第7話 ラーメン教
グウ-
さっきからお腹が鳴っている。
もう限界っす…
今日はまだ何も食べておらず、血を流し右腕が再生する為に相当なカロリーを消費したのだろう。
ここまでお腹が減るのは、生まれて初めてかもしれない。
「セラ… ちょっと待ってくれないか… お腹減って倒れそうだ… そこのコンビニ寄ろうぜ…?」
「うん? こんびに? って何? 早く移動しないとゴブリン達に追い付かれるわよ?」
「そう! そのゴブリン! あれは何なんだよ!? もう俺は動けないからな…」
「あれは魔染獣の一種よ… 魔力に汚染された獣って事ね! 見境なく人を襲う敵よ! って、聞きなさいよ!」
セラの話しは長いから、俺はコンビニへとフラフラと向かって歩いて行き、セラは溜め息をつきながら追いかけてくる。
セラに初コンビニを体験させてやろうではないか。
そのコンビニは店員は居なく、恐らく急いで避難したのであろうか、自動ドアの電源も入ったままで、前に立つとスッと扉は開き、店内から有線ラジオの音楽が零れる。
「えっ!? まだ人が居たの?? 何でこんな時にのんびり歌なんで歌ってるのよ!? バカなの? この国のヒューマンは!?」
セラは俺の後ろから店内に入り、その明るさと音楽にまず驚き、それからそこかしこに綺麗に陳列されている見たこともない商品の数に圧倒されているようだ。
「あー、セラも何か食べる? 気絶してた時に守ってもらったお礼でもないけど… 奢ってやるよ?」
「えっ!? こ、これ全部食べ物なの?? 何、この袋! 透明よ!?」
騒がしいセラに構わず、俺はカゴいっぱいにカップラーメンやオニギリ、パン、お弁当、お菓子、思い付く食べたい物を入れていき、セルフレジで電子マネーを使って会計をし、イートインに向かう。
「トオル! お金も払わないで食べるつもり!? 見損なったわ!」
「えっ!? 今お金払ったぞ?? これで」
そう言い、スマホを見せる。
「それより、はい、これセラのカップラーメンとオニギリ あっ、カップラーメンはお湯入れたばっかだから、3分待っててな」
「はい!? な・ん・で、その四角い物見せただけで、お金払った事になるのよ! ドロボーは嘘つきの始まりなんだからね! って、このオニギリ? 食べれないじゃない!」
なんだかんだセラも食べようとしてるし(笑)
しかも、パッケージの上からオニギリ咥えてるし(笑)
電子マネーの事を言っても信じてもらえるだろうか?
恐らくセラは、地球より科学文明の遅れた所のエルフだと思う。
それにしても,煩いエルフだ。
顔は可愛いんだけどね…
仕方なくオニギリの袋を剥いてやる。
「はい、これで食べれるよ(笑) あっ、カップラーメンもそろそろいいかも」
戸惑うセラに見せるように、割り箸を割り、カップラーメンのフタを開ける。
そして、麺をフーフーしなかをら、とりあえず麺すすり、オニギリをかじり、お腹にかきこんだ。
俺が食べる姿をジーっと見つめてくるセラ。
「早く食べないと麺が伸びて不味くなるぞー」
セラは恐る恐る麺を口に運び、可愛くすすっていた。外国人のラーメンの食べ方みたいで微笑ましい。
「・・・」
何も言わず食べ続け、オニギリにもむしゃぶりつくセラは、段々と食べるスピードが上がっていく。
「な、何よ、これ~~!! 美味しすぎるわ… こんな食べ物がこの世にあるなんて…」
カップ麺のスープまで飲み終えたセラは、俺が食べているカップ麺を見つめてくる。
おい、涎… 垂れてるのは言わないでおいてやろうか…
ジェントルメンの俺は何も言わず、まだ買ってあるカップ麺にお湯を注いで、から揚げをレンチンして持ってきてあげた。
「カップ麵&オニギリもいいけど、カップ麵&から揚げの組み合わせも、ジャンクフードの基本だからな! 覚えておけよ!」
なんか分からんけど、セラは瞑目して何かに祈りを捧げているようだ…
3分が経ち、出来たと教えてやると、祈りを終えたセラは真剣な眼差しで、カップ麵&から揚げに挑む様に、慈しむ様に、食べ始めるのだった。
「ぷはぁー、素晴らしいわ! このラーメンは神々の祝福が身体に染み渡り、穢れを払ってくれる… なんて神々しい食べ物なのかしら… やっぱりこの国が予言に出てくる日出処の星なのね! 確信したわ!」
おい、おい、ラーメン食っただけで、確信するなよ…
「あー、そういえば、大昔にこの国は日出る国とかって誰か、偉い人が手紙かなにか書いてたとか授業で習った気がするけど… なんか関係あるのかな?」
「それよ! やっぱり、この国のことなんだわ! 日出る処の星まで発見できるなんて、特別報酬でるかも! ラーメン様のお陰ね!!」
「うん、そうだね… 特別報酬貰えるといいね…」
なにか、拙いカルチャーを教えてしまったのだろうか…
セラは食べ終わったカップ麵の容器を拝めているのだ…
ま、面白いからこのままでいいか(笑)
そんなバカな事をしていたら、コンビニの外から乾いた破裂音が連続して聞こえてきた。