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ダンジョン&ガンマン  作者: コウ
6章 領主と陰謀
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2話 パーティ

 パーティ当日。


 急遽仕立てて貰ったタキシードに着替えて、鏡の前で身だしなみの確認をする。


「似合ってるよ」

「……そうか?」


 カナが褒めてくれるが、俺としてはいつもの探索服の方がいいけどなぁ。


 ちなみに左腕は、籠手を見えない様に服で隠して手袋をしている。


 コンコン


「はい」

「失礼します」


 ノアが部屋に入って一礼。


「『白薔薇』の車が到着しました」

「分かった」


 俺は部屋を出て、玄関に向かう。


「待ったわよ」


 豪華な車には、何時のゴスロリ衣装ではなく、白いドレスを着たミリアが乗っていた。


 その姿は可憐で、『白薔薇』というより、百合を思わせる。


「ごめん」

「さあ乗って」

「じゃあ、行って来る」

「いってらっしゃい……女に気をつけて」


 ……カナのミリアを見る目が怖い。


「ふふふ……」


 当のミリアは余裕綽々で視線を受ける。


「さあ……行きましょう」


 車のドアが閉められ、俺達はパーティ会場に向かった。


 ◇


 会場に着き、車を降りる。


「紹介状を」


 門の前にいた正装をした受付に俺とミリアは紹介状を渡す。


「……確認しました。バン様とミリア様ですね。どうぞ」


 門が開けられ、様々な花が植えられた広い庭が広がり、玄関が遠くに見える。


「バン、ほら」

「ん?」


 ミリアが俺の腕に自分の腕を絡ませる。


「淑女のエスコートは紳士の役目でしょ?」

「はいはい」


 俺とミリアは腕を絡ませながら花壇を見ながら歩く。


 屋敷の扉を使用人が開き、中に入ると広場に出た。


 広場の奥の部屋を通り、会場に入る。


「おー」


 会場は立食パーティ式で、豪華な料理が並べられてる。


 俺達は来るのが遅かったみたいで、既に様々な人達がいた。


 名前も顔も知らないが、『フォルト』の権力者や有名人だらけなのだろう。


 そこに見知った顔も見つけた。


「少年も呼ばれたか」

「会長」


 協会長のマリナだ。


「……同盟の話は聞いていたが、ずいぶん親しげだな」

「あははは……」


 俺とミリアは、依然腕を絡ませたままだ。


「まあいい……言い忘れていたが、『大増殖』の件は感謝する」

「ええ……亡くなった人も多いですが」

「そうだな……特に『明けの明星』のレオンの喪失は協会でも痛い」

「あれは自業自得」


 マリナは沈痛な顔を浮かべながら言ったが、ミリアは一蹴した。


「ここ最近、トラブルが多すぎる」

「そうだな……私も対応に忙しい」


 やはり協会長となると、その苦労は推して知るべきだ。


「ま、今日は精々楽しめ……私は他に挨拶があるから、またな」


 そう言ってマリナが離れると、今度は『飛脚』のギルドマスターのレアが挨拶に来た。


「こんばんは……いい夜ですね」

「そうですね」


 確かに今日は星が良く見えて、3つの月も輝いている。


「まずは『白薔薇』と『魂の解放者』の同盟、おめでとうございます」

「ありがとうございます」

「今回のパーティでは何かしら思惑が動いておりますので、お気をつけて」


 やっぱりか。


「忠告感謝します」

「あと……何か情報がありましたら売買しますので、『飛脚』に連絡を」

「あ、はい」


 こんな時でも情報収集ね。仕事熱心というか。


「では、私もこれで」


 レアは俺達に挨拶を終えて去っていく。


 俺は他に知り合いがいないか会場を見渡すが、1つ気になった事があった。


「『明けの明星』のメンバーがいないな」


 あのインテリヤクザなら来そうだったが。


「レオンが亡くなったばかりだもの。喪に服してるんでしょ」

「そんなもんか」

「それよりも、私達も何か食べましょう」

「そうだな」


 他に挨拶する人物も見かけなかったので、食事を摂る。


「すみません、飲み物を2つ」

「はい、お待ち――」

「「あ」」


 近くの給仕に飲み物を頼もうと声を掛けると、意外な人物だった。


「ティア? 何やってんの?」

「それはこっちの台詞じゃ!」


 『ロガーティア武具店』の店長がメイド服を着て給仕をしていた。


「ティア……貴方、また金欠なの?」

「ミリアもワシのバンと何イチャイチャしとるんじゃ!?」

「俺はティアのものじゃない……というか、2人とも知り合いなの?」

