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ダンジョン&ガンマン  作者: コウ
8章 ギフト教と蜂起
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10話 蜂起⑤

 俺は目を開いて絶命したセツの瞼を閉じる。


 セツの境遇に思わないでは無かったが、やっている事は間違っている。


 だが、もし次があるのなら安穏の日々を願わずにはいられなかった。


「優しいね」


 ミリアが、俺を抱きしめて言う。


「殺した俺が優しい訳ないじゃないか」

「そんな事ない」


 俺の言葉をミリアは否定する。


「バン。とても辛そう」

「……」

「敵は殺すのは当たり前。それが悪獣だろうがモンスターだろうが――人だろうが」

「当たり前、か」


 俺だってそうだ。生きる為に殺してきた。


 だけど何処かで、それに納得していないんだろう。


 しかし俺の中の何かがそれを抑制しようとする。完全には消せないでいるが。


 記憶が戻ったら、この感覚の正体もわかるのだろうか。


「あー……イチャついている所悪いが」


 バツが悪そうにマリナが俺とミリアの間に入り、


「これからについて話したい」


 今後について会議を提案した。




「バン少年のお陰で枢機卿が倒され、洗脳された冒険者達の拘束が一気に進んだ」


 協会のホールに冒険者達を集めて、マリナが話し出す。


「と言っても、此方が不利なのは変わらない。それに洗脳している者も健在だ。今は冒険者だけだが一般人も洗脳するかもしれない。あとウルバン領主の娘も攫われた。状況は最悪から少し良くなった程度に過ぎない」


 枢機卿が倒されて希望が見えてきたところに、現実を突きつけられる冒険者達。


「だが諦める訳にもいかない」


 マリナは強い目で冒険者達を見る。


「『白薔薇』を中心に戦える冒険者は打って出る。『飛脚』は情報網の作成。散開している冒険者達を奇襲し各個撃破、拘束していく」


 これは俺が考えた案。数的不利を覆す策。


「ゲリラ戦を始めるぞ」




「ゲリラ戦?」

「そう。これしかないです」


 俺は作戦内容を説明して、考え込むマリナを見る。


 ゲリラ戦。


 遊撃戦とも呼ばれる。 奇襲によって敵に損害を与え,補給路を脅かし,敵が集まる前に姿を消して打撃を免れる戦法。


 ゲリラはレジスタンスや反政府の非正規軍の総称だし、向こうが反社だが分かりやすい様にゲリラ戦にしておいた。


「命令されない限りは、洗脳は簡単な命令しかされてない。つまり単純なんです」


 俺が街中で戦った冒険者は全てそうだった。


 命令は多分、見つけたら襲え。だ。


「頭からっぽの集団に地の利で戦う。数的不利を覆すには十分です」

「……そうだな。洗脳されるか殺されるかの二択しかないなら、反撃に出るか」


 マリナは決断し、ゲリラ戦が決行された。


 


「バン少年、核石だ。あるだけ持って来た」


 マリナに頼んで核石を融通して貰い、机に山の様に積まれた核石を見る。


「バン少年が一番負担が大きいが、これしか援助できずにすまない」

「十分です。ありがとうございます」


 俺は核石を全部籠手に吸収させながら礼を言う。


「……因みに、お幾らで?」

「請求はギフト教にするから気にするな……再度確認だ。バン少年はブレイドガルと合流後、マルグリット嬢を救出」

「その後ギフト教の信者を撃破していきます」

「……頼んだ」


 俺は会長室を出て協会のホールに行く。


 ホールは冒険者達がごった返している。


 祈る者、装備を点検する者、作戦を確認する者等、作戦前に各々準備をしている。


「バン」


 ホールを抜け、出口の前にミリアが待っていた。


「気をつけて」

「そっちも」


 ――チュっ


 ミリアが俺にキスをすると、俺達を見ていた冒険者達が野次を飛ばす。


「ヒュー!」

「お熱いことで!」

「結婚式は呼んで下さい!」


 冒険者達は好き勝手言う。作戦前の光景とは思えないが、これが冒険者と言うものだろう。


 野次とミリアの叱責を背にして外に出て、俺はバイクに跨る。


 先ずはカナとグレイと合流だ。


 ◇


 バイクを飛ばし、街中を駆ける。


 途中で洗脳された冒険者と何度か出くわすが、リボルバーで行動不能にしていく。


 ライフルを破壊されたのは痛いな。運転しながらだとリロードに時間が掛かる。


 だが、無いものねだりしてもしょうがない。現状でどうにかするしか無いか。


 そうしてやっと城門を潜り街の外に出て、カナと別れた森に入る。


「カナー! グレイー! 何処だー!?」

「バン!」

「ワン!」


 俺の呼ぶ声にカナとグレイが気付いて俺に駆け寄り抱きつく。グレイも俺の足に頭を擦る。


「何があったの? お姉ちゃん達は無事?」

「それについてだが、落ち着いて聞いて欲しい……ギフト教が襲って来た」


 俺の言葉に、カナは目を見開き、顔を真っ青にする。


「はあ、はあ、はあ……」


 余程ショックなのだろう。息が荒い。


「カナ。呼吸をゆっくり。落ち着いて」

「……すぅ、はぁ」

「よし、いい子だ」


 俺はカナの頭を撫でて褒める。


「……バン。私の事、聞いた?」

「……ああ」


 カナに嘘は通じない。俺は正直に答える。


「……ごめんなさい。ひぐ……私のせいで…ぐす」

「カナは悪く無い。あいつらの目的は別だ」


 俺は泣きながら謝るカナを抱きしめる。


「俺の目の前にいるのは『聖女』じゃない。カナと言う1人の女の子だ」

「バン……」

「酷い目にあったのも知っている。大丈夫。俺が必ず守る」

「うん」

「クゥーン」


 グレイもカナを慰める様にカナに頬擦りする。


「バン、グレイ、ありがとう」

「どうって事ないさ」

「ワン!」


 泣くのをやめ、笑顔を見せてくれたカナに、俺は微笑み返した。


「グレイ、頼みがある」

「ワン?」


 首を傾げグレイに俺は真剣に言う。


「マルグリットが攫われた。グレイの鼻が頼りだ。探せるか?」

「マルグリットお姉ちゃんが!?」

「ワゥ!?」


 まぁ、あのマルグリットが攫われたって聞いたら驚くわな。


「グレイ、頼めるか?」

「ワン!」


 流石。頼りになる。


「よし、行こう」


 俺達は森を抜け、バイクに跨り『フォルト』を目指した。

次回「蜂起⑥」

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