6話 蜂起①
ダンジョン探索から数日。
核石とダンジョンウエポンを協会で換金して暫く生活に困らない金額になったので、休養も兼ねてそれぞれ好きに過ごしている。
そんな中、夜を婚約者達とイチャイチャして過ごした俺は、埋め合わせでカナのワーカーの採取依頼に護衛として付いていた。
「ふんふふーん」
採取依頼なのにピクニック気分のカナは俺と手を握り森を歩く。
幾度となく通った森だ。その足取りに迷いは無い。
「クンクン」
それにグレイも先頭で警戒しているしな。
「バン、こっち」
カナが『千里眼』で薬草を見つけた様だ。カナの後に付いて行く。
こうして薬草を採取して、ノアが作ってくれた弁当を食べてゆっくりして『フォルト』に帰る時、ソレに気付いた。
「……何だ?」
『フォルト』から煙が出ている。
蒸気機関が発達したこの世界では煙はさほど珍しくないが、大きな黒煙は初めて見た。
ーー嫌な予感がする。
「カナ。ここで待ってて。グレイ、カナを守ってくれ」
「……うん」
「ワン」
カナも察したのだろう。疑問も持たず俺の言う事を聞く。
そして俺は『フォルト』の城門に近づいた。
◇
門番のいない城門を潜り街に入る。
街はあちこち燃えて、死体や怪我人が地面に横たわっている。
しかし身なりからして冒険者ばかりで一般人に被害はなさそうだ。
「一体何が……」
街中を走りながら拠点を目指す。
すると正面に数人の男性。身なりから冒険者だ。
「おい! 何があった!?」
俺は冒険者に近づき質問するが、冒険者は剣を抜き俺に切り掛かる。
「何をする!?」
咄嗟に避けてライフルを構えるが、冒険者達の様子がおかしい。
虚な表情で目は焦点が合ってない。
バン!
俺は襲ってくる冒険者の足元を撃つが、恐怖を感じてないのか、勢いを落とさずに走ってくる。
「ちっ!」
バンバン! バンバン! バンバン!
俺は冒険者達の両足を撃ち抜き、冒険者を行動不能にする。
それでも手足をジタバタさせて動こうとする冒険者達。
「何なんだ……」
冒険者達から意思を感じられない。まるで人形だ。
しかし観察している余裕はない。
戦闘の騒ぎを聞きつけたのか、あちこちから足音がこちらに向かって来ているのが聞こえる。
俺はその場を後にして拠点に急いだ。
「誰かいるか!?」
拠点に着いた俺は扉を蹴破る様に入り呼びかける。
「バン!?」
部屋の一角をテーブルや棚でバリケードを作っていた奥で、レンの声が聞こえた。
「動くな!」
するとロゼとアウルムが俺に武器を構えて厳しい顔をする。
「どうした?」
「お前は本当にバンか?」
ロゼが変な事を聞く。
「当たり前だ! 何言ってるんだ!?」
「なら証拠を見せろ!」
ロゼ達は武器を構えながら俺に言う。
「証拠って……」
「本当にバンなら出せる筈だ。頼む、証明してくれ……」
武器を構えているロゼが辛そうにする。
「……」
俺はホルスターからリボルバーを抜き、ロゼ達の方に床をスライドさせる。そしてリボルバーは床から消え、手元に戻った。
「これでいいか?」
リボルバーの特性はロゼ達も知っている。証明になる筈だ。
「……本人だ。皆、大丈夫」
信用してもらえた様だ。バリケードからレンとノアと4つ子、エレ、リンが出てくる。
皆無事みたいだが、所々服が破けて血の跡がある。
「ごめんなさい。この状況だから信用出来なかったの」
レンが俺に謝り頭を下げる。
「気にしてない。何があったんだ?」
「説明するわ」
レンの話をまとめると、俺が出ている間に『明けの明星』がダンジョンの独占の声明を発表。蜂起を開始。それに呼応する様に各冒険者と衛兵も蜂起に参加した。
しかし蜂起に参加した者達は様子がおかしく、まるで操られているみたいだったそうだ。
それでも脅威に違いない。協会は戦力を集め、まだまともな冒険者に連絡。協会に集まる様に指示し、一般人は外に出ない様にさせた。
「それで私達も協会に向かおうとしたのだけど、バンが帰って来たの」
「俺が?」
カナと森に行ったのに?
「今なら偽物だって分かるわ。おそらくギフトでしょうね。……話を戻すわ。それで隙を突かれて全員戦闘不能。マルグリットは連れ去られて、私達も瀕死。辛うじて回復薬とミイの『治癒』で治療して、バリケードを作って篭城していた訳」
「そんな事が……」
森に行ってる間にとんでもない事になったぞ。
「カナちゃんとグレイは?」
「街から黒煙が出てたから嫌な予感がしてな。街の外で待ってもらっている」
「そう……なら安心ね」
一通り情報交換を終えて考える。
ダンジョンの所有権を主張して蜂起した『明けの明星』。おそらく操られている冒険者。俺に化けた者。マルグリットの誘拐。
この状態で一番得するのは誰だ?
「……多分『明けの明星』も利用されているな」
「どうして?」
「あそこは男所帯だ。ギフトを使えるのはいない筈だ」
「じゃあ誰が?」
「最近『明けの明星』がギフト教と繋がっているって話を聞いた事がある」
十中八九、背後にはギフト教がいるだろう。
「前々からダンジョンを欲しがってたから、強硬手段に出たって事?」
「多分…兎に角、俺はティアの所に行って協会に行ってくる。皆はそのまま篭城してくれ」
「何でティアの所に?」
「この先戦闘になるから核石を確保しておきたい」
「分かった。私達も――」
「全員疲弊している。無理しない方がいい」
怪我は治っても、疲弊は抜けない筈だ。そのまま戦うのは危険だ。
「……気をつけて」
レンは悔しそうに唇を噛み、俺を送り出す。
「行ってくる」
俺は拠点を後にしてティアの元に向かった。
次回「蜂起②」




