15話 ギフト教
あれから。
『大増殖』は4層までだったらしく、5層からは確認できなかったと『飛脚』の調査で分かった。
あのスライムは特殊モンスターに分類され、核石は研究機関に持っていかれるそうだ。
勿論あの大きさの核石だ。報酬も莫大で、今回迎撃戦に参加した者達に平等に振るわれた。
予想外の報酬に、俺に核石をくれた冒険者達は大いに喜んだらしい。
冒険者といえば『明けの明星』。
ギルドマスターのレオンの使っていた大斧と会員証が1層の奥で見つかり、死亡が確認された。
このまま『明けの明星』は解散するかと思ったが、サブリーダーのガイは生きており、彼がギルドマスターになって今後引き継ぐそうだ。
まあ。あのインテリヤクザならどうにかするだろう。
そして、今回の功労者だった俺は……。
「バン? 聞いてる?」
「……はい」
カナに正座をさせられ、説教を受けていた。
「不倫、したよね」
「いえ、アレはなんと言いますか……」
俺はしどろもどろになって言い訳をするが、
「でも、他の人とキスしたんでしょ?」
「それは俺の意思ではなくてですね……」
そんな俺達の会話を遠めで見ている人達。
「あらら……」
「はあ……」
「あわわ……」
レン、ロゼはそれぞれ呆れた表情で、アウルムはおろおろしながら、
「ギルマスも大変だね」
「……ドンマイ」
「僕も彼氏欲しいな」
「これから面白くなりそう!」
これからの展開を楽しんでいる4つ子に、
「メイド長、いつもああなんですか」
「ノアが知る限り、女性関係になるとこうです」
「そうですか……ギルマス、ファイトっす」
「……エレ?」
「すみません! 気をつけます!」
メイド2人、
「クワーン」
そして、欠伸をして眠たそうにしている1匹だった。
こっちは『白薔薇』の拠点。
「ギルマス! おめでとうございまーす!」
「……は?」
何故か、ミリアが食堂で祝賀会を受けていた。
「何? 『大増殖』の祝勝パーティ?」
「何いってるんですか!? ギルマスの恋の記念ですよ!」
「恋!?」
思わぬ言葉に、ミリアは動揺した。
「いやー、あんなギルマス初めて見ました!」
「青春ですね!」
「もう何処までいったんですか?」
「まさか同盟もそこまで考えて!?」
好き勝手言うギルドメンバーに、ミリアはプルプルと拳を振るわせる。
「貴女達! いい加減にしなさーい!!」
「「「「キャー!!」」」」
怒鳴りながら追いかけてくるギルドマスターを尻目に、追われている方はなんだか楽しそうだ。
「やれやれ」
ベアトリクスは呆れながら祝賀会用の上質な酒を飲み始め、
「全く……ほら、騒がないの!」
メルナは騒ぐギルドメンバーに注意をした。
追っているミリアもなんだかんだで楽しそうだった。
「最近、こんなのばっかり……」
協会長室の執務室でマリナは1人愚痴る。
巨獣襲来に『大増殖』。冒険者の数は減って依頼を回すのに一苦労。
「……おまけに」
ギフト教の事もある。
今回は戦力の貸し出しはタイミングが良すぎる。冒険者の中に内通者がいるのは明らかだ。
流石に『大増殖』は関係ないだろうが、巨獣の件はギフト教が絡んでいると思っている。
でなければ、巨獣は常時眠ったままで、よっぽどの事が無い限り目を覚まさないからだ。
実際に、巨獣が眠っていたであろう場所に、血痕が見つかっている。
「だけど証拠が無い」
ギフト教の目的はダンジョンの独占だ。
天使になる試練場と言っているが、マリナはそんなの信じちゃいない。
ギフト教の本当の目的は何なのか。探りを入れてはいるが、情報が全く入ってこない。
「……もしかして、ダンジョン攻略による言い伝え?」
ダンジョンを攻略した者は願いが叶うという言い伝え。
眉唾物だと思っていたが、もし本当なら……。
「そんなわけ無いか……疲れているわね」
今日はもう休みましょ。
そう思い席を立ち上がった時、
コンコン
扉がノックされた。
……嫌な予感がする。
「どうぞ」
「失礼します」
椅子に座りなおして、入室を許可して入ってきのは、秘書のマリィだった。
「どうしたの? 今日はもう休みたいのだけど」
「こちらを」
マリィが持っている盆には1通の手紙。
封されている蝋にはウルバン領主の判が押されていた。
「……もういや」
マリナはこれから来るであろう厄介事に胃を痛めた。
◇
「ご苦労だったな」
「いいえ」
薄暗い部屋で豪華な椅子に、僧侶の服を着ている女性に跪く男性。
『明けの明星』のギルドマスター、ガイだ。
「その姿も疲れるだろう……元の姿に戻ってよいぞ」
「はっ」
そう言われ、ガイの姿が変わり、妙齢の女性になった。
「相変わらず見事な『変身』のギフトだ」
「ありがとうございます」
「これで、3大ギルドの一角の立場と権力を得た」
「はい。ここから徐々に信者をギルドに加入させる予定です」
「うむ」
「しかし、気になる者が……」
「……ギフトを持つ少年か」
椅子に座る女性は考え込む。
「暫く様子を見よう」
「宜しいのですか?」
「ああ。『聖人』なら、我々の理が分かるはずだ……今は試練場に集中しよう」
「……はっ」
跪いていた女性は立ち上がると、ガイの姿に変わる。
「それでは教皇様……私はこれで」
「うむ」
ガイの姿をした女性は一礼してその場を退出する。
「さて……これからだ」
我々ギフト教が、試練場を突破し、天使になる為には。
5章 完




