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第47話 魔人とニーナ

 避難所に避難していた人々は魔人が起こした竜巻により王都の中を移動していた。彼らは屋台近くでいた人達だが1人の子供から魔物が王都に入ってきたのを聞いて避難していた。

 街には魔物がうろついでいて倒しても少し進めば別の魔物が現れ、倒して進みまた魔物を倒す。

 進んでいくと別の人達と出会う。彼らはパーティ会場にいたが2人の子供から魔物が王都に入ってきたのを聞いて会場内で身を潜めていたが会場が竜巻で壊されてしまったので他の場所を探していたらしい。

 相当な人数がいるため小さい建物では入り切らない。大きな建物も壊されている。話し合って国王の屋敷に行くことにした。建物や敷地が広いし、優れた使用人がいる。


 屋敷付近には魔物はおらず中から1人の子供が出てくる。彼はパーティ会場に知らせに来てくれた子だ。


「皆さん無事だったんですね。こっちです」


 彼は私達を案内する。その先には国王様と3人の少女と2人の少年がいる。少女たちは先程会った人達に知らせにきてくれた人である。

 少女の内の1人は国王様の娘で、床で横になっている少女を心配そうに見ている。もう1人の少女は険しい顔をしている。


 外から()()が聞こえる。


「今のは銃声?」


「外で帝国の軍人が魔物を倒してる。ここに魔物がいないのは彼らのお陰だ。本当は俺も行きたいんだけどそうしたらここを守れる人がいなくなるから任せるしかない」


◇◇◇◇◇


 降りてきた魔人は3人を見つめる。その中にニーナがいる事に気づく。


「生きてのか、殺したと思ってた」


「流石に死ぬかと思ったよ。強い奴と戦いって言ってる奴が奇襲するのはどうなの」


「奇襲したのはお前だけだ。お前だけは許さない。俺を笑い馬鹿にしたお前を」


 魔人は風の渦を、ニーナは螺旋状の水を放つ。2人の攻撃は互角の威力で拮抗している。

 魔人は竜巻を起こしニーナを空に巻き上げる。


 竜巻の中から水が放たれ魔人を貫くがすぐに傷が治る。空へ浮かび竜巻から抜けだしたニーナと戦い出す。

 魔人はパンチやキックで仕掛けるが流される。ニーナの触手から紫色の粘液が出し魔人の左腕輪に付着する。すると左腕から激しい痛みがし、粘液の触れた箇所から少しずつ溶けていく。

