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ダンジョン&ガンマン  作者: コウ
7章 結婚騒動と竜
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1話 魔女

7章の始まりです。

 どうしてこうなった!?


「あははは! やるじゃないか!」


 俺は大剣での連続斬撃を籠手とリボルバーで受け止め、時には躱しながら考える。


 訓練場でライフルは取り回しが悪いのであえて使ってない。


 身の丈程の大剣を細い腕で振り続けるのは長身の20歳前後の女性。


 金髪の長い髪をポニーテールにし、猫を思わせる勝ち気な赤い目。胸元をはだけた黒い服装に長身に更に見せるヒールの高いブーツ、グラビアアイドルが裸足で逃げ出すほどの細い腰に大きい胸のスタイルを持つ、絶世の美女と言っても過言ではない、そんな美女が俺に嬉々として大剣を振るう姿はめっちゃ怖い。


「私相手に考え事とは余裕だな!」

「そうでもないですよ!」


 これでも結構余裕ないし。


「謙遜するな! 流石『巨獣殺し』の英雄と言われるだけある!」

「その呼び方は止めて貰えませんか!?」


 俺は剣戟を躱しながらリボルバーで撃つ。


 バンッ!


「ははは!」


 女性は避けようとせず、黒い服だけで防具も着けていない服装の肩をかすった弾丸を無視して斬撃を放つ。


 いくら()()()()とは言え、避けずに攻撃するなよ!


