ。いやこの世界じゃ勇者じゃないか」


「助けるつもりはなかったとして私は助けてもらったって思ってる。だから礼を言わせて。ありがとう」


 「ありがとう」という言葉は今までに何度も言われてたがなぜだか少し恥ずかしがった。


 ベール心の中で誓った。もしこの世界で少女が同じ事をするつもりなら今度こそ倒して守ってみせる。例え死んだとしても大事なものを守ってみせると。



 シェリーは何かを思い出さそうと頭を抱えながら廊下を歩いている。


「やっぱりあのエリスって子どこかで見たことあるような…。どこで見たんだろ」


 歩いていると反対側からルサーネが歩いてくる。


「貴方はシェリーさんでしたね。いつ入ってきたんですか。教えてくれないともてなしができないですから」


「あはは、今日はリカールと話してから帰るからもてなしとかはいいよ。リカールは部屋?」


「自室にいると思いますよ」


 シェリーはルサーネの横を通りリカールの部屋に向かう。

 部屋に入るとリカールは椅子に座って本を見ていた。


「入るならノックしてくれ」


「何見てんの?」


 本を見てみると見ていたのは歴史書だった。


「王様ってその座についても勉強するんだ。大変だねー」


「勉強っていう調べものだよ。シェリーって魔物がいつからいたか知ってるか?」


「少なくとも先文明の時にいなかったのは知ってるけど具体的にいつからいるかは分かんない。だいたいなんでそんな事調べてんの」


「洞窟でニーナと会った時に変な事言ってただろ」


 ニーナが言ってた変な事はあの事かな。


『私も前は人間を襲ってた。でもある時、それはもう意味がないと気づいたの』


「あの言い方何か目的があったって事になる。家に帰って考え見た時にふと思ったんだよ。魔物ってなんだろう」


「それで調べてるのね」


「調べるのはいいが魔物に関する情報を同じのばっか。魔物の種類や主な生息地、過去に魔物・魔人によって起きた大きな被害そのぐらいしか載ってない」


 リカールは髪をかきながら文句を言う。彼の机には10冊の本が置いてありそれらは全て魔物に関することが書いてある本。

 これだけ見て同じ情報しかなってないという事は逆にそれぐらいしかわかってないことになる。


 シェリーはある事を思いつく。


「セスティア教会なら何か知ってるかもしれない」


 、


 セスティア教会。アストラ王国にある教会で国の端の方にある。

 教会は信仰よりも身寄りのない人や過去に過ちを犯した人が生活する場所としての印象が大きい。身寄りのない人の大半は魔物によって場所や人を奪われた人のため魔物に憎しみや怒りを抱いている。


 それゆえか彼女達は魔物に対して詳しく教会の周辺には魔物が寄らないように常に聖域(サンクチュアリ)が展開されている。

 今回魔人の襲撃があったが教会は目立つ被害はなかった。


 ただ国の人達の中には教会や教会に住む人達に関わろうとしない。昔は教会と国民は仲が良かったが数年前から国民が避けるようになっていった。

 前に聞いた話によると教会を嫌っている訳ではなく関わりたくないらしい。


「確かに知ってるかも知れないけどいきなり訪ねるのは失礼だろ」


「あくまで提案しただけだからどうするかは任せる。じゃあ私は帰るね」


「ていうかお前いつここ来たんだよ。客人が来たなんて聞いてないぞ」


「えっ?!あー。仕事あったの思い出した!」


 シェリーは逃げるように部屋を出た。


「おい。ってこの距離じゃ聞こえないか。…セスティア教会か」


 天井を見つめながら呟く。しばらく考えて教会にいくことを決めた。

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