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「目覚まし時計がなる前に目が覚めた」で始まり、「全てを込めて「ありがとう」」で終わる物語

作者: たかのふ

診断メーカー『あなたに書いてほしい物語』より


「目覚まし時計がなる前に目が覚めた」で始まり、「全てを込めて「ありがとう」」で終わる物語

ふと、目が覚めた。

枕元のスマホを手に取る。表示された時間は、普段の起床時間よりも遥か前。

と、言うか。

「……あんまり寝た気がしない……」

呟きが薄暗い室内に溶ける。


昨夜は、いつまでも寝付けずにベッドの中で寝返りをうっていた。

常夜灯に浮かぶ天井。家具達の輪郭。階下から微かに漏れる話し声。

明日は忙しいんだから早く寝ておかないとと、焦る気持ちが余計に入眠を妨げた。

ラインでも確認しようかとスマホの電源に触れた指が、ふと止まる。

(まだ、飲み会は続いてるのかな)

久々に顔を揃える悪友たちと飲んでくるとの連絡に、羽目を外しすぎないようにとメッセージで釘を刺したのは随分前。

元からラインも通話も最低限。そっけない一言二言で済ませる奴だ。端から返信など期待などしていない、けどね……。

うーと唸りながらスマホの電源を入れたら。

アイツのアカウントに通知が1件。 開くと『今帰った 明日はヨロシク』とメッセージ。

(相変わらず素っ気ないヤツ)

心の中で文句を言いながらも、頬はにやにやと持ち上がる。

お気に入りキャラの『ヨロシク』スタンプを返し、ごろりと一つ寝返りをうって――


「そこから、なんとか寝たんだっけ?」

呟く頃にはすっかり目が覚めてしまった。

今から二度寝を決め込んだら、返って寝坊をしてしまうかも。

頭を振って眠気の残滓を吹き飛ばすと、肩まで伸びた髪が緩く頬を打った。

そのまま勢いを着けて体を起こし、ベッドから足を下ろす。カーテンを大きく開けると、辺りはすっかり明るかった。

振り返った室内は整然と片付いている。

クローゼットや机の中も、この1週間ほどで断捨離を済ませたから、黒歴史や若気の至りなどもう残ってはいない筈……多分。

階下では、もう誰かが起き出している気配がする。降りたらまずシャワーを浴びて、朝ごはんを食べたら色々準備をして……。

頭の中でこれからの手順を考えながら、部屋のドアを開ける。

くぐり抜ける直前、くるりと部屋に振り返り囁きかけた。

これから沢山繰り返す『ありがとう』の最初の一声を、私を育んでくれた部屋に向けて。

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