5話 先輩
「お帰り」
「無事じゃったか?」
ダンジョンを出たのはもう夕方。協会での換金は明日して、今日はもう休もうと拠点に戻ったらエルフの幼馴染コンビがティータイムをしながら出迎えてくれた。
「ティアは兎も角、ミリアも?」
「お邪魔している」
「それはいいけど、カナ達は?」
いつもは真っ先に出迎えてくれるカナと、メイドのノアとリンの姿が見えない。
「3人とも買い出しに行ってる」
「ワシらは留守番じゃ」
「入れ違いか」
「所で、7層には行けた?」
「いや~それが……」
俺は6層で起こった事を2人に話す。
「7層の入り口で特殊モンスターのぅ」
「……よく遭遇するわね」
全くだ。
「ここまでくると、もうモンスターに敵視されてるんじゃないかって思うわ」
「どっちかと言うと呪いだろ」
「私達、よく生きてますね……」
特殊モンスターと何度か戦闘経験のあるレン、ロゼ、アウルムは遠い目をして、
「「「「死ぬかと思いました」」」」
「生きた心地しなかったっす」
「いい経験だった!」
発遭遇のメンバーもそれぞれ感想を言う。
「そ、そうかぃ……ところで、核石はどうしたんじゃ?」
「ダンジョンウエポンは何処?」
2人のエルフは俺達の話を早々に打ち切り、興味を引かれた物に話題を変える。
「ちょ、ちょっと待って!」
2人ともレンの『収納』にある事が分かっているのだろう。レンに詰め寄り、圧負けしたレンは慌てて背嚢から取り出す。
「ほぅ…これが特殊モンスターの核石のぅ」
「新しいダンジョンウエポン…」
ティアとミリアはそれぞれ核石とダンジョンウエポンを見て、興味深そうに眺めたりうっとりとした表情で手に持ったりする。
「核石はどうするんじゃ!?」
「このダンジョンウエポンはどんな能力が?」
「落ち着け…核石は協会に売るし、ダンジョンウエポンの能力はカナに見てもらってから売るつもりだけど」
ティアとミリアを宥めて戦利品をどうするか言うと、
「核石を売るのは待ってもらえんか!? 研究したい!」
「ダンジョンウエポンももう少しだけ!」
「えー」
2人の趣味への執着心は俺の想像以上だった。
「ただいま……何しているの?」
そこにタイミング悪くカナ達が帰ってきて、ミリアの視線がカナに向く。
「ミリア! 落ち着け!」
「カナ!」
俺の静止空しく、ミリアはカナの元に駆け寄り肩を掴む。
「ひっ」
突如肩を掴まれて軽く悲鳴を上げるカナ。
「貴女、『鑑定』に似たギフトを持ってるのね?」
あ、しまった! カナのギフトについて秘密にしていたんだった!
「え? うん」
「この武器を見てくれないかしら?」
ミリアは床に置かれたランスを指差してカナに頼む。
「え? え? え?」
「ミリア……カナが戸惑っているから」
俺はカナからミリアを離して落ち着かせる。
「……そうね。ごめんなさい」
ミリアもやっと落ち着いたのか、レンに謝る。
「カナ、見てくれないか?」
「うん。別にいいけど……」
カナは『千里眼』でランスを見る。
「やれやれ……相変わらずじゃのぅ」
「む」
ティアがミリアをからかうが、俺としてはどっちもどっちだ。
「わかった」
そうこうしている内にカナが能力を見終えて俺に近づく。
「ありがとう」
「えへへ」
俺がカナの頭を撫でると、カナは嬉しそうに笑った。愛いやつ。
「それで、どんな能力?」
「不壊。頑丈で折れない」
ただ頑丈なだけか。それでも武器として破格だが。
「……そう」
おや? もっとテンションが上がるかと思っていたが、ミリアの興味が失せたぞ。
「やけに落ち込んでるじゃないか」
「頑丈なだけの武器ならもう持ってる」
そう言って目線を腰に提げた細剣に向ける。
「……その武器か?」
「そう、突撃槍と同じ能力」
「へー。そんな能力を持っていたのか……他の武器は使わないのか?」
武器の収集が趣味だと言っていたが。
「私は色々な能力を持っているダンジョンウエポンを眺めるのが好きなだけ。実用性がなくても」
「さいで」
なにやらミリアなりのこだわりがあるらしいな。
「この細剣は私が使える数少ない武器。私、か弱いから」
「……え?」
ミリアの予想外の言葉に俺の目が点になる。
「か弱い乙女の私に何、その反応?」
「いえ何でも無いです」
何か言っても藪蛇になりそうなので黙っておく。
「そう言えばカナのギフトはどんなの?」
「それは……」
俺はカナのギフトを喋っていいか悩む。
「バン。いいよ」
そう言って俺の横にいるカナが俺の目を見る
「……いいのか?」
「ん」
「分かった」
俺はミリアにカナのギフトの説明をする。
「何その強すぎるギフト……」
「やっぱり?」
ミリアはカナのギフトの強さに驚いていた。
「そういえばミリアもギフト持ってるんだろ?」
細剣から氷を出していた時、ダンジョンウエポンかと思ったが、能力を聞いて違ったからな。氷系のギフトなのだろう。
「そう。私のギフトは『氷化』」
「『氷化』? 『氷術』と違うのか?」
「『氷術』は氷を出して操る。『氷化』は対象を凍らせる。言ってなかったっけ?」
「初耳だな」
「そう……ちなみにメルナのギフトは『加速』。ベアトリクスは知ってるわよね」
いいのか? 勝手にメンバーのギフトを喋って。
「同盟同士だし問題ない。メルナにも許可は貰っている」
顔に出てたのだろう。ミリアは問題ないと言った。
まあ、ミリアがそう言うなら、いいか。
「話は終わったかのぅ?」
核石を観察していたティアが俺達に近づく。珍しい核石が見られてその顔は満足そうだ。
「もういいのか?」
「うむ。核石を色々調べたいのじゃが売り物じゃからな。買う金もないし」
ティアは残念そうに口を尖らせる。
「……そう言えば1つ聞きたい事があった」
俺は思い出してミリアの方を見る。
「何?」
「7層に行く道、わざと教えなかった?」
「バレた」
ミリアは悪戯が成功した様に舌を出した。
「何でまた?」
「情報収集や攻略のヒントを探すのも冒険者に必要な能力。同盟だからって頼られても成長しない」
全くの正論なのでぐうの音も出ない。
「先輩からのおせっかい」
「そうだな。良い勉強になったよ」
「ならよかった」
そう言って小さな先輩は俺に微笑んだ。
次回「蜂起①」




