10話 竜
ワイバーンの晩餐を見た後、俺達はモンスター達が残した核石を集め、一度地上に帰還する事にした。
誰もがあの光景が頭から離れず、顔色が悪い。
4層の転移陣を出て地上に出れてやっと全員一息付けた。
「あー。空気が上手い」
あんなグロい光景を見せられて、意気消沈していたメンバー達も顔色が元に戻っていく。
「まさかワイバーンがモンスターを食うとは」
「竜巻の周囲を回り続けてるのも謎だし、モンスターを食っていたのも驚きだ」
「しかもモンスター達は自ら食べられに行きましたしね」
6層は謎が多いな。モンスターも手強いし、竜巻が消えないし、ワイバーンが無数に飛んでるし。
「でもなんでワイバーンは俺達を襲わなかったんだろう?」
俺達に気づいていた筈なのに襲う気配がなかった。
「オレ達を塵芥くらいしか思ってないんだろうさ」
ロゼが吐き捨てる様に言う。
「まあ、ワイバーンとなんて戦いたくないから助かるわ」
レンは考えるのを止めてそう言うが。
うーん……それだけか?
「モンスターの動きも変だったしな」
わざわざ食べられに行くなんて。
「……もしかしたら、4層の廃城のモンスターの様に自我が残っていたのかも?」
「なんの話だ?」
あ、マルグリットは4層の体験を知らないのか。
俺は4層で起きた自我を持った様に見えたモンスターについて説明した。
「そんな事があったのか……」
「俺達はモンスターはダンジョンに取り込まれた、元々何らかの生き物だと思っている」
「そう考えると色々辻褄が合うな」
マルグリットは考え込むように手を顎に乗せる。
「協会長や上層部は知ってる話だけど」
「祖父や父は知っているだろうな」
マルグリットには聞かされてない話だったか。
「ま、とりあえず核石も大量に手に入れたし、ティアの加工する分と俺が使う分だけ残して換金しようぜ」
「そうだな。ここで考えても仕方ない」
俺達は協会に向かい核石を換金する。
大量の核石に鑑定人の初老のおじさんは驚いていたが、数が数だけに大金が手に入った。
「こんなものか?」
お嬢様育ちのマルグリットにとっては大金でも少なく感じるのだろう。
金はギルド結成時に作った新たな口座に振り込んで協会を出ようとした時、
カンカンカンカン!!
協会で一番高い場所に建てられた塔から、大きな音で鐘が鳴った。
「なんだ?」
「これは……緊急事態よ!」
俺達は再び協会に入り、説明があるのをロビーで待つ。
鐘の音を聞いたのか、次々と協会に入ってくる冒険者達。
その中には『白薔薇』のメンバーもいた。
「バン。何事?」
「俺もさっぱり」
ミリアの質問に俺も知らないと答える。
やがて協会長のマリナがロビーに現れる。
全員が静まるのを待ってからマリナの説明が始まる。
「緊急事態です。悪獣の竜が現れました」
マリナの言葉に冒険者達はどよめく。
「南から竜が少なくとも20体、『フォルト』に向かってきています。そこで冒険者達の皆様には竜の撃退、ないしは討伐の依頼を出します」
……今日はつくづく竜に縁があるな。
「質問があります」
俺は手を上げて質問する。
「何でしょうか?」
「竜は何時『フォルト』に着きますか?」
「早くて1時間後には着きます」
もたもたしている余裕は無いか。
「くそ、何で竜が?」
「勝てるわけ無いだろ!」
「逃げようにも時間が無い」
他の冒険者は動揺を隠さずに周りが騒ぎ出す。
パンッ!
マリナが動揺する冒険者達に手を叩き大きな音を出して騒ぎを出して鎮める。
「時間が無い! さっさと準備する!」
マリナが素を見せて冒険者達に喝を入れる。
「遠距離主体の冒険者は防壁の上で待機! 遠距離攻撃を行え! 前衛は私と一種に打って出る! それ以外は住民の避難誘導だ! 急げ!」
流石協会長。テキパキと冒険者達に指示を出して行動を開始する。
「バン少年」
移動しようとする俺にマリナが立ち塞がる。
「今回の要は君だ。負担を掛けるが頼む」
頼むといわれてもな。
……あ、そうだ。
「協会長。それならお願いがあります」
「なんだ?」
「核石をあるだけください」
◇
夕方で日の光が赤く染まる頃。
「アイ、来るのかな」
「……わかんない」
アイとマイは防壁の上でドラゴンの襲来を待つ。
『魂の解放者』のメンバーはそれぞれ違う役割でバラバラになっている。
レンとミイ、メイは市民の避難誘導。ロゼとアウルムは前衛で防壁を背にして竜を待っている。
カナ、グレイ、ノア、リンは一緒に避難している筈だ。
そしてギルドマスターであるバンにマルグリット、エレは一番離れた最前線にいた。
「……来た」
南から、空を埋め尽くすように竜が此方に向かってくる。
「20体所じゃない! 100体はいるわよ!?」
「……うそつき」
アイが取り乱し、マイは愚痴る。
他の冒険者も同様だ。竜の数に圧倒されていた。
「……あ」
「どうしたの?」
地上から巨大な赤い光弾が打ち上げられ爆発。数十体の竜を落とす。
「あれはバンね」
そうだ。ギルドマスターで私より年下の少年が頑張ってるんだ。
「マイ。私達も頑張るわよ」
「ええ」
アイとマイはギフトを何時でも使えるように身構える。
俺は協会から貰った核石を篭手に全部吸収させる。
篭手が青く光り、黒白の粒子を噴き出す。
リボルバーに粒子を纏わせて長大な砲を作り、上空の竜に照準を合わせる。
「全員、耳塞いで口開けて!」
俺と共に最前線にきたエレとマルグリット、マリナが厳選した冒険者に言って引き金を引く。
ドオオオン!!
