9話 6層
「これからよろしくなのじゃ」
「いらっしゃい」
荷造りをして、俺の家に引っ越して来たティアを出迎える。
こうしてメンバーも揃った事だし、それじゃあ行くか。
「ノア、カナを頼んだよ。ティアも店をサボるなよ」
「行ってらっしゃいませ」
「バン、気をつけてね」
「怪我無くのぅ」
俺達はダンジョン探索に向かった。
俺達は4層への転移陣がある関所に向かいながら歩く。
「こうしてダンジョン探索に行くのも久しぶりね」
「そうなのか?」
レンの言葉にマルグリットが初参加なので色々聞いてくる。
「『大増殖』があって5層に行ったきりだな」
「領主の騒動もありましたし」
「……うちの祖父がすまない」
マルグリットが俺達に謝ってくる。
「マルグリットが悪い訳じゃないさ」
「それでも身内の不始末だ。報いていくよ」
マルグリットは悲しそうに笑いながら宣言した。
空元気にならなければいいけど。
こうして4層の転移陣の関所で許可証を見せて、円状に岩が並んだ中央に立つ。
すると岩が光り、気付けば4層の廃城の地下室に着いた。
「ここがダンジョンか……空気が違うな」
マルグリットのダンジョン初体験の感想がそれだった。
「廃城にはモンスターが出ないからこのまま5層に行くわよ」
「おう!」
俺達は玉座の間から仕掛けで5層に繋がる道を動かす。
こうして下水道を通って5層の城下街に着いた。
「なんというか……予想外だな」
マルグリットが5層の町並みを見てぼやく。
「なにが?」
「もう少しこう……洞窟なんかでモンスターが闊歩しているような場所だと思っていた」
「1層や2層はそんな感じだな……グレイ、エレ、頼めるか」
「ワン!」
「任せるっす!」
グレイが先行して前に進み、エレが『浮遊』で空中から様子を見渡す。
「ほう、ちゃんと役割を分担して無駄が無いな」
ウルバン領の騎士団を率いていただけはある。それぞれの役割りをきちんと理解していた。
「あっちから鎧型モンスターが5体来るっす!」
エレが早速モンスターを発見し、俺達に報告する。
「いつもどうやって対応してるんだ?」
マルグリットは初参戦だ。フォーメーションを言ってなかったな。
「レンと4つ子を後方に、ロゼとアウルムが後方の護衛。俺とグレイとエレが前衛で、アイとマイ、メイがギフトで援護と支援が主体だな」
主に戦闘力の無いレン、ミイ、メイを守りながら戦うのが通常スタイルだ。
なんせ『治癒』と『収納』は生命線だし、『鼓舞』で支援して貰わないと困る。
「なら私は前衛に加わろう」
「そうしてくれ」
初めての戦闘だ。連携は確かめておきたい。
「来るっすよ!」
エレが上空から報告してくる。
「エレは上空から攻撃を! アイとマイは援護! メイはバフ掛けて!」
「了解っす!」
「グレイとバン、マルグリットは迎撃を頼んだわよ」
「了解!」
レンの指示の元、近づくモンスターを迎撃する。
「おら!」
マルグリットは『転移』を使ってモンスターの背後を取り、大剣で斬る。
バンッ! バンッ!
「ガウ!」
俺も負けじとライフルで撃ち、グレイが剣を咥えて攻撃。
「行くっすよー!」
エレも上空から急降下してハルバートでモンスターを叩き切り、アイ、マイがギフトでモンスターを燃やし、あるいは凍りつかせる。
5体いたモンスターをあっという間に討伐を終えて、黒い霧になり核石だけが残った。
「このメンバーだと苦労しないな」
「あっという間でしたね」
「連携も確認できたし、大丈夫だろ」
「気持ちは分かるけど油断しないの」
レンが核石を回収した後、俺達に注意する。
「今回は連携の確認も兼ねて戦闘したけど、今回の目標は6層だから5層での戦闘は極力避けましょう」
「そうだな。無駄に体力使いたくないし」
「上空偵察は任せるっす」
「ワン!」
こういう時程、グレイとエレは頼りになる。
それからモンスターの先頭を避けつつ迂回等をして、6層の入り口にある教会に着いた。
「ここに6層の入り口があるのか?」
マルグリットは怪訝そうに聞くが、説明より行動で見せたほうが早い。
「まあ見てな」
ロゼとアウルム、エレが先行して教会の最奥にある像に触れると、3人が姿を消した。
「転移か!?」
「そういうこと……行くぞ」
レン達が次々に像に触れ消えていき、最後に俺はグレイを抱きかかえて像に触れると風景が変わった。
「ここが6層か」
6層は、中央に巨大な竜巻が轟き続ける浮島だった。
◇
「これ、どうなってんだ?」
俺は浮島の端に行き下を覗き込む。
下は青一色で空とも海とも知れない。
試しに小石を下に落とすと音も無く消えていった。
「落ちるわよ」
レンに注意され、俺は端から離れる。
「これ、どうやって浮いてるんだ?」
「さあ。……何しろダンジョンだしな」
島が浮いている理屈は知らんが、高度はどの位だろう? 寒くもないし、呼吸もちゃんとできる。
「浮島を見たことある人~」
一応聞くが、誰も手を上げなかった。
「ダンジョンだから、そういうもんだと思うしかないでしょ」
それもそうか。
レンの言葉に納得する事にした。
「行きましょう。グレイ、エレ頼める?」
「ワン!」
「無理っす!」
エレが上空探索を無理だといった。
「どうかした?」
「アレを見るっす!」
エレが指差した方向を見ると、竜巻を中心に何かが何百、何千と飛んでいた。
「アレ全部ワイバーンっす。私が飛んだら一瞬でパクっすよ!」
「あれがワイバーン!?」
ファンタジーの定番が来た!
