6話 5層②
5層の探索2日目。
俺達は意気揚々に城下町を探索する。
「そういえば聞いてなかったけど、6層の入り口って何処にあるんだ?」
……俺の言葉に、誰も答えなかった。
「マイ、彼氏に聞いてない?」
アイがマイに尋ねるが、
「聞く前に、彼氏と別れた」
マイから衝撃的な真実が語られた。
「「「はあ!?」」」
3姉妹は驚いてマイに問い詰める。
「何時別れたのよ!?」
「ギルド結成の後、すぐだった」
「なんで!? 僕に知り合いを紹介してくれるんじゃなかったの!?」
「ギルドのスパイ疑惑をかけられて、そのままなし崩し的にだった。あと、ミイ、そんな事言ってない」
「そういう事、言うもんじゃない!?」
「もうその辺で……あと、ごめん。俺がギルドを創った所為で」
4つ子の会話に口を挟み、俺は謝る。
「……気にしていない。こうなると思っていたし」
マイは気にした様子無く俺に言った。
「あーあ、また4人ともフリーか」
「……次もがんばる」
「彼氏が欲しいよ」
「私も」
4つ子は彼氏が欲しいとボヤキながら探索する。
「……あの集中力の無さが4つ子の短所ね」
「そうだな」
毎回ベアトリクスに扱かれても、直らなかったようだ。
そんなこんなで偶に出くわすモンスターを倒しつつ探索は進む。
「……もうマッピングが終わったわ」
そして、5層の地図が完成してしまい、グレイの嗅覚を持ってしても結局6層の入り口は見つからなかった。
「……地上に戻って、ミリアに聞いてみるか」
『白薔薇』とは5分の同盟関係だ。その位教えてくれるだろう。
「それしか無さそうね」
レンも同意して、俺達は下水道の入り口から4層の玉座の間に戻る。
「おや?、奇遇ですね」
レア達『飛脚』のギルドメンバーと出会ったのは玉座の間に出た時だった。
◇
「すみません……」
「いえ、この位」
俺達『魂の解放者』は『飛脚』のメンバーと行動を共にして再び5層を探索する。
『飛脚』のメンバーは20人。
ケンタウロスや獣人と言った種族が多く、その種族特有の嗅覚や聴覚で探索、情報収集しているらしい。
そこで、俺達は取引で6層の入り口を教えてもらうことにした。
交換条件の金額をどのくらい吹っかけられるかと思ったが、『飛脚』の条件は、
「ウルバン領主との会話を教えて欲しいです」
との事だったので、パーティでのウルバン領主との会談の話を伝えた。
「なるほど……」
レアも思うところがあるのか、手を顎に当てて考えている。
「ありがとうございます……では、約束通りに6層の入り口を教えましょう」
そうして、レアの案内の元、6層の入り口がある場所を案内してもらった。
「そういえば、レアさんはどうしてダンジョンに?」
「冒険者がダンジョンに来るのは当たり前では?」
レアは俺の質問をはぐらかす。
まあ、同盟を組んでいるわけでもないし、無理に聞く必要も無いか。
「ボス」
レアをボスと呼ぶ『飛脚』の狼の顔をした獣人が話しかける。
「ライカン。どうしました?」
「前方にモンスターが15体、もう少ししたら接敵する」
どうやら、大所帯の所為でモンスターに眼を付けられたみたいだ。
「わかりました。別ルートで行きましょう」
「倒さないんですか?」
この人数なら、倒せるが。
「私達の目的は核石ではないので、極力戦闘は避けて温存します」
なるほど。情報を生業にする『飛脚』らしい考え方だ。
「バン」
「ああ」
レンが言いたい事は分かる。俺達は冒険者だ。
「俺達がモンスターを倒します。そうすれば俺達は核石が手に入る。そっちは最短ルートでいける。損は無いでしょ?」
俺はレアに提案する。
「……そうですか。なら、お願いします」
レアも同意したことで、『魂の解放者』が先行する。
少し歩くと、狼の獣人の情報どおり、モンスターが15体大通りにたむろしていた。
どれも鎧型、ユニークモンスターはいないな。
「行くぞ」
「ああ」
「はい」
「うっす」
メイに『鼓舞』でバフをかけてもらい、俺とロゼ、アウルムは突撃、エレは『浮遊』で上空から奇襲をかける。
バンッ! バンッ! バンッ! バンッ! バンッ!
俺はライフルを連射。
「はあ!」
「やあ!」
「それ!」
ロゼとアウルムは左右から、エレは上空から攻撃。
アイとマイは後方でギフトで援護する。
程なくして、モンスターは討伐された。
「あれが『魂の解放者』の戦い方……」
レアは、『魂の解放者』の戦いを後ろで観察する。
連携が取れて、自分の役割をちゃんとこなしている。
これなら、6層でも通用するだろう。
特筆するのは、バンが持つ武器、ライフルとリボルバーだった。
(どうりでウルバン領主が欲しがる訳ですね)
巨獣討伐でも見せていた武器は、エルド領主と一触即発のウルバン領主にとって、喉から手が出るほど欲しい品物だろう。
誰でも簡単に人を殺せる武器。
それは、誰もが兵士になりえるということだ。
それこそ、子供から老人まで。
バンはそれを危惧して自分の武器の仕組みを決して明かさないのだろう。
良くてどんな物か分かるくらいだ。
(だが、あの強欲領主が諦めるはずが無い)
合法非合法問わず、手に入れてくるに違いない。
(ウルバン領主の動向もチェックですね)
情報は武器だ。
『魂の解放者』や、領主を嫌っている協会長は欲しがるかもしれない。
それをよく知っているレアは、今回の『魂の解放者』の戦闘も見逃さずにいた。
「終わりました」
「流石です」
戦闘をつつがなく終わらせ、核石を回収した後、レアに報告して賛辞の言葉を貰う。
「目的地はもうすぐです……行きましょう」
レア達に先導されて、俺達は町を探索する。
「着きました」
そして案内されたのが、廃墟と化した教会だった。
「……ここ?」
どう見ても、ただの教会にしか見えないが。
中に入ると朽ち果てた椅子が並び、奥には十字の上に丸が付けられた像があるだけだった。
「この像に触れると、6層に入ります」
レアが証拠を見せるように像に触れると、像が光り、レアが姿を消した。
「転移!?」
俺達が驚くと、また像が光り、レアが戻って来た。
「このような感じです」
「なるほど……どうりで見つから無い訳ね」
こんなギミック、普通は見つからない。
「ここは先代の『飛脚』のギルドマスターが見つけた者です」
レアが誇るように話始める。
「先代はもうダンジョンで戦死しましたが、ギフト『直感』で深層のルートや様々な遺物を見つけてきました。それこそ冒険者時代の黎明期を支えた存在です」
「それは、すごい人ですね」
「ええ。それに――」
「ボス。話が長い」
ライカンがレアを咎める様に注意する。
「コホン…話が逸れましたね」
どうやら、レアは先代をえらく尊敬しているようだ。
「では、私達はこれで」
そう言い残して、『飛脚』は6層に転移していった。
「俺達はどうする?」
「引き返しましょう。流石に6層までの準備はしてないわ」
まあ、今回は5層の探索が主だったからな。
「マッピングもしたし、ここら辺が潮時ね」
「分かった」
こうして俺達は三度4層に戻り、転移陣で地上に帰還した。
次回「陰謀」




