5話 5層①
翌日。
「さあて、行くわよー!」
二日酔いも治り、レンは元気よく出発の音頭をとる。
今日は前回行けなかったダンジョンの5層まで行く予定だ。
『魂の解放者』は4層の転移陣がある関所を通り抜け、廃城の地下室に着く。
5層に繋がる玉座の間に向かい、『大増殖』も収まり静かになった廃城を探索する。
そして遂に、玉座の間に着いた。
元々は豪華でだったであろう玉座の間は朽ち果てて、見る影も無い。
精々、石で出来たデカイ玉座が奥にあるだけだ。
「さて、着いたのはいいが、何処から入るんだ?」
ロゼは玉座の間を見回しながら誰と無しに言う。
「そこはミリアから聞いた……こっちだ」
俺は奥に向かい、石造りの椅子に近づく。
「確かこうやって」
俺が玉座を横に押すと玉座が動き、カチリと音がした後、床から地下に行く階段が姿を現す。
「こんな仕掛けがあったなんて……」
「元々は避難用の仕掛けだったんでしょうね」
冒険者もよく気付いたよな。
「グレイ、頼めるか?」
「ワン!」
グレイを先頭に、地下に続く階段を降りる。
階段を下りた先は、下水道だったのだろうか、石造りの通路に出た。
通路は暗く、ランタンを点けないと何も見えない。道も四方に分かれて、入り組んでいるみたいだ。
「どっちに行けばいいんだ?」
これじゃあ、迷子になるぞ?
「ワン!」
「ん? 任せろって?」
「ワン!」
「そうか、なら頼む」
「マッピングは任せて」
レンは自信満々に言い、グレイは地面の匂いを嗅ぎながら俺達を誘導する。
「大丈夫なんっすか?」
「最近冒険者が通ったんだろう。その匂いを追跡してんだろうさ」
エレが心配そうに聞くので、俺は安心させるように言った。
「ワン!」
「着いたみたいだ」
そうして下水道の終点……出口に辿り着く。
「行きましょう」
そうして俺達は、5層に入った。
ここが5層……なんか思っていたと違う。
5層は洞窟や森林ではなく……普通の城下町だった。
『フォルト』との違いがあるとするなら、中世ヨーロッパ風のデザインの建築物が並ぶ町並みだ。
まあ、その殆どが朽ちて辛うじて外見を保っている感じだが。
「5層は広いって聞いていたけど……納得したよ」
「レン。どうする?」
「私も聞きたいわよ」
俺達はレンにルートを聞くが、流石の彼女もお手上げ状態だ。
となると……。
「グレイ、また頼めるか?」
「ワン!」
グレイの嗅覚に賭けるしかない様だ。
「分かるんっすか?」
新入りのエレは疑問視していたが、
「最近、『飛脚』が『大増殖』の調査で立ち入ってたし、ルートも知ってる筈だろ。それをグレイに辿ってもらう」
「ワン!」
「グレイも任せろってさ…じゃあ、行こう」
俺達はグレイに先導され、5層を探索する。
「……なんでギルマスはグレイちゃんの言葉が分かるんっすか?」
「それはこのギルド最大の謎よ」
◇
城下町…5層の探索は大きなトラブルも無く順調に進んだ。
『大増殖』の後の所為なのか、モンスターは姿を見せず街は静まり返っている。
「……なんか、不気味よね」
「言うな」
「止めて下さいっ」
オカルトが駄目なレン、ロゼ、アウルムは常時怯えていたが。
「廃城の時もそうだけど、宝とか置いてないな」
ダンジョンの定番なのに。
「かなり昔からあるダンジョンだから、そういうのは粗方取られているわよ」
レンが夢の無いことを言った。
「そっか……残念だ」
「まあ、まだ見つかってないのもあるかもね」
そんな会話をしながら、暫くグレイの先導の元歩いていると、
「グルルル!」
グレイが唸り声を上げる。
どうやら、モンスターが現れたようだ。
「前方からモンスターが来るっす!」
エレも『浮遊』でモンスターの出現を知らせに地上に降りる。
「どんなのだ?」
「ケンタウロスの様な見た目でランスを持ってるっす!」
となると、突撃してくるな。
「ロゼ、『石壁』を適当に何枚か出して。アウルムはロゼのフォローを」
「適当ってどうするんだよ?」
レンはロゼとアウルムに指示を出すがロゼは疑問を出して聞く。
「多分3層のモンスターと同じで『石壁』を破壊してくる筈だから、逆にそれで機動力を削ぐ。しなくてもスピードは落ちるわ。後はバンとエレで撃破して。アイとマイは後方で攻撃」
なるほど、悪くない案だ。
「誰も反対は無い?」
誰も何も言わなかったので、レンの作戦で決まった。
「じゃあ、皆配置について」
ロゼが『石壁』をモンスターの通路上に何枚か出して、俺は正面、エレは上空で待つ。
俺の隣にアイとマイが並び、後ろでミイが『鼓舞』を使いメンバーにバフを掛ける。レンとミイは建物の物陰に隠れてもらっている。
そうして現れたモンスターは、エレの言う通り、ケンタウロス型でランスを持っているが、大きさが違う。
俺が見てきた2倍の大きさはあり、体格に似合わず猛スピードで駆けてくる。
「来た!」
モンスターは『石壁』ランスで難なく壊し、走り続ける。
「えいっ!」
「やあっ!」
バンッ! バンッ! バンッ! バンッ!
「これでも食らえ!」
俺とアイ、マイ、エレが攻撃するが、ビクともしない。
「退避ー!」
俺達はモンスターの突進を間一髪で避ける。
するとモンスターは反転し、こちらに狙いを定める。
その隙に俺はリボルバーを抜き、構える。
モンスターが突進して来る。
ドォン!!
俺はモンスターの動きに合わせて『貫通』で発砲。
モンスターの腹に風穴が開き、黒い霧になって消えた。
「これが5層のモンスターか……」
4層までのモンスターと強さが違うな。
「改めて、深層に近づいているのを感じるな……どうする?」
ロゼが真剣な顔でレンに言う。
「待って、今のモンスターはユニークモンスター」
マイが俺達にそう報告した。
「ユニークモンスター?」
「彼氏から聞いた。5層から通常モンスターと違って強いモンスターが出るって」
おお、流石『明けの明星』のメンバーを恋人に持つ人物。情報通だ。
「聞いてた外見と同じだから、多分そう」
「運が無かったですね」
「いつもこんなだ」
マイの言葉にアウルムが嘆き、ロゼもうんざりして言う。
「ユニークモンスターならそんなに遭遇しないでしょ。進みましょう」
レンが進むと決断し、俺達は探索を再開する。
探索して暫く、モンスターと遭遇したが、4層の廃城で出た鎧型のモンスターが徘徊している位で、大した脅威では無かった。
「そろそろ野営しましょう」
4層と同じで5層も月明かりだけが頼りだったので、時間が分からなかったが、時計を見ると10時を回っていた。
「もうこんなに経っていたのか」
「空がこんなだと、時間間隔が分からなくなるしね」
俺達は一番外見がまともな民家に入り、野営をする。
こうして、5層の探索の1日目が終了した。
次回「5層②」




