13話 蜂起⑧
マルグリットが路肩に止めてあった車を拝借。俺と大司教を乗せて移動して協会に着く。
「バンさん! それにマルグリット様も!」
俺達を出迎えたカルラがマルグリットの救出に成功したのを見て、歓喜の表情で出迎える。
「会長に連絡します! ……それは?」
縛られて地面に横たわって気絶している大司教を怪訝な目で見る。
「洗脳された冒険者ですか?」
「いえ、ギフト教の大司教です。捕虜にしました。身柄を預けても?」
「この女がっ!?」
カルラが親の敵を見る目で大司教を見る。
まあ無理もない。こいつらの所為で死傷者が大勢出ている。
「『無効』のギフトを持っていますので物理で拘束してください。まだ聞くこともあるので」
「……分かりました。こちらで対応します」
カルラは殺意を込めた目で大司教を睨みつけるが、今は感情より仕事を優先した。強い人だ。
大司教の身柄を他の職員に預けて、カルラは会長に連絡しに行く。
「無事だったか!?」
てっきり会長室に呼ばれるかと思ったが、マリナ本人が俺達に会いに来た。
「マルグリット嬢もご無事でっ!」
「マリナ。迷惑をかけた。すまない」
マリナは安堵しながらマルグリットの手を握り、マルグリットが謝る。
「バン少年、礼を言う。よくやってくれた!」
「いえ。これで形勢は逆転しました」
「どういうことだ? 確かに枢機卿の1人を倒し、マルグリット嬢の救出は成功したが数的不利は変わらない」
「ギフト教の大司教を捕らえて情報を吐かせました」
俺はギフト教の人数、配置、拠点の説明をする。
「なるほど」
「ゲリラ戦を仕掛けている冒険者を呼び戻して拠点を叩きましょう。勝算は十分あります」
「しかし、先程洗脳されている冒険者が領主の別邸に集結していると『飛脚』から情報が入った」
なんだって?
「もう情報が?」
「だろうな。おそらくギフトの能力だろう」
ギフト教め、また厄介なギフト持ちを信者にしているな。
「このまま立てこもるのか、それとも協会と決戦に来るのか……」
「後者だと勝算は低いな」
洗脳された冒険者はだいぶ拘束したがまだ100単位でいる。こっちは戦えるのは50人程。
しかもこっちは冒険者を殺す訳にはいかない。マルグリットの言うとおり勝算は低いな。
「何かいい手は無いか?」
「騎士団の到着まで篭城するのは?」
「それだと一般人も洗脳される可能性がある」
『フォルト』の住民全員が人質か。
「やっぱり、『洗脳』のギフト持ちの枢機卿を倒すしかない」
「……暗殺か。だが、拠点は領主の別邸。守りは強固だし、警備も厳重な筈だ」
マリナとマルグリットの会話の通り、暗殺が一番有効だが不可能に近い。
「……あ」
そうだ。忘れていた。
「なにか思いついたか?」
「ああ。丁度いい人物がいた」
問題は会えるかどうかだな。
◇
俺は無人の路地裏の商店街を歩く。
「確かここら辺の筈だが……あった」
俺は商店街の一角にある酒場を訪れた。
こんな状況なのに看板は開店の立て札。商魂逞しい。
カラン
扉を開けると客がいない店内にベルが鳴り響く。
――いや、1人だけいた。
「……んげっ」
「よう」
かつて俺を暗殺しようとした、道化姿のステラに会えた。
「……なに、私を捕まえようとしたの?」
逃げる為か、椅子から立ち上がり俺に質問をする。
「違う。依頼だ」
「……依頼?」
俺の予想外の言葉にステラはキョトンとした顔をする。
「そう。何でも屋だろ?」
「そうだけど……あんたはいいの?」
まあ暗殺しようとしたからな。仕返しを疑われてもしょうがない。
「別に終わった事だし、何もなかったし気にしていない」
「ふーん」
疑いが晴れたのか、ステラは再び椅子に座りジョッキに入った酒を煽る。
「それで依頼は?」
「領主の別邸への侵入」
「はあ? あんたには領主の令嬢と恋仲でしょ? 頼めばいいじゃない」
ステラは怪訝な顔をしながら俺に言う。
「今の状況は知っているだろ?」
「『明けの明星』の蜂起? それが?」
「裏にはギフト教がいる。で、別邸を拠点にしている」
「……マジ?」
「マジ」
「は~またか……」
「また?」
ギフト教と何か関わりが?
「ほら前に竜の襲来があったでしょ。あれ、ギフト教の仕業」
「マジか」
「それで黒幕の抹殺に向かったんだ。自殺していたけどね」
「それは依頼で? 誰から?」
「ウルバン領主様。私この業界で有名だから、お上からも依頼が来るのよ」
駄目元で聞いてみたら、あっさりと答えてくれた。
「それ、俺に教えてよかったのか?」
「だってマルグリット様と結婚するんでしょ? いつか分かるし問題なし」
「……なんで俺の暗殺を受けたんだ?」
マルグリットとの結婚は協会で喋っていたから、暗殺前から知っていた筈だ。
「だって金払いが良かったし」
「あ、そう……恨みはないけど、一発殴らせろ」
「ごめんごめん! 暴力反対!」
ステラが手を合わせて軽いノリで謝る。
「はあー…それで受けるのか?」
「勿論」
ステラは二つ返事で了承してくれた。
「あまり時間がない。今から行くぞ」
「今から? まあ、いいけど」
よほど自信があるのか、俺の無茶振りに答える。
「それで報酬は?」
「指名手配の解除」
これはマリナとマルグリットを説得して受け入れてもらった。
「それだけ?」
「十分だろ? 堂々と表を歩けるぞ」
「……はあ~。分かったわよ」
ステラはジョッキに入った残りの酒を一気飲みして席を立つ。
「じゃあ、行きますか」
次回「蜂起⑨」




