8話 暗殺
数日後。
「……何事?」
俺達の住む家の隣に、大量のトラックが並んで大勢の女性達が荷物を運んでいた。
しかも女性達は知っている顔ばかり。
『白薔薇』のメンバー達だ。
ミリアは何か企んでるのは知っていたが、まさか拠点の移動をするなんて。
確かに隣は空き家で俺達の屋敷並にデカかったが、まさか引越しをするとは。
「バン。これからよろしく」
外でその光景を見ていた俺に、ミリアが挨拶する。
「あ、ああ。まさかここまでするとは」
「本当は私1人引っ越すつもりだったけど……あの子達が着いて行くと聞かなくてね」
困ったように言うが、ミリアの顔は何処か嬉しそうだった。
「ギルマスをお願いしまーす!」
「ギルマス! お幸せに! 側で楽しませて下さい!」
「ギルマス悲しませたら殺すんで」
『白薔薇』のメンバーは俺とミリアの事を応援してくれていた。
まぁ楽しんだり、物騒な事を言う人もいたが。
まあ、これでミリアも通いやすくなっていいか。
「……は!?」
いつの間にか、結婚生活に前向きになっていた俺がいた。
なんだかんだでこの生活を、楽しんでいたらしい。
いかん。俺には記憶を戻すという目的がある!
「……と言う訳で、ダンジョン探索を再開しようと思う」
俺はメンバーを集めてダンジョン探索を提案した。
「やっと?」
レンが呆れて言ってきたが、俺もそう思う。
「思えば『大増殖』から色々ありすぎた」
主に領主騒動だったがな。
「そうだな。そろそろ体も鈍ってきた頃だ」
「そうですね。私も賛成です」
「ワン!」
「「「「異議なし」」」」
「了解です」
「はは! 初めてのダンジョン探索か。ワクワクして来た!」
全員が賛成した事により、日程を決めてダンジョン探索をする事になった。
◇
その夜。
全員眠り帰った静かな廊下に音もなく歩く侵入者。
屋敷の構造は把握済み。対象の部屋も目処が付いている。
侵入者は音もなく扉を開けて、中の様子を窺う。
今日は三人の美女達とねんごろしていなく、あの時一緒にいた幼女と寝ていた。
幼女ーーカナがいるのはやり辛いが、しょうがない。
侵入者ーーステラはグローブを付けた指を腰に付けた毒薬の入った瓶に付け、指をバンに向ける。
「さようなら」
せっかくいい縁が出来たと思ったのに残念だ。
ステラは『指弾』で毒液を針状にして飛ばそうとした時、
「こんばんわ」
「な!?」
何時からかバンが起きており、リボルバーをステラに向ける。
「何時から起きてたの?」
「ついさっきまで寝てたよ」
「……なんで起きたの?」
「んー……殺気?」
「なんで疑問系なのさ」
「で、こんな夜更けに何の用?」
俺はリボルバーの引き金に指を掛けて聞く。
「ん~夜這いだったけど……無理みたいだね」
寝ていたならいざ知らず、巨獣を倒した英雄に正面切って殺せるとは思えない。
ステラは諦めて、両手を上に挙げた。
「で、俺を狙った理由は?」
俺はステラを拘束して俺の寝室で尋問する。
騒ぎを聞いて起きたメンバーも俺の寝室に押しかけた。
「私は何でも屋だよ」
雑用から暗殺までやるのか。
「成程。依頼相手は?」
「さあ?喋らず顔も見せなかったから分からない」
「やけに素直に答えるな?」
「こうなった以上、素直に喋った方がいいでしょ?」
「状況によるな」
俺はステラと押し問答している間に、カナの様子を伺う。
カナは俺を見て頷いた。嘘は言ってない様だ。
「心当たりは?」
「ないね」
うーん、どうしようか。
「取り敢えず、不法侵入と暗殺未遂で憲兵に突き出すか」
「いやー、お姉さんまだ自由の身でいたいかなー」
「何言ってんだ? 私の旦那様を殺そうとしたんだぞ」
マルグリットが憤慨してステラに詰め寄る。
「まあまあ落ち着いて」
「旦那様は甘い!」
「ここでステラを処罰しても同じ事がまた起きるぞ」
「それはそうだが……」
「そこでステラに提案。このまま憲兵にしょっ引かれるか、俺達に協力して刑罰を軽くしてもらうか……どっちがいい?」
「後者でお願いします!」
なら決まりだ。
俺は作戦を皆に伝えた。
翌日。
ステラが拠点にしている酒場。ステラはいつもの様に酒を飲んでいた。
そこに以前も来た黒ローブの人物が音もなく座る。
「依頼なら終わったわよ」
「……」
黒ローブは喋らず手紙を渡す。
ステラはそれを読んで胡乱げに見つめる。
「証拠ね……これでどう?」
ステラはカバンからバンが愛用していたリボルバーをテーブルに置き、黒ローブに見せる。
黒ローブはリボルバーをステラに断りなく懐に入れると、金が入った袋を置いてその場を立ち去ろうとする。
「待ちな!」
そこに憲兵達を連れたマルグリット。
「そこの黒ローブを捕えよ!」
「ちっ!」
黒ローブは舌打ちしながらリボルバーの銃口をマルグリットに向ける。
リボルバーの扱いを知っているとなると、カナの誘拐騒ぎの時に居たな。
「なっ!?」
だが、リボルバーが消えて、憲兵達の中にいた俺の手元に戻った。
「捕えよ!」
黒ローブは抵抗空しく捕まる。
「くそ!」
黒ローブを取ると、30歳位の金髪の男性の顔が顕になった。
「こいつは……」
「知り合い?」
俺はマルグリットに聞く。
「ああ。前に私に求婚してきた男だ」
事情を聞くと、男の名前はゾン。
『フォルト』の元上層部の息子だった。
前領主の死後、大幅な人事異動で不正等が発覚してから役職を剥奪。落ちぶれてしまい、前々から求婚していたマルグリットに取り入ろうとしたが、俺との結婚が発表。
「それで俺を殺そうとしたのか」
何というか、恋愛絡みならいざ知らず、自業自得でのこの騒動なら同情の余地はない。
結局。ゾンは憲兵に連れて行かれて、後日死刑が決まった。
そしてステラは、
「またね~」
と言い残し、いつの間にか消えていた。
憲兵達は血眼になって探しているが、多分見つかんないだろうな。
◇
「いやー面白かったな」
ステラは路地裏を歩いてひとりごちる。
「……で、何の用?」
ステラは振り向いて誰もいない路地に声を掛ける。
「何時から気付いてた?」
そう言って影から現れたのは黒ずくめの若い女性。
「いやー、カマ掛けたんだけど大当たりとは」
ステラは肩をすくめておどける。
「……まあいい。仕事だ」
「へー」
そう言って手紙を投げ渡して受け取ると、既に黒ずくめの女性は姿を消していた。
「はぁ……お姉さんは面白く生きていたいのにな~」
ステラはそう言って手紙を見る。
手紙の内容を見て、ステラの表情が変わる。
「……マジ?」
次回「6層」