『貫通』を付与した粒子を纏った赤い光弾は群れていた竜に命中し爆発。数十体の竜が爆破四散した。
「流石だな、この調子で頼む」
「いや、無理ですね。これは燃費が悪い」
マリナが賞賛するが、俺は難しい顔で答える。
核石に余裕があるとはいえ、この調子でバンバン使えばエネルギー切れで大群の竜を倒せなくなる。
「俺は空から攻撃していくんで、エレとマルグリットは獲り溢しを頼む」
「了解っす」
「任せろ」
俺は粒子を背中に纏わせて翼を作り、粒子のフレアを出しながら空を飛ぶ。
「ガアアアア!!」
竜達はさっきの攻撃で完全に俺に殺意を持って吠える。
俺は竜の体当たりを躱しながらリボルバーで頭を『貫通』で狙い撃つ。
ドォン!
撃たれた竜は頭が半分吹き飛ばされ、地上に落ちていく。
俺はこの調子で『貫通』を使いながら、竜の翼や胴体等を撃ち続ける。
「おらあ!」
「よっと!」
死ななかったり撃ちもらした竜は『浮遊』で飛んでいたエレのハルバートでトドメを刺されるか、マルグリットの『転移』で竜の上空に転移して叩き斬る。
取りこぼしは地上のミリアを中心に冒険者がトドメを刺している。今の所は順調にいってるな。
俺は『貫通』で竜を撃ちまくり、竜の攻撃を避けながら回復薬を飲んで体力を回復する。
ギフトも籠手も使い続けると消耗する。
協会から貰った核石は質も量も十分なので、今の所飛行自体は問題ない。
俺は最後の1体の脳天に撃ち、落ちていく竜を眺めた。
地上を眺めると、街道が続く草原には竜の死体で山の様になっていた。
地上の冒険者達はまだ戦っているが、善戦している。これなら大丈夫そうだ。
「ふう」
俺は終わったと思い、地上に降りようとした時、
「ガウ!」
上空に立っているデカい狼が待ち構えていた。
「……お前、あの時のスカイウルフか?」
「ガウ!」
以前、護衛中に出会って傷を治したスカイウルフだ。
スカイウルフから殺意も敵意もない。
「もしかして、竜の討伐に来たのか?」
ブンブン
スカイウルフは首を横に振る。
「じゃあ何でここに?」
「グルルルル!」
スカイウルフは威嚇しながら明後日の方向を睨みつける。
それで俺は察した。
あの時スカイウルフに怪我させた奴が来るんだと。
「バン、どうした!?」
マルグリットが『転移』で移動して俺に抱きつき聞いてくる。
「まだ終わりじゃないらしい」
「……何? あのスカイウルフか!?」
「違う」
「ガウ!」
スカイウルフが吠えるとその場から離れる。
俺も殺意を感じてマルグリットを抱えて高速で移動する。
その瞬間、赤い光線が俺達のいた場所に降り注ぎ、地上が焼かれる。
俺は地上を見る。どうやら狙いは外れてみんな無事みたいだ。
そして上空を見上げると、そこには銀色の鱗が輝く竜がいた。
大きさはさっきまで戦っていた竜よりデカく、4枚の翼を広げ、俺達を睨みつける。
どうやら大量の竜のボスみたいだ。
「マルグリット。避難してろ」
「……分かった」
マルグリット自体も足手纏いだと察したのだろう。悔しそうな顔をして、『転移』で地上に降りる。
「ガウ!」
「お前も一緒に戦うのか?」
「ガウ!」
どうやらスカイウルフも銀竜にリベンジがしたいらしい。
「さて、第2ラウンドだ」
次回「銀竜」




