3話 塔
その日、俺達『魂の解放者』はダンジョンを探索していた。
今回は6層の攻略を行うつもりだ。
4層までの転移陣から6層の転移陣に至るまでは大してモンスターとの戦いもなく、俺達は6層に着いた。
相変わらず浮島の中央は巨大な竜巻があり、無数のワイバーンが竜巻の風に乗って旋回している。
「ここからね……皆、準備はいい?」
レンの言葉に俺達はそれぞれ返事をして6層の攻略を始める。
「ミリアからの情報だと7層への道は廃墟の塔にあるらしいな」
「そうなのか?」
「ああ。なんでも『飛脚』が見つけたらしい」
俺は歩きながらマルグリットの疑問に答える。
ギルドで同盟を組んでいる『白薔薇』のギルドマスターのミリアは俺の婚約者だ。嘘を言う理由もない。
「ワン!」
「来た様だ」
前方で索敵を行っていたグレイがモンスターを見つけたようだ。廃墟の陰に隠れて各々武器を持ち構える。
そしてグレイの報告通り、竜人のモンスターが2体、廃墟から姿を現す。
モンスターまだ此方に気付いていないようだ。
「俺が先制する。後から続いてくれ」
「分かった」
前の攻略でライフルは大したダメージを与えられなかったので、最初からリボルバーを構え飛び出し『貫通』を使い撃つ。
ドォン!! ドォン!!
「ち」
出来れば仕留めたかったが、無理だった。6層のモンスターは相変わらずタフだ。
それでも2体の頭を吹き飛ばしたからよしとしよう。
「はあ!」
「ふっ!」
俺の後続からロゼが飛び出して十字槍を一閃。マルグリットは『転移』でモンスターの後ろに移動して大剣を突き刺してそれぞれモンスターにトドメをさす。
モンスターは黒い霧になって、核石を残して消えた。
「場数も踏んだし、これなら苦労しそうにないな」
「気持ちは分かるけど油断しないの」
マルグリットの言葉にレンが注意をしながら核石を拾い、『収納』が付与された背嚢に入れていく。
「……気になっていたんだが、レンは何で冒険者になったんだ?」
レンを見ながらマルグリットは唐突に聞いてきた。
「何でって……孤児院に仕送りしなきゃいけないからね」
「それなら冒険者じゃなくて商人のほうが安全だろ?」
「……まあ、言いたい事は分かるわよ」
マルグリットの言葉にレンは背嚢を背負いながら答える。
確かにレンの『収納』ギフトは戦いに向いてない。むしろその積載量を生かして行商なんかに向いてるかもしれないな。
「でも悪獣や盗賊も出るし、他の商人のコネや護衛を雇う金もない。あと冒険者の方が稼げるし」
それにロゼは冒険者になりたがっていたしね。っと締めくくり立ち上がる。
「なるほど。その視点はなかったな。……すまない」
レンの言葉に納得したマルグリットはレンに頭を下げる。
「な、なによいきなり?」
「私の言葉に害しただろう? レンには助けられているのは分かって欲しい」
「気にしてないから! 頭を上げて!」
レンは慌ててマルグリットに頭を上げるように懇願する。
「そうか! いやー良かった!」
マルグリットもこれ以上は迷惑を掛けると思ったのだろう。明るい声で快活に笑った。
「まっとくもう……なによ?」
レンは俺達の温かい視線を感じてジト目で睨みつける。
「いや別に~」
俺達を代表して幼馴染のロゼがニヤニヤしながら答える。
「ほら行くわよ! 全員グズグズしない!」
「あ、待て!」
怒ったのか照れたのか、レンが先行してズンズン進む。
俺達は慌ててレンの後を追った。
◇
俺達の探索は順調に進み、たまに出るモンスターを倒して遂に浮島の端、7層に続く塔に着いたが……。
「……ここか?」
「そのはずだが……」
ロゼの言葉に俺は答えるが、気持ちは分からなくない。
なぜなら、塔には階段所か入り口がなかったからだ。
石積みで建てられた塔は細長い三角錐をして高さは20m程か。形状も特に変な所はなく、用途が不明な点以外は正直言ってありきたりな建物だ。
「違う塔とか?」
「見渡す限り塔はこれしかないな」
俺の言葉にロゼは即座に否定する。
「転移系の移動方法とか?」
「触ってみたけど何も起きなかったな」
マルグリットが塔の壁をペタペタ触るが、言った通り何も起きない。
「周辺を見回ってみましょう。エレは上空から何かあるか探してみて。ここならワイバーンからも見つからないでしょ」
塔の周辺は何もないが、ワイバーンが旋回する竜巻から一番遠いので見つかる事もないだろう。
「了解っす」
エレは『浮遊』で塔の上の周辺を見回り、俺達は下から塔を探索する。
うーん……特に何かある様にも見えないが。
「何か見つけたから来て!」
すると4つ子で固まって見回っていたマイが何かを見つけたらしい。俺達に走って来た。
俺達は塔の裏側に回るとアイ、ミイ、メイが固まって塔の一点を見つめる。
「これなんだろ?」
「飾りじゃない?」
「こんな見つかりにくいところに?」
「何見つけたんだ?」
「「「あ、バン」」」
俺に気付くと姉妹が近づき、見つけた場所に案内する。
「なんだこれ?」
塔の壁に一箇所、10cm程の大きさの青い宝石が埋め込まれていて光に反射してキラキラ光っている。
「普通の宝石に見えるけど」
「塔に付いているし」
「でも触っても何もないのよ」
「なるほど」
姉妹の言うとおり触っても何もないけど、明らかに不自然だ。
「島の端の塔の、更に裏に宝石……何かあるわよね」
レンの言うとおり、何かあるはずだが分からん。
「上を見てきたっすけど、何もなかったすよー!」
「分かった!」
エレが地上に降りて報告する。となるとこの宝石が唯一の手がかりか。
ギルドメンバー全員が宝石を見て考え込む。
「攻撃してみるか?」
「割れるかも知れないでしょ」
ロゼの提案にレンが却下。
「外してみますか?」
「取れるんっすか?」
アウルムの提案にエレは疑問で返す。
一応外れるか試してみたがビクともしなかった。
「バン、ミリアから何か聞いてないか?」
「いや……塔に7層の道があるとしか」
マルグリットの質問に俺は首を振って答える。
俺は単純に塔に7層の道があると思っていたが、こんな事になるとは。
「案外ミリアの宿題かもな」
「どういうこと?」
マルグリットが溢した言葉に俺は聞く。
「わざと情報を流さなかったのかと思ってな。この程度自力で突破しろって」
「先輩風を吹かせた訳か……意地悪だな」
けどその先輩達は自力でダンジョンを攻略してきたんだ。甘えるわけにもいかないか。
「俺も真剣に考えるとしよう」
「私も」
俺も宝石に近づき考える。
「うーん……」
見た感じ普通の宝石だが、光を反射してキラキラ光って綺麗だ。
……光を反射?
「もしかして……誰か黒い物持ってない?」
「水筒ならあるけど、どうするの?」
「まあちょっと」
俺はレンから黒い水筒を貰い宝石の前に近づける。
「やっぱり」
すると宝石から反射されていた光が一点に集中しており、浮島の外を指し示す。
俺は水筒に光を当てたままゆっくり歩き、島の端の崖に移動する。光は崖を指していた。
「危ないですよ!」
アウルムの注意を無視して崖下を覗き込む。
「あったぞ!」
崖下には島を周回するように螺旋状の道があった。
ここが7層への道だ。
次回「竜人」




