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真面目に掃除してただけなのに問題ありまくりの賢者に生まれ変わっちゃった~えっと、わたしが最強でいいんでしょうか?~  作者: 遥風 かずら


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第22話 迷いの世界

 そういえば温泉に浸かればいいということを謎の女性に聞かされたエドナは、せっかくの温泉地ということで軽く温泉に浸かってから出発することを決める。


「……はふぅ。温泉にゆっくり浸かるなんていつ以来なんだろ。こっちの世界に来て、ディーネの滝から生まれて……何だか駆け足で来た気がするけど、まだ全然成長出来ていないし、ライラたちとも会えていないからまだまだなんだろうなぁ」


 ほどほどの熱さのある温泉に浸かっていたエドナは、誰もいない小さな温泉に浸かってゆっくりとした時間を過ごしていた。


 観光地と聞いていたにもかかわらず、レンケン司祭以外に人の姿は見えず温泉客といった姿も確認出来ずにいる。そんなエドナだったが、まともにぐっすりと眠ってこなかったこともあってか、温泉に浸かりながらスヤスヤとそのまま眠ってしまう。


「ゴポポ~……あ、熱い。あっ、やばい!! このまま寝ちゃったらまずいことになっちゃう!」


 湯の中に沈みかけていたその時。


 エドナのとっさの気づきで、温泉に沈むことは逃れた。しかし次々と睡魔が襲いかかっているのか、やはり気づけば湯の中に沈むことが増えたようで次第に沈んだままで眠ることになってしまっていた。


「――エドナさま、よくお眠りになってくださいね……このままあなたさまを――サラマンダー様の……」


 眠りの中、エドナに聞こえてきたのはリネアリスにいた謎の女性の声だった。その声からはとても懐かしく、優しく……どこかに導いてくれるような声がした。


 そしてエドナは湯の中を揺らぎながら、どこか遠くへと移ることになるのだった。


 ――その頃、ライラパーティーの行方は。


「はぁっ……。しんどかった~。ったく、巨人族がここに来ているなんてどういうことなのさ! ゴブリンがいるのは別にいいけど、巨人族なんて厄介としか言えないよ」


 レジェンダロア国境付近に襲来した巨人族とゴブリン軍団を何とか撃退したライラは、ようやくといった感じで地面に腰掛ける。


 ライラの他に抗戦状態にあった冒険者たちも、犠牲を出すことなく体じゅうに傷をつけながらも何とか生き延びていた。


「終わりましたわね、ライラ」

「やっとだよ……リズもサポート疲れでその辺で休んでいるよ。セリアは大丈夫か?」

「ええ。あの子のそばにいる時ほどの疲れは感じませんわね。あの子の近くにいたことで、知らないうちにわたくしの魔力量も上昇した気がしていますわ」


 セリアはいつの間にかエドナの影響を受けていた。そのおかげで今まで足りていなかった魔力量に加え、身体能力にもいい影響が及ぶようになっていたのである。


「そんなことがあるんだ? しっかし、エドナ……今頃はトレニア帝国にたどり着いているんだろうね」

「…………たどり着いていない気もしますわ」

「転送の……確かめてみないと分からないね」

「ええ。お姉さまの回復を待ってからわたくしたちも転送しないとですわね」


 エドナのことを気にかけ近くにいたセリアは、エドナの行方について妙な胸騒ぎを感じていた。そしてそれは間違いでは無かったことを知るのは、のちのことになる。


「うう~ん……冷たい…………はっ!? ええ? う、嘘……どうして?」


 リネアリスの温泉で湯の中に沈んでしまったエドナは、熱い湯の中から一転してどこか遠くの池で目を覚ます。


 当然ながら全く身に覚えのない所にたどり着いていて、しかも裸同然の格好で上から滴り落ちる冷水によってくしゃみを出すほどにまで。


「はーくしゅん!! うぅっ、温まっていたのにどうしてこんな冷たい池の中にいるの? リネアリスじゃないのは確かだよね……うぅぅ、どうすれば~?」


 元々完全な裸にならずに温泉に浸かっていたこともあって、少しは隠すことが出来るものの、やはり着替えの衣服が無いことに変わりがなく、エドナはどうすることも出来ずにいる。


 そこに――。


「やぁ、こんにちは!」

「ひっ!」

「あぁ、怖がらなくてもいいよ。僕はここのヌシなんだ。ここに入って来られているキミは妖精のたぐいかな?」

「え、えっと……あの、何か着るものはないですか~?」


 自分のことをヌシと名乗る男の子は、全身真っ白い姿をしている。そんな得体のしれない彼に服の用意が出来るのかどうか、エドナは素直に訊いてみると。


 ふぁさっとした風の音と共に、エドナのすぐ近くに真っ白な布の服が置かれた。リネアリスに置いてきてしまった白いローブに似た素材のようで、エドナは急いでそれを着る。


 白い布服を着たところで周りを見回すと、そこが氷の世界であると理解するのに時間はかからなかった。


 湖から来て火山帯、そこから氷の世界――。何でこんなに別の世界に移動しまくっているんだろうとエドナは頭を悩ませている。


 そんなエドナに対し、ヌシと名乗った少年はまるでついておいでと言わんばかりに、静かにゆっくりとどこかへ歩き出す。


 エドナは自然とその場所へと誘われるようにして少年の後を追うことに。


 しばらく氷の回廊を歩き続けていると、少年を守るようにして女性たちがエドナの周り取り囲む。そんな状況で、少年がゆっくりと口を開いた。


「……あの~わたしは――」

「分かっています。キミは精霊に選ばれた者。世界を進みながら、自分を示そうとしている賢者。迷いが生じれば別の世界へ迷い込んでしまう」


 そのことをもう知っているんだ?

 だからギンのところに行ったのかな。


「すでにキミは迷い込んでいる。次にそうならない為にも、僕がここへ呼んだ。キミの成長によって再び世界は変わるだろう……僕たちはそれを示し、導く役目。さぁ、この世界から再び混沌とした世界へお戻り。精霊に与えられた剣を取り、覚醒を――」


 白の少年がエドナに話しかけている。しかしエドナの意識と体はすでに別の世界へと導かれていた。

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