「どうしてこうなった!?」


 俺は美女ーーマルグリット・ウルバンとの戦いに至るまでの経緯を思い出した。


 ◇


「依頼?」


 俺は『魂の解放者』が拠点にしている家に来た、協会の職員のカルラから話を聞いた。


「はい。バンさんの指名依頼で、商隊の護衛依頼です」


 依頼はいい。指名も名が売れているからまだ分かる。


「だけどなんで俺だけ?」


 そう、この護衛依頼は俺だけ指名で、他のメンバーは同行出来ない。


「そうよ。護衛依頼なら多い方がいいでしょ?」


 俺と話を聞いていたメンバーを代表的して、レンが聞く。


「実は、その商隊の目的地がウルバン領主の館でして……車での移動ですし、限られた人員しか依頼出来ないんです」


 ああ。護衛は移動手段があって実力があり、身元がはっきりしている人員だけなのね。


 カルラは困った様に言ったが、困るのはこっちだ。


 これからダンジョンを探索する算段を付けていたと言うのに。


「断るのは?」

「それだけは止めて下さいっ!」

「うおっ!?」


 カルラがテーブルを叩き、前のめりで怒鳴り思わずたじろぐ。


「唯でさえ人が少ないし! 期限も短いし! 大手ギルドからは移動手段が無いからって断られるし!」


 ……カルラも色々溜まってるんだな。


「みんな、どうする?」


 俺はメンバーに意見を聞く。


「別にいいんじゃない?」


 意外だな。レンならダンジョン探索をしようと思ったのに。


「ここで協会に恩を売っておくのも悪くないな」

「なるほど」


 ロゼの言葉にも一理ある。


「と、言うわけで……みんなも良いわね?」

「やだ!」


 まだ誘拐された一件が尾を引いているのか、カナは反対した。


「バンと一緒がいい!」

「と言われてもなぁ……」


 俺はカルラの方を見るが、横にブンブンと首を振られた。


 だよなぁ。


「カナ。御土産買ってくるから我慢してくれないか?」

「うー」


 一応説得してみるが、やっぱり良い顔をしないか。


「カナちゃん。バンはお仕事なの」

「あまり我儘言うと嫌われるぞ?」

「……え?」


 ロゼの嫌うの言葉に、カナが硬直する。


「……いや」

「え?」

「嫌! 嫌わないで! カナを捨てないで!」


 突如、カナが大声を出してその場に蹲り頭を抱える。


「カナ落ち着け!」


 突然のカナの行動に俺はカナを抱きしめる。


「みんなカナを嫌わないし、捨てたりなんかしない!」

「いや! やめて! 叩かないで!」


 泣き喚くカナを抱きしめる俺を殴るが、俺は離さず頭を撫でる。


「あ……」

「大丈夫だから。俺が守るから」


 俺ならカナを安心させる様にあやしながら、頭を撫で続ける。


「……ん」


 するとカナも落ち着き、安心したのかそのまま眠ってしまった。


 全員、その光景を唖然と見ているしかなかった。




「どう?」

「まだ眠っている」


 あの後、俺はカナを部屋のベッドに寝かせて、グレイに側にいる様に頼んだ。


「……あの反応。尋常じゃなかったわ」

「……すまない。オレのせいで」

「ロゼのせいじゃないさ」


 カナのあの反応は誰も予想出来なかった。


「誘拐された時、何かされた訳じゃないのよね」

「聞いたけど、なにもされなかったって言ってたしな」


 となると、1人森にいた理由に何か関係があるのかもな。


「兎に角、カナが喋りたがらない理由が何となく分かった」


 カナにとって、嫌われるというのはトラウマなのだろう。


 住んでいた場所で碌なことがなかったに違いない。


「取り敢えず、この件は触れない様にしよう」


 問題の先延ばしというのは分かっているが、カナの過去を知る手段がない以上、本人が喋ってくれるまで待つしかない。


「それしかないか」

「カルラさんもこの件は内密に」

「……はい」


 流石のカルラも子供がトラウマで泣き喚く姿を見た以上、聞きたそうにしていたが何も言わなかった。


「取り敢えず話を戻しましょう」


 レンが空気を変える様に話を変える。


「依頼の護衛は『魂の解放者』からはバンだけ。他のギルドからは誰が出るの?」

「3大ギルドからは『白薔薇』のミリアさん、ベアトリクスさん、メルナさんが出てくれます。『飛脚』と『明けの明星』からは断られました」


 『飛脚』はしょうがないですけどね、とカルラが呟く。


 まあ、『飛脚』はケンタウロスやパーピィが中心のギルドだからな。車には乗らないだろう。


 にしても『明けの明星』もか……最近ギフト教と関わりがあると聞いたが、何を考えているんだ?


「後は車を持っているギルドを総当りで依頼している所です」


 どのくらいいるんだろうか?


「商隊の規模は?」

「車2台とトラック3台です」

「車? なんでまた」


 商隊ならトラックだけで良いだろうに。


「商人が乗る分です」

「ああ」


 商品の売買で取引する人達用か。


「出発は何時?」

「7日後です」


 それなら準備も出来るな。


「集合は協会前、朝7時集合で」

「分かった」

「それではよろしくお願いします」


 カルラは俺に一礼して帰っていった。


 また別のギルドに要請に行くらしい。


「俺はカナの様子を見てくるよ」


 俺は席を離れ、カナの部屋に行く。


 コンコン


「……」


 扉をノックするが応答が無い。


 俺は音を立てないようにゆっくり扉を開ける。


 部屋でカナを見守っていたグレイが俺に気付き近づく。


「ワン」

「グレイ。カナの様子はどうだ?」

「クゥーン」


 そうか。まだ寝ているか。


 俺はカナの寝顔を見る。


 頬は涙で濡れた跡があり、悪夢を見ているのか、苦しそうな顔をしていた。


「……」


 俺に出来る事は無い。


 だからせめて、俺はカナの頭を撫でる。


 すると心なしか表情が和らいだ気がした。


 俺はカナの寝顔が良くなるまで頭を撫で続けた。




「どうだった?」

「今は落ち着いている」


 レンの質問に俺は答える。


「バン。本当に何も知らないのか?」

「ああ。俺が知っているのは帰る場所が無いってだけだ」


 俺はカナと会った時の経緯を説明した。


「そう……もしかしたら、カナちゃんは魔女って呼ばれて迫害されたのかもね」

「魔女?」


 この世界に魔法は存在しないはずだが?


「カナちゃんほど強いギフトを持つと魔女呼ばわりされて、恐れられるのよ」


 一部の町村だけだけどね、と付け加えて説明してくれた。


 そうか……それならカナの経緯に納得する。


 だが、


「反吐が出るな」


 力を持っているだけで、か弱い女の子をあそこまで追い込むのは非道だ。


「そうね」

「ああ」


 誰もが俺の言葉に反論しなかった。


「とりあえず、出発の日までカナの傍にいるよ」


 カナにとって、俺は精神安定剤の様な物なのだろうう。


 できるだけ付き添ってやろう。


 何時までも俺に依存させる訳にはいかないが。


「……多分、見当違いな事を考えてるんでしょうね」

「カナも大変だ」


 女性陣が小声で何か喋っていたが、俺は気付かなかった。

次回「護衛」

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