俺は望遠鏡をレンに出してもらいワイバーンを見る。
ワイバーンと言ってもその姿はモンスターと同じで輪郭がはっきりせず、金色の文字が帯状に巻きついている。
ただ、角が生えた獰猛な鰐の様な顔に長い首。前足が無く翼が生えて、長い尻尾。
大きさは望遠鏡越しでも分かる。巨獣まで無いにしろ相当な大きさだ。
俺達を餌と見なしていないのか、俺達の存在を無視して飛行を続けている。
「おおー! かっこいい!」
「言ってる場合っすか!?」
俺の感想にエレが突っ込む。
「確かにこれじゃエレには無理ね」
「そうだな。地道に探索していくか」
「それじゃあグレイ、頼む」
「ワン!」
俺達はグレイの先導に従い、浮島……というか浮いている廃墟と化した街を探索する。
「ワン!」
「敵か!?」
俺達は武器を構えてグレイの睨む方を睨む。
出て着たモンスターは翼が無い竜が人型になった様な外見の、3mはあるモンスターだった。
バンッ!
俺は先制してライフルで撃つが、モンスターには大きなダメージが通らず、モンスターが俺達に突進して来る。
鋭く長い爪を出して攻撃してきた。
「来るぞ!」
バンッ! バンッ! バンッ! バンッ! バンッ!
俺はライフルを連射するが止まる気配が無い。
「おらあ!」
「はあ!」
マルグリットとエレが頭を叩き斬る。
モンスターの頭が砕け散るがそれでも止まらない。
鋭い爪で俺達に攻撃してくる。
ガン!
「くうううっ!」
アウルムが間に入って『鉄壁』でガードする。
「「どいて!」」
俺達は横に飛び退き、アイとマイがギフトを使う。
マイがモンスターの足を凍らせて動きを止め、アイがモンスターの上半身を焼く。
それでも動こうとその場でもがくモンスター。
ドォン!!
俺はリボルバーを抜いて『貫通』を使いモンスターの腹に風穴を空けて、ようやくモンスターが黒い霧になって核石を残した。
核石はサッカーボール大の黄色い球体だった。
「これが6層のモンスターか」
「ええ、ここまで5層のモンスターと強さが違うなんて……」
何より、ライフルが効かなかったのがショックだった。
俺の通常攻撃が通用しないとなると、『貫通』のギフトに頼らざる得ないな。
「アウルムは大丈夫か?」
「はい、怪我は無いですけど……少し疲れました」
アウルムは回復薬を飲みながら報告する。
「少し休憩して進みましょ」
レンの提案に全員賛成し、廃墟と化した街で屋根がある家に入り、休憩する。
窓を覗くとさっきと同じモンスターが至る所徘徊している。
「さっきの戦闘で呼び寄せたか……あの数は無理だぞ」
ロゼも窓から望みこみ、愚痴を洩らす。
「さて、これからどうする?」
あのモンスター1体だけでも苦労したのに、あの数は無謀だ。
「ここで暫く隠れましょ」
「賛成」
これでモンスターが散開してくれれば良いけど。
俺はリボルバーを握りながら外の様子を窺う。
モンスターはこっちにはまだ気付いていない。
とりあえず要警戒だ。
そうして暫く隠れながら交代しつつ警戒していると、突如モンスターの動きが変わった。
「モンスターの進行が変わった?」
「どうしたんだ?」
メンバーも窓からこっそり覗くと、モンスター達が突如走り出した。
「何かあったのかしら?」
「追ってみよう」
俺達はモンスター達が走り去った後を物陰に隠れながら進む。
するとモンスター達は街の中央の石舞台のホールに何百何千体と集まっていた。
そこで膝を折り、両手を握り締めて、まるで祈りを捧げているように見えた。
「一体何が……」
その瞬間。竜巻の周りを飛んでいたワイバーンが何体も集まり、モンスター達を囲む。
そして、ワイバーン達がモンスターを喰い始めた!
「――おええっ!」
その光景に思わず気持ち悪くなりその場で吐くレン。
気持ちは分かる。誰もその光景に恐怖を感じていた。
やがてモンスターを食い終わったワイバーンは飛び立ち、大量の核石だけが石舞台に残された。
「……」
俺達はその光景を呆然と見ているしかなかった。
次回「竜」




