7話 陰謀
ダンジョンから地上に出て街に帰る途中。
関所で番兵に会員証を見せた時に事件が起こった。
「バンだったか、詰め所に来て貰おう」
……なにやら、一悶着ありそうだ。
俺だけ詰め所…というより取調室に連行され、他のメンバーはここに残ると抵抗したが、結局関所から追い出された。
「それで、何の用で?」
俺は対面に座る騎士の格好をした男性に質問をする。
「君には殺人の容疑が掛かっている」
「……はい?」
殺人といえば、思い当たる節は2つ。
森で野党に襲われた時と、ダンジョンで襲われた時だ。
「ダンジョンで襲われた件ですか? それなら協会長にも話を通して不問になりましたが?」
とりあえず、最近起こったことを話してみる。
「そっちじゃない。3日前、路地裏でゴロツキが殺された」
心当たりが全く無い。
「ゴロツキの頭に小さな金属の塊がめり込んでいて、傍に筒状の金属が落ちていた」
そう言うと騎士は、球状の鉄の塊と、筒状の金属を俺に見せる。
「心当たりがあるだろ? 貴様の持つ武器と形状が一致している」
騎士は俺に顔を近づけ、問いただす。
「吐け。貴様がやったんだろ!?」
「……はあ」
俺は杜撰なやり口に、思わずため息をついた。
「なんだその態度は!?」
騎士は激昂し、俺の胸倉を掴む。
「落ち着けよ」
俺は胸倉を掴まれた腕を掴み、引き剥がす。
「まずは質問、襲われた夜の目撃者は?」
「……何が言いたい?」
「目撃者はいたかと聞いているんだ」
「貴様! ……まあ、いい。居なかったが証拠がここにある! 言い逃れできんぞ!?」
騎士は俺の態度に怒りを震わせながらも、俺に答えた。
「じゃあ、大きな音は?」
「それも無かったと聞いたが……」
騎士は怪訝な顔をしながら俺の質問に答えた。
「なら、答え合わせをしよう」
俺はホルスターからリボルバーを取り出し、シリンダーから銃弾を取り出す。
「これが俺の武器だ。そしてこれが使用する素材」
俺は銃弾と証拠品を見比べさせる。
「な、明らかに大きさも形状も違うだろ?」
証拠品として出された物は、銃弾より明らかに大きく、弾頭も形状が違っていた。
「だ、だが、別の物を使っていた可能性もある!」
「素材はこれしかないし、他の武器もこれを使っている」
俺は騎士の弁明を一蹴し、ライフルの銃弾も見せて説明を続ける。
騎士は明らかにうろたえている。あと一押しだ。
「それじゃあ、外に出ようか」
「何をする気だ!?」
「いいから」
俺と騎士は外に出て、関所の中にある岩の前に立つ。
「ゴロツキが殺された夜、大きな音はしなかったって言ったよな?」
「ああ。それがどうした?」
俺はリボルバーを構えて、岩に向かって撃つ。
バンッ!