「……私とティアは幼馴染」


 なんと、意外な交友関係だ。


「それで、お主達はパーティの参加か?」

「見ての通り……そっちは?」

「カジノが休みでの、丁度給仕の応募があったので働いておる。メイド服も着たかったしの」

「相変わらずの趣味ね」


 ミリアは呆れたように額に手を当てた。


「おっと話が逸れたの……それで何が欲しいんじゃ?」

「俺は酒以外なら何でも」

「それならシナのジュースで良いか?」


 シナか……カナと森で飲んだのを思い出すな。


「じゃあそれで」

「私は白ワイン」

「うむ、待っとれ」


 ティアが注文を受けて取りにいく。


「……ティアに狙われてるの?」

「ああ……なんか気に入られて……あと、貞操を狙われている。別に嫌っている訳じゃないが」


「そう……少し待ってて」


 ミリアはそう言い、俺から離れてティアの向かった方に行った。


 ……なんだ? もしかしたらティアを止めに行ってくれたのなら嬉しいが。


 


「ティア」

「なんじゃ? 我慢できずに取りに来たのか」


 ミリアは注文の準備をしていたティアに話しかけた。


「貴方、バンのことが好きなの?」

「好きじゃよ」


 ティアは即答する。


「どんな所が?」

「そうじゃのぅ……なんと言うか、ビビっときたのじゃ。ワシの格好を否定しなかった男は初めてじゃし」


 今まで会った男達は、ティアが男だと知ると、気持ち悪がって逃げて行った。


 だがバンは、ティアの事を否定せずに普通に接してくれた。


 これがティアには初めてで、男女両方恋愛対象に出来るティアにとって初めて好きになった男だった。


「……そう。なら、提案がある」

「なんじゃ?」


 ティアは首を傾げてミリアの話を聞く。


「私もバンが欲しい」

「……ほう?」


 ミリアにとって最初は見たこと無い武器を持つ冒険者でしかなかった。


 だが、巨獣戦から『大増殖』の戦いを見て、目が離せなくなった。


 これが恋だと気付いたのは、その一生懸命な横顔を見たときだった。


 あの時、口移しで回復薬を飲ませたのも既成事実を作るためでもあった。


「お主はバンの武器が欲しいんじゃないのかえ?」


 ティアはミリアの趣味を知っている。それが狙いじゃないかと疑った。


「武器も欲しいけど、それ以上にバンが欲しい」

「なるほどのぉ」

「それで、幼馴染同士、協力し合わない?」

「ふむ?」

「私にはライバルがいる」


 バンの事が好きなのは『魂の解放者』のカナは確定。レン、ロゼ、アウルムは友人以上だろう。4つ子は無い。メイド2名は不明。それがミリアの知っているバンの関係だ。


「2人で協力してバンを落とす」


 悪獣やダンジョンがある世界。種の存続を考えて、この国では一夫多妻も一妻多夫も合法だ。


「ふむ……いいじゃろう! のった!」


 幼馴染達は強く握手を交わした。


 


「待たせたの」

「おまたせ」


 ティアとミリアが2人仲良く戻ってきた。


 2人の様子から察するに、ティアの説得をした訳じゃなかったか。


「ほれ」

「ありがと」


 ティアからジュースを貰い、飲もうとした所、


「バン」


 ミリアが俺にしなだれかかった。


「ゴメン、酔ったみたい」


 酒を飲んでた様に見えなかったが?


「バン、ワシ立ちっぱなしで疲れたわい」


 反対からティアが俺の腕に抱きつく。


「ちょっと2人とも!?」


 2人の行動に俺は慌てて、周囲に視線が集まる。


 一体2人はどうしたというんだ!?


 ヒソヒソと俺達の事で話をしているのも聞こえる。


 ――まずい! 誤解が広がるぞ!


「2人ともはな――」

『皆様お待たせしました!』


 2人に離れるよう言おうとした時、突如照明が消えてスポットライトが一点に集まる。


 スポットライトには解説者が演説していた。


『今宵はお忙しい中、ウルバン領主様の為にお集まりくださり、ありがとうございます!』


「拡声の回路を刻んだ核石を使っておるのぅ」


 ティアが小声で教えてくれた。どうりで声が大きい訳だ。


『これより、ウルバン領主様のご登場です!』


 解説者が場から離れると、スポットライトが動き、1人の男性に光を当てた。


 60歳位の年齢で、白髪白髭の険しい顔をしていた。


『私がディアス・ウルバンだ……今宵は私の誕生パーティに参加してくれたこと、真に感謝する』


 ディアス・ウルバン。


 この『フォルト』の支配者にして、ウルバン領の領主だ。

次回「ディアス・ウルバン」

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