7話 蜂起②
「マルグリット様、申し訳ありません。この様な場所で不自由な思いをさせて」
薄暗い地下室の中、心にも思ってない事を言いながら頭を下げる黒いシスター服の女を殺したいが、手足を縛られて何もできないマルグリットはせめてもの抵抗で女を睨みつける。
「『転移』で逃げようと無駄です。私は『無効』のギフトを持っています。逃げられませんよ」
『無効』。文字通り能力を無効化するギフトだ。
「そうか……それでギフト教が私に何の様だ?」
マルグリットは今回の黒幕がギフト教である事を見抜いていた。
それに軽く驚きながらも、女は顔に出さずマルグリットの質問に答える。
「察しのいい貴女なら分かっている筈です」
「人質か」
「ご名答。貴女を人質にレント・ウルバンを『フォルト』に呼び、ダンジョンの所有権を貰います」
「はっ! 上手くいくとは思わないが」
マルグリットは鼻で笑うが、女は気にもせず話を続ける。
「『フォルト』の冒険者の殆どが我々の手に落ちました。劣等人も我々の敵ではない」
「……」
マルグリットは領民を劣等人と言う女に不快感を示す。
「それにレント・ウルバンを御する事など容易い事です」
「ならば、何故私を人質にする?」
「餌ですよ。貴女なんて」
もうこれ以上話す事はないと女はマルグリットから離れる。
「……一つ言っておこう。お前達は負ける」
「強気を。こちらは3人の枢機卿が参戦しておられる。勝ち目なんてありませんよ」
「いや。私達にも切り札はある」
「ほう?」
女は興味深そうに目を細める。
「私の旦那を舐めない事だ」
「……『聖人』ですか」
「『聖人』?」
「それなら問題ありません」
マルグリットの疑問に答えず、女は話す。
「『聖人』の確保も、我々の目的の一つなので」
「……何を企んでいる」
「貴女に話す事などありませんよ」
女は目を瞑り、ギフトの行使に集中する。
「最後にいいか?」
「まだ何か?」
女は少し苛立ちながらも目を開き聞く。
「貴様の名前を聞いてない」
「名乗るほどの者でもないですよ。そうですね……大司教とでも呼んで下さい」
「あーつまんないつまんない!」
自分で改造して露出度が上がった白いシスター服を着た、長髪ピンク色のツインテールの少女が足を椅子の上でジタバタさせながら叫ぶ。
「騒がしいぞビビ」
同じ白いシスター服だが、こちらは厳格を見に纏った様な短髪の茶髪の女性が嗜める。
「それでも栄えある枢機卿の1人か」
「マナ。だってやる事ないし、つまんないんだもん」
「其方の仕事は終わったとはいえ、気を抜き過ぎだ」
枢機卿の1人、ビビが同じ枢機卿のマナに反論するが一蹴される。
「ねぇ、劣等人で遊んでいい?」
「駄目だ。其方はすぐに壊す。資源も無限じゃないのだ」
2人はギフトを持たない人間を人とも思わず、まるで物の様に扱う。
「ちぇ」
「だいたい其方は――」
「ビビ、マナ、今戻りました」
そうこう言い争っている内に、同じシスター服をきた黒髪を綺麗に揃えた女性が部屋に入って来る。
「あ、セツお帰りー」
「ご苦労であったな」
「いえ、大した事はありません。……枢機卿が揃った事ですし、会議を始めましょう」
最後の枢機卿、セツを司会に会議が初まる。
「ビビ、『洗脳』はどうですか?」
「衛兵と冒険者はほぼ洗脳完了〜。あと『白薔薇』と『飛脚』が協会に立て籠もっているからそこだけね」
「マナの方は?」
「マルグリットは確保したが、生憎『聖人』と『アルカナ』はいなかった。『変身』のギフトはもう『魂の解放者』には使えぬな。まあ、行動不能にしておいたが」
「『聖人』と言っても唯の種馬でしょ?そこまで捕まえる意味ある?」
「我々の最終目標は天使となり劣等人を導く事です。天使の数が多いに越した事はありません」
「そっかー。まぁ、劣等人と子作りするよりマシか」
ビビはセツの説明を聞いて納得した。
「今の所は順調ですね。後はレント・ウルバンが来次第『洗脳』。無理なら暗殺後、マナの『変身』で成り代わって貰います」
「了解〜」
「承知」
「私は『聖人』と『アルカナ』の確保に向かいます。信者達も捜索に向かわせます」
そして会議が終わりセツが祈りを捧げる。
ビビとマナもセツ続き祈りのポーズをとる。
「「「全ては天使に至る為に」」」
試練場を踏破し、天使に至る。それこそがギフト教の存在理由だ。
◇
俺はティアの店に向かってバイクを走らせる。
正直目立つが、こっちの方が速い。
何回か正面に立ち塞がった冒険者には悪いが、ライフルで撃ち行動不能にした。
そしてティアの店に着き扉を開けようとするが、鍵が掛かって開かない。
「ティア! 俺だ! バンだ!」
俺は扉を叩きながら叫ぶと、中から物音が聞こえ、扉の窓からティアが覗き見る。
「バン! お主は正気か!?」
「ああ」
「すまぬが証拠を見せてくりゃ」
またこのパターンか。
まあ、冒険者が操られているならしょうがない。
……そうだなぁ。
「ティアはベッドでは案外受け身が多くて、恥ずかしがり屋で、後は――」
「分かった分かった! お主は正気じゃ!」
ティアは恥ずかしそうに扉を開けて俺を中に入れる。
「無事で良かった」
「こっちの台詞じゃ」
ティアは俺に抱きつく。男の癖にいい匂いがするな。
「それでこんな事態にどうしたんじゃ?」
「無事の確認と、後は核石をあるだけくれないか?」
「……戦う気かぇ」
「ああ。マルグリットも攫われたし、ダンジョンが使えなくなるのは困る。まずは協会に行くつもりだ」
「分かった。待っとれ」
そう言ってティアはあるだけの核石を持ってくる。
俺は核石を全て籠手に吸収。籠手が青く光るが粒子は出さない。エネルギーの無駄使いだからな。
「ありがとう」
「気をつけるんじゃぞ」
――チュっ
俺にキスしてティアが俺を送り出す。
俺はバイクに乗って協会を目指した。
次回「蜂起③」




