4話 ユウリ大佐に会おう
帝国に入ったボクとマリーは帝国中央部にある軍事施設に入った。長い廊下の向こうから軍服を大柄な男が走ってきた。
「マリー大丈夫だったか?さっき近くで魔物が出現してマリーが戦ったと聞いたから心配したんだぞ」
「斑鳩大佐心配おかけしました」
「うん?その子はどうした?」
「この子は魔物の襲撃をうけたスラム街での生き残りです。名前はリンというそうです」
「なるほど生存者か。よく生き残れたな。魔法で隠れたりしたのかな?」
斑鳩はボクを見つめた。
「リンが怖がるかもしれないのでやめてください」
「おっとすまない。リンちゃんもすまんな」
「そういえばユウリ大佐はどこにいらっしゃいますか?」
「ユウリ?あいつならさっき「眠い!寝る!」って言って自室に入ったぞ」
「はぁまたですか。分かりました。ありがとうございました」
お礼を述べたマリーは長い廊下を歩いていきボクは置いていかれないようについて行った。
長い廊下を進み休憩中と書かれた紙が貼ってあるドアに入った。ドアを開けるとイスに座り寝ている若い男がいた。
「ユウリ大佐起きてください」
んぁと言いながら男は目を覚ます。
「何だよマリー折角気持ちよく寝てたのによー。魔物の死体と俺の貸したバイクを持ってどうしたんだよ。ってバイク?おいお前もしかして俺のバイク壊したのか」
焦るユウリに対してマリーは申し訳なさそうに頷く。
「まぁ壊れたもんは仕方ない。多分お前が持ってるその魔物にバイクで突っ込んだんだろ?お前の場合素手で殴った方が強いだろ」
ボクは思わずクスッと笑う。
「乙女にそんなこというのはどうかとおもいますよ。あとリンちゃん何で笑ってるのかな?」
「いや、なんでもないです」
威圧感に負けて謝罪の言葉を述べる。
「リンちゃん私はユウリ大佐にお話があるから部屋の前で待っててくれるかな?」
「何もないと暇だろうからこれでも読んでみたらどうだ」
ユウリは1冊の本を取り出した。ボクは本を受け取り静かに部屋の外に出た。
「アルラウネが自主的に人間を攻撃し人間の言葉を話しただと?」
「はい。帝国の正前では門番が襲われていました。恐らく私達の進む方向から目的地を予測しての行動だと思います」
「俺も最近本来そこにいるはずの魔物を目撃したと聞いた。今までこんなことはなかった。奴らに何かしらの変化が起きているのか?」
「それともう1つ交戦してる時に何者かに見られてるような感じがしました。正門で戦ったアルラウネは誰かに送られてきたのかもしれないです」
「送り込まれた?一体誰が?なんのために」
「それは分かりません。今後もこのような事が起こるかもしれません」
2人が話をしている部屋の外で本を読んでわかったことがある。
1つ目はこの世界には高度な化学の他に魔法というものがあること。魔法とは大気中にある魔素や体内の魔力を使って発動する術。身体強化や物を動かすだけでなく、火や水などを操ることができる。
2つ目は自分がいた世界よりも文明が進んでいるところ。ボクの世界にもバイクや車という乗り物はあったがこの世界には空や海に対応した乗り物や山を簡単に破壊する兵器などがある。
本を読み終えると同時に2人が部屋から出てきた。
「リン、お前は俺が面倒みる」
「は?」
ユウリの突然の一言に思考がフリーズしてしまった。
「なんだ嫌か?」
「大佐まずは説明してください。リンちゃんあなたは今生活する場所や食べ物がないでしょ?だからユウリ大佐が面倒みてくれるの」
「マリーはダメなの?」
「あたしもそうしたかったんだけど毎日結構忙しくて何かあった時にすぐ対応することが難しいの。ごめんなさい」
「そういう訳だ。俺だったら何かあってもすぐにできるし融通もきかせられる。だから嫌かもしれないけど我慢してくれ」
「あの部屋は?」
「暫くは俺の部屋の後ろ半分を使ってくれ。その間にリンちゃん用の部屋を用意してもらう」
ボクはこくりと頷く。
「大佐リンちゃんのことよろしくお願いね。これにて私は失礼します」
マリーはアルラウネの死体を担ぎ歩いていった。
「それじゃあ短い間だと思うけどよろしく」
「よろしくお願いします」
こうしてボクとユウリ大佐の短い同居生活が始まった。