 魔人は魔法で腕を切断し再生させる。落ちた腕は完全に溶ける。


「判断が早いね。大体はビビって何もしないでいて全身溶けるのに」


「なんで毒が使える、水と触手だけのはず」


「変異種から魔人である前に私はクラゲの魔物なんだよ。その中でも毒を持つ種類のね」


「だから毒が使えるのか、だが毒も触れなきゃ意味がない」


「それが何?貴方が言ってたように水や触手がある。それがダメならシンプルに殴ればいいだけ。成ったばかりの新米が勝てると思ってるの」


 ニーナは光のない目で殺意を魔人にぶつける。彼女は本気で戦う気になっていた。

 彼女の周りの雰囲気が重くなる。


「その目、やる気になったな。なら楽しませてくれ」


「楽しむ?私に勝てると思ってるの?舐めんなよ、()りたての癖に思い上がんないでよ」


 風の渦を起こすがニーナの触手で切り裂かれる。彼女の体から水が出ると複数の玉となり飛んでくる。魔人も風弾を放ち向かってくる玉と相打ちにする。

 魔人の体は後ろに飛ばされる。体を見ると不自然に凹んでいる箇所がある。


「あんたの体硬いね。穴空けるつもりでやったのに」


「さっきの水玉か。俺の風で消したはず」


「あんた確かに風は当たったけど、威力と魔力が足りなかったね」


 彼女に突撃しながらパンチする。下からの水に持ち上げられると今度は上から水の槍が降る。腕を振るい強風で軌道を逸らす。

 着地し態勢を整える。魔法による攻撃ではなく肉弾戦を選ぶ。

 触手に触れないために風刃で触手を切り近づき、顔にパンチする。反撃させる隙を与えないために攻撃を辞めなかった。

 疲れるまで攻撃し続けた後、魔法を数発放つ。動かない彼女を見て気がすんだ魔人は戦いを見ていたシェリーと女性の2人を見る。


「気はすんだ?」


 自分が疲れるまで殴り続けた彼女は平然と立っている。反撃しようとした時、左腕が空に舞う。何かに切られた。

 ビュンと何かが目の前をかする。目を凝らしてよく見ると触手が空気を切り裂いている。

 触手をとんでもない速さで動かして刃物のようにしている。腕を切ったのもあの触手だろう。風刃で切った触手も生えている。


「何してんの?早くきなよ」


 ニーナは考える魔人を煽る。その行為にキレた魔人は突っ込む。

 切られた腕を前に飛ばし触手の攻撃を誘導、勢いをつけ強烈な蹴りをお見舞いする…が水の壁に防がれ、触手と水の魔法の攻撃を受ける。


「クソッ」

「分かった?魔人になってもこれだけの差があるの」


「まだだ、せめてお前を殺すまでは死ぬ訳にはいかないんだよ」


 魔人から魔力が溢れ出す。腕を前に出し風の渦を放つ。


 魔力が増えたせいかさっきよりも威力が上がっているのが見て分かる。避けると後ろから木が倒れる音が聞こえる。

 風の渦がまた迫る。渦の中から風刃が飛んできて両足に傷を負ってしまいそのまま渦を受ける。


 間髪入れずに渦が迫る。水で渦を押し返す。


「顔に余裕がなくなったな。ビビっているのか」


 ビビってはいないが驚いているのは確かである。戦いの時に魔力が増えるのは見た事があるが魔人がこの現象を起こすのは初めて見る。


 体が急に重くなるのを感じる。久しぶりに本気をだしたせいで体が耐えられなくなっている。


「随分とキツそうじゃないか」


「久しぶりに本気出してるからね。魔法も連発してるから疲れるんだよ」


 魔法をぶつけ合うが埒が明かない。


「はは、やっぱり強いな。いつの間にか楽しんでたがこれで最後だ」


 両手を伸ばすと2つの風の渦を同時に放ってきた。水を螺旋状にして渦にして放ったが体が限界を迎え押し負けてしまい渦に呑まれながら飛ばされる。起き上がる力を残っていなかった。


「全力を出したのに俺を殺せなくて残念だったな、先輩」


 まだ動かせる触手で攻撃するがそれに気づいた魔人に避けられる。


「危ない危ない」


 魔人が魔法を放とうとした時、シェリーが前に出る。そして炎で


「急に戦いが始まったって思ってどうしたらいいか分からなかったからずっと見てたけどさ、いつまで続ける気なの。しかもニーナはあの魔人をボコボコにするみたいな事言ってたのに逆にやられてるじゃん。恥ずかしい」


「うるっさい。勝てると思ったの。でも久しぶりに本気出したから体が耐えられなかったの」


「それに見なよ。生えた木がなくなってるし、あんたらの強力な魔力にあてられて植物も枯れてるし」


 飛んでくる風刃を炎の刃で打ち返す。目線の先には魔人がいる。


「あんたも何の用でここにきたの」


「その質問されるの何回目だよ。俺は強い奴と戦いたいからここに来た。ここに来る前にも何人かとやってたけどそいつらよりも強い気配がしたから来た」


「へー、そう」


「そいつと楽しもうとしたのに来てみれば殺したと思った俺の嫌いな奴(ニーナ)がいたからもう一度殺そうと思って…」


「あー待ってそこまで聞いてない。えーと、強いと奴と楽しむために来たんだっけ?残念だけどここにはニーナより強い人はいないよ」


「いいやいる、お前だ。ついさっき俺が放った攻撃をお前は簡単に打ち返した。弱い奴はそんな事できない」


 彼女の返答を聞かずに魔法で攻撃する。


「返事言ってないのに攻撃してくるな。まっいいよ。そのつもりだったし。ほら好きなタイミングできなよ」


「じゃあ遠慮なく」


 魔人がシェリーに戦い始めた時、屋敷で横になっていたリンが起き上がった。

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