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第5話 日出処の星


 日出処の星 日没する処に堕ち


 極星の彼方への帰還はならず


 滅びと甦生の御子が古の竜らと戯れる


 汚れた者は生者を毒牙にかけ


 亡者が地を埋め尽くす




 鋼と油の馬に乗り剣と飢饉と獣と死を纏う者


 一億の騎兵を引き連れて地上の四分の三を支配する


 その馬の口から出る火と煙と硫黄で人の三分の一を殺させた


 そして地上に太陽を落とす

 



 闇と混沌の底から這い上がる王がアポビスを名乗り


 暗黒の大蛇は太陽と月と神々を食らう


 天で戦が起こり星は落ち


 大地に大穴が穿たれ海は血になり山は溶ける




 新しい天と、新しい地の日出処の星


 滅びの御子は生とは逆の世で鎮魂の名を喚ぶ


 闇と混沌の王と共に世が終わるも 


 ヤマトの子らは命の書を使う


 やがて万年王国の扉は開かれん

 



「まー、こんな感じの予言をとある婆さまがしててね… 私は冒険者ギルドから竜王様の実地調査を依頼された訳なのよ! そしたらこの天変地異でしょ!? もう、追加報酬貰いたいくらいよ!」




 エルフの少女、セラフイム・フィンセント・ヴィレム・ファン・ネポムセーノ・マリア・デ・ロス・レメディオス・クリスピン・クリスピアーノ・デ・ラ・サンティシマ・トリニダード・ルイス・イ・ロドヴィーコ・ブオナローティ・シモーニ ことセラは、透に今までの経緯を語っていた。




「予言とか怖! だが、ちょっと待て! 冒険者ギルドって!? セラはどこの国の話しをしてるんだ?? ここは日本だぞ!?」


「へぇー、この国はニホンて言うんだ!? でも基本が分かっていないのよ! この国、じゃなくて、この世界、って言うべきね!」


「・・・」




 透はセラの言葉を受けて、頭を捻る。


 今まで起きた状況は、日本で生活していたら起こり得ないはず…

 この数年で魔法は、かなり発達してきたが、ドラゴンやエルフ等の幻想生物を生み出すまでに至っていたのか?




「なぁ… 此処って地球だよな…?」


「何よ、チキュウって? あっ! この国があった星の名前? それだと… 予言の星と名前が違う… どうゆう事かしら…」




 今度は、セラが考え込んでしまう。




「おいおい、俺の質問に答えてから考えようぜ!」


「うるさい! ガマガエル!」


「ドブガエルよりかはマシになったけど、また名前、ルしか合ってないからね?」




 そんな話しをしていた透は、ふと、夜空を見上げると、青い月と赤い月が2つも怪しく輝いていた。




「あっ… 本当に此処はどこだぁ~!?」




 透は瓦礫と化した我が家に寝転ぶと、セラが近づいて口を押え小声で囁く。




「もう… 騒ぐから、奴等が来ちゃったじゃない…」




 それは耳障りな声を上げながら、此方に近づいて来るのだ。

 瓦礫の陰からそっと見てみると、それは人間とは思えない醜い顔をしていて、涎をまき散らせながら何かを探している様は、まるで小説やアニメに出てくるゴブリンのように思えた。


 恐らくは、声を出していた自分達を見つけようとしているのでは?


 透は身体が硬くなり、つい後ずさり瓦礫を崩して音を出してしまう。




「グギャ?ギャギャ?」



 

 気持ち悪い鳴き声を漏らしながら、それらは透の方を一斉に向く、3匹はいるだろうか。

 

 その時、微かに風切り音がし、スパパパンと彼らの首が飛び血飛沫ぎ舞う。




「まだ声は上げないでね! ゴブリンは1匹いたら30匹はいると思わないとダメなんだからね…」




 セラの声が透の上から聞こえ、叫び声を上げたいのを必死に我慢をし、声のした方を見上げると宙に浮いたまま、弓矢をつがえているセラがいた。




「!? すげー!!」


「バカ! 声出すなって言ってるのに… 褒めたって何も出ないんだから… このトノサマガエル!」


「おぉー、トノサマガエルにランクアップしたよ!? トとル2つも合ってるし、微妙に嬉しいよ!」


「カエルで嬉しがるなんて… この国の男の感性疑うわ? ってそんな事言ってる場合じゃなくて、早く此処から移動するわよ!」




 今度こそ慎重に音を出さないように、透はセラの後をついて行く。

 道には人気が無く、ただ街灯の明かりが2人を照らす。


 透の家は東京の港区にあり、いつもはもっと人通りがあるはずなので、不思議な感覚だ。




「人っ子一人いない… 何が起きてるんだ? それにさっきのアイツらは何なんだ?」


「もう、質問が多いわね… アナタ達の国が、こっちに転移してきてから、魔染獣達の動きが活発化してるの! 竜王様が此処に居てくれたお陰で、ここら辺はまだ被害は少ないけど… 恐らくこの辺りにダンジョンが出来ちゃったのよ…」 


「転移?? 魔染獣?? ダンジョン??」


「ここら辺の住民達は昼間、トオルが気絶してる時に、何処かへ避難して行ったみたいだったかな… 言葉が分からなくて何処へ行くとかは分からなかったけど…」


「えっ!? 避難って… もしかしてセラは気絶した俺の傍で、奴等から守ってくれてたとか?」


「・・・」


「別に、ト、トオルの事が心配だった訳じゃないんだからね! 竜王様の実地調査に来た身として、竜王様の血を受け入れられたヒューマンの観察の為よ!! まったく… 竜王様に認められるヒューマンなんて聞いた事なんてないわ… もしかしてトオルが滅びと甦生の御子…? まさかね…」




 最後の方が聞き取れない程小さい声だったが、透は胸が熱くなる。




「へへへっ、やっと呼び名が、トオルにランクアップか… ありがとな! セラは良いエルフだな!」


「だから、実地調査の一環よ! トオルなんておまけなんだから、勘違いしないでよね! フン!」




 恥ずかしそうに、透から顔を背け、スタスタと先に進むセラであった。


(それにしても、竜王様の仰っていた言葉は何の意味だったのかしら?)


 セラは、此処から飛び立つ前に竜王が発した言葉に、引っかかりを覚える。






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