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ダンジョン&ガンマン  作者: コウ
7章 結婚騒動と竜
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12話 天殺

「……知ってる天井だ」


 目が覚めると、以前もお世話になった病棟の天井を見上げていた。


「また病院の世話になったな……」

「起きたか」


声をする方を見ると、椅子に座ってリンゴに似た果物の皮を剥いていたマルグリットがいた。


「……どの位眠ってた?」

「3日だ」


 そんなにか。


「っ皆は!?」


 俺は起き上がりマルグリットに詰め寄る。


「落ち着け」

「もぐっ!?」


 マルグリットは果実を俺の口に押し込んだ。


 何の果実か、林檎に似た酸味がある甘いものが口に広がる。


「これまでの経緯を説明しよう」


 マルグリット説明してもらった。


 倒れた俺達を応急手当をして、病院で治療して貰った。


 スカイウルフは目を覚まし、回復薬を飲ませた後、完全に怪我も治りきってないのにその場を去った。


 スカイウルフもこれでリベンジが出来たんだろう。


「で、竜達の死骸はどうしたんだ?」


 あのデカさと数だ。処理が大変だろう。


「竜の素材は高級でな。解体屋を総動員して、今回参加していた冒険者に渡すそうだ。ロゼとアウルム、エレが竜素材の武器を作ってもらえると言って喜んでいたよ」


 肉は腐りにくいから食ってよし、牙や鱗、骨は武具になり、血の1滴まで薬剤の素材になる。


 ドラゴンに捨てるところは無いらしい。


 解体屋も巨獣の解体も終わったばかりなのに大変だな。


「それでバンが倒した竜だが、どうも専門家が言うには竜の上位種の古竜に分類されるらしい」


 研究者達は驚いていたよ。と言って、また果実を俺に食べさせる。


 まあ。あの大きさと強さなら納得だな。


「そこで相談なんだが、古竜の所有権は倒したバンにある」


 へえー、そうなんだ。


「だが、バンがありったけの核石を持っていった事で協会から請求書が来てな」

「……え?」

「協会は古竜の素材を売れば帳消しにしてくれるそうだ」


 ぬう。あの協会長め、抜け目が無い。


「ま、それでも古竜の価値は計り知れないし、核石分を払っても大儲けだ」


 どうする? とマルグリットは三度果実を俺の口に運ぶ。


 大量の核石をもらったからなぁ。請求額も半端ないだろう。


「俺に選択肢は無いらしい」

「だろうな」


 古竜は協会に売るとして、牙と皮だけもらって残りは貯金にまわすか。


 いや、今回の戦いで俺の防具はボロボロに、特にジャケットは燃やし尽くされた。


 この際、竜の皮で新しい防具を作ってもらって短剣も野盗から奪った物から使っていたが、そろそろ替え時だから牙で作ってもらおうか。


「他の面子は?」

「安心しろ。全員無事だ」

「そうか、良かった」

「みんなを呼んでくる。今は昼食に行ってるからな」 


 そう言い残し、マルグリットは席を立ち、


 ちゅっ


 俺の頬にキスした後病室から出た。


 そして少しして、


「バーン!」


 俺が起きたのを聞き、カナが扉を思い切り開けて入ってきた。後にレンとマルグリットが入ってくる。


「おっと」


 カナが俺に泣きながら抱きつき俺の胸に顔を押し付け、レンが後から入ってくる。


「……心配した」

「すまん。悪かった。許して」

「ぐす……うん」

「相変わらず、仲良いわね」


 レンが茶々を入れる。


「怪我はなかったか?」

「1番の怪我人に心配されたくないわよ」


 それもそうか。


「他の皆は?」

「ロゼとアウルム、エレは戦いで自宅療養。ノアと4つ子は3人の看病をしているわ」

「そんなに酷いのか?」

「軽傷よ。ギフトの使いすぎなだけで命に別状は無いわ」


 それは良かった。


「バンも怪我は完治しているけど、暫くは安静にしてなさい」

「また退屈な入院生活か」


 娯楽もないから暇なんだよ。


「ああそれと、『巨獣殺し』の二つ名が新しくなったわよ」


 ……はい?