大きな音と共に、銃弾が発砲された。
「こんな大音が出るのに、誰も気付かないはず無いよな?」
「……」
騎士は何も答えない。
「最後にこれだ」
俺は撃った銃弾の空薬莢を抜き、騎士に見せる。
すぐに空薬莢は、光の粒子になって消えた。
「あの金属の筒はなんだろうな?」
「うぐぐ……」
騎士は何も言い返せず、俺を睨む。
「と言う訳で、俺は犯人じゃないし、何ならその日はパーティの後に『白薔薇』と打ち上げしている。疑うなら『白薔薇』のギルドマスターに聞けばいい」
「――黙れ! 貴様が犯人だ! その武器は証拠として押収する!」
とうとう我慢できなくなったのか、騎士が俺から武器を取り上げようと襲い掛かる。
やっと素が出たか。
俺は騎士の腕を掴み捻り上げ、足を払って地面にうつ伏せに倒して動けないようにした。
「番兵さん。こいつをどうにかしてください」
俺達の行動を一緒に見ていた番兵に声を掛け、助けを求める。
番兵は冒険者協会の職員なので、基本的冒険者の味方だ。
「離せ! 私はウルバン騎士団の人間だぞ! 領主に逆らうのか!?」
間抜けな奴め、自分からこの騒動の黒幕を言いやがった。
「じゃあ、雇い主様にこう言いな――俺に関わるな」
番兵に連れて行かれる騎士が叫びながら何か言っているが、俺は無視して関所を出る。
「まさかこんな事をするなんてな」
あのクソジジイ、次何かしたらタダじゃおかない。
俺はそう誓って家に帰った。
「そんな事があったのね」
一通りの内容をギルドメンバーに伝える。
「……すまん」
俺は全員に謝る。
「皆に迷惑を掛ける事になるかもしれない」
「それはお互い様でしょ?」
レンは笑いながら俺に言う。
「私なんて戦闘からっきしだし、守られてばっか」
「オレもフォローしかしてないしな」
「私も…バンがいなかったら、今頃ここには居ません」
「ノアもです」
「「「「私達も迷惑掛けてます」」」」
「バンさん、気にしてません」
「みんな……」
全員の暖かい言葉に、俺は不覚にも泣きそうになった。
「バン」
「カナ……」
「私も、バンが居なかったら死んでた。ありがとう」
「……俺も、皆居てくれてありがとう」
俺達はお互い感謝した。
「所で、これからどうするんだ?」
妙な空気を消すように、ロゼがこれからの事を聞く。
「とりあえず、協会長の所に行って相談するよ」
「それが一番ね」
明日協会に行く事を決め、今日は休んだ。
◇
「話は分かったわ」
翌日。
協会に行き、昨日の顛末をマリナに伝える。
「あのジジイが……」
「会長。素が出てますよ」
秘書のマリィに嗜められ、マリナがコホンと咳払いをする。
「とりあえず、領主の目的はバンの武器ね」
「みたいですね」
俺に冤罪を仕掛けてまで奪おうとしたんだ。次は何してくるか分からんぞ。
「隣のエルド領とそんなに関係が悪いんですか?」
「ああ。戦争直前まで来ているらしい」
だから俺の銃を取って量産したいのか。
「あの領主の息子がさっさと後を継いでくれたらいいけど」
「領主の息子?」
マリナの反応からすると、あの強欲領主よりマシなのだろう。
「今の領主と違って、利益より仁義を重んじるし、穏健派だ。エルド領主との和解案も出してくれるはずだ」
それで優秀ならいいけど。
「さっさと死なないかな、今の領主」
マリナの小声は聞かなかった事にしよう。
あのジジイ、敵を作りすぎだろう。
「抗議は私の方でしておく。『魂の解放者』が何も気にする必要は無い」
「それは助かりますが、実はお願いが……」
「なんだ?」
俺はライフルを見せてフォルンの事も説明した。
「……はあ。分かった。そっちは護衛を君の依頼として出しておこう」
「助かります」
「依頼料は取るがな」
それでも、唯一の銃職人のフォルンを頬って置けない。
「話はこれで終わりか?」
「はい」
「なら、こっちからも話がある」
話?
「最近、『明けの明星』が奇妙な動きを見せている」
『明けの明星』が? レオンが死んでガイが新たにギルドマスターになったはず。
「女性冒険者を加入させるようになって、男性冒険者を蔑ろにしているらしい」
「はあ」
どったで聞いたフレーズだな。
「加入している冒険者はギフト教の信者と言う噂だ……君も気をつけるように」
やっぱりか。
しかし、あのインテリヤクザがねぇ。何考えているのやら。
「分かりました。気をつけときます…それじゃあこれで」
「ああ。困ったことがあったら頼ってくれ」
「……いいんですか?」
弱小ギルドなのに。
「『魂の解放者』……というか君は、勝手に担ぎ上げられたとしても英雄だ。多少の便宜はするさ」
「……どうも」
英雄呼びはやめて欲しいけどなぁ。
俺はそう思いながら会長室を後にした。
次回「誘拐」




