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第3話 外からの偶然な助け?

 驚きの声を張り上げると同時にエドナが見上げている先には、土の塊で出来た巨大な泥人形が出現していた。


「ひえええええ!! わ、わたしがあんなのを作っちゃったの~?」

 ロボットというよりはゴーレムって呼ぶ方が正しいのかなぁ。でもどうして空が見えなくなるくらいにまで大きくなっちゃったの?

 前世の憧れにロボットが欲しいなんて思いはあったかなぁ。


 騒ぐエドナに対し、ランバート村をすっぽりと覆い尽くした泥人形はまるで城塞になるのが目的だったかのように活動を停止している。


 対するレンケン司祭たちは、突如として出現した泥人形を脅威とみなし行動を起こそうとしていた。サラとシフル、ノオムは各々が持つ力を解放して、上級魔法を発動させている。


「ぬぅ……。エドナちゃんが生み出したゴーレムがこれほどとはな。オレの力を使っても土の壁に傷をつけられないとは驚きだ」

「何やってんだい、ノオム。土はあんたそのものだろう? それなのにだらしがないね! それともあたしが助けてやろうか?」

「私も風の力を使って土壁を吹き飛ばしますわ」

「……いいや、これはおそらく外からの干渉でなければ身動きが取れない物体だ」


 エドナの魔力が注がれた地面は、轟音を響かせその場にいた者たちが想像もしていなかったゴーレムへと変化した。ゴーレムは村全体を半球形の屋根で覆い、空さえも遮らせるような強固な要塞と化してしまった。


「ぬぅ、これはもしや主人を守るための形体じゃろうか?」


 村の人々を家の中へと避難させ、エドナの元に戻って来たレンケン司祭は巨大ゴーレムを見上げながら何度も首を横に振って消沈状態に陥っている。


 しかしそれよりも先にレンケン司祭は、エドナのことについて三人に決断をしてもらわなければならないことを確かめるしかなかった。


「みなの者! これはゴーレムじゃ! それもエドナの為に生まれた存在と見るべきじゃろう」

「そんなのは分かってるよ、じいさん! 力を解放していいのか?」

「まぁ、待てサラ。あの子の力には際限が無い。この問題はいつかはっきりさせねばと思っていたのじゃが、こうなってしまった以上もはや我らには手に負えないとみていいじゃろう。こうなれば外世界の者に委ねることにするが、良いか?」

「……だけどどんな問題が起きるか分からねえぞ? そうなる前にあたしの炎でゴーレムごと焼き尽くせば……」


 一方、ゴーレムが出現してから全く動きを見せないことに退屈を覚えたエドナは、ディーネ瀑布で水遊びを始めていた。


「あれっ? お水が冷たくなってる~。これって空が隠れちゃったのが関係してるのかなぁ?」

 それにしてもおじいちゃんたちに心配させちゃってるのにゴーレムは全然動かないし、勝手に村全体を覆っちゃって空も見えなくなっちゃった。そうかといってわたしにはどうすることも出来ないしこれからどうなるんだろ。


「待って、サラ! エドナちゃんに私たちのことを知られてもいいというの?」

「仕方ねえだろ! あの子だってあたしら……この村が普通じゃねえってことくらい分かってるさ!」

「……エドナちゃんが無自覚で生みだしたゴーレムには何をやっても効果が無い。オレは力の解放には反対だ。それに――」


 三人はレンケン司祭の反応を見ながら黙って頷き、


「そうじゃな……エドナには、ランバート村の外に出てもらうしかないじゃろう。このままではいずれ大きな問題が起こるうえ、魔法学園に入学することも叶わなくなるじゃろうな」


 ……と、言うしかなかった。


 ディーネ瀑布から流れ出でたエドナは赤子のうちは目立つ力も無かったが、成長するにつれ、村に及ぼしかねない問題を徐々に表していた。


 力を持つレンケン司祭たちも初めこそ抑えていたものの、九歳となり賢者の力の一端が生じ始めたエドナの力の前ではなすすべもなくなりつつあった。


「ですけれど、とてもいい子であっても自覚無しの問題児であるあの子を外にいる者に預けられるものなのかしら?」

「それなんじゃが、可能性があるとすれば魔物相手にひるまない高ランクの冒険者しか無いと思っておる。わしらはランバートから動けぬし動かぬが、外の人間であればあの子を正してくれる予感がしておるんじゃ」


 レンケン司祭はエドナが賢者の生まれ変わりと知った頃から、いつか訪れる別れの為に王都へ向けて書簡と荷を飛ばしていた。


「そうすると、あの子と別れるのが早まっただけって意味なんだな?」

「……そうなるわね」

「で、レンケンじいさん。それはいいとしても、ゴーレムはどうするんだよ? 中からの力ではどうすることも出来ないんだぜ?」


 サラとシフル、そしてノオムが沈んだ表情を見せる中、レンケン司祭はディーネ瀑布で遊ぶエドナを呼び戻す。


「エドナ!! すまんが水を汲んで来てくれんか?」

「は~い!」


 レンケン司祭に言われた通り、エドナは冷たくなった水を小さな桶に入れてレンケン司祭の元に運んできた。


「おじいちゃん、持って来た~! のどがかわいたの?」

「いいや、エドナよ。その水を手につけて土壁にかけてくれんか? かける場所はそうじゃな、村の入口の辺りにしてもらおうかの」


 四人が見守る中、エドナは村の入口がある辺りの土壁に向かって水で濡らした手で触りまくってみた。


 すると水で触れた土壁が腐りだし、外の景色が少しだけ見えだし始めている。


「えぇ? おじいちゃん、土壁が崩れてきてるよ~? いいの?」

「うむ、それなら入ってこられるはずじゃ!」

「なにが~?」


 エドナが訳も分からず村の入口付近を眺めて待っていると、突然土壁の向こう側からドーン。という音と威勢のいい声が辺りに響いてくる。


「でやぁぁぁぁぁぁぁぁ~!!」


 その直後、すでに崩れかけていた土壁に大きな穴が開き、そこから複数の人影がエドナの前に姿を現した。


「わわっ? え……? だぁれ?」

「う~ん、まさかの可愛い女の子のお出迎えだ! 私らを見つけてくれたのは君かな?」


 エドナに真っ先に声をかけてきたのは、大斧を右手に持ち頬から足にかけて何らかの紋様が描かれた女戦士だった。

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