「二つ名は『天殺』ですって」

「何処の厨二病だよ……」


 そもそも意味分からんし。


「厨二病って?」


 俺に抱きついたままカナが質問する。


「あー……用は自分が特別だと思っている言動がおかしい人の総称だよ」

「ふーん?」


 カナはよく分かっていなかったみたいだが、とりあえず納得してくれた。


「『天殺』の意味は空を飛んで獲物を殺すからって意味らしいわよ」


 たしかに、巨獣戦と竜討伐は空飛んでたけど。


「誰が付けたんだよ」


 乗り込んで抗議してやる。


「協会長が付けたわよ」


 あ、それは無理だ。


「コホン……カナ嬢、そろそろ変わってくれないか?」

「や」


 落ち込んでいる俺にさらに強く抱きついて、マルグリットの言葉をカナは拒否した。


 ピキッとマルグリットの額に筋が出てくる。


「私はお姉ちゃん達より先にお嫁さんになった」

 

 カナは胸を張って宣言した。


 つまり、立場は私が上だと言いたいらしい。


「……そうか。では、こうしてやる!」


 マルグリットがベッドに上がり、カナごと俺に抱きつく。


「うぷっ!」


 カナの顔がマルグリットの胸に埋もれて苦しそうだ。


「ほらほら!」

「く、苦しい」

「2人とも、病院で暴れない!」


 レンよ。カナとマルグリットに注意するが、怪我人の俺の心配はしてくれないのか。


「うう……」

「カナ嬢。これが大人だよ」


 俺から離れて、マルグリットは自分の豊満な胸を持ち上げる。


 子供の情操教育に悪いから止めなさい。


「ちっ」


 その行動に、レンが舌打ちした。


 まあ、レンは胸がな「ギロリ」……スレンダーな体だからな。


「わたしはまだ成長期。これから大きくなるもん!」


 カナが負けじと反論する。


 2人の視線が合わさり火花を散らす。


「……いい加減、俺の上からどいてくれない?」

「「いや」」


 ですよねー。


 マルグリットが俺とカナを抱きしめたまま話を続ける。


「それで、古竜の話は聞いた?」

「ああ。核石の請求で持っていかれるんだろ」


 俺はやさぐれて、レンに言う。


「まあ、あの量の核石を使ったらね……でもそれじゃなくて、竜の頭に針が刺さっていたの」

「針?」

「針を調べたら、遺物だと分かってね、調べたらどうやら竜は操られていたみたい」


 遺物で操られた竜ね……。


「嫌な予感しかしないんだが?」

「同感」

「ま、私達冒険者にはこれ以上何も出来ないし上層部がなんかするでしょ」

「私も一応領主の人間だから探りを入れておく。下手したら大事になるからな」


 マルグリットは俺から離れて出口に向かう。


「何処に行くんだ?」

「何、私も事後処理とかやる事があるんでね。先に帰るよ」


 バンの寝顔も見れたしね。と、そう言い残し、扉を閉めた。


「面会時間ももう終わりだし、私達も退散しましょうか」

「……ん」


 レンの言葉にカナが渋々うなずき、部屋を出て行く


「また来るね」


 カナが最簿に悲しそうな顔をすると扉が閉まり、俺1人になった。


「……」


 あの騒がしかった面々がいなくなると、とたんに静かになったな。


 俺は暇だったので、リボルバーとライフルを備え付けのテーブルに置いて掃除する事にした。


 ◇


「いやー失敗したね!」


 薄暗い部屋の中、道化師の格好をした女性――ステラが上座に座る修道女を煽るように喋った。


「……」

「折角貴重な遺物を使って竜を動かしたのに、ねえ、どんな気持ち? 作戦が失敗してどんな気持ち?」

「……」


 修道女は道化師の煽りを受けても動かないし、喋らない。


「ちょと、無視はないんじゃなーい?」

「……」

「ま、無理もないか」


 当たり前だ。修道女は……もう死んでいたからだ。


「自殺か……全く。これだからギフト教は嫌になるのよねー」


 ステラがぼそりと呟くと、3階の窓から飛び降りた。


 屋根伝いをまるで踊りながら飛び跳ねる姿は、月に照らされて道化師が踊っているように見えた。

7章 完


ネタ切れしたので溜まってから更新します。

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