14話 迎撃戦②
「畜生がぁ!!」
レオンは恐怖した。
「レオンさん! もう駄目です! 引きましょう!」
「何処に引くんだよ!?」
部下の嘆きをレオンも言いたい位だった。
(逃げれるなら俺だってそうしている!)
しかしモンスターに囲まれ、前方にはアレがいる。
どうあがいてもアレからは逃げられない。
「――ガイ!? ガイは何処に行った!?」
気付けば、ガイが姿を消していた。
元々はあいつの所為だ。
2層と3層のモンスターしか来ないから、1層の奥で待ち構えて手柄を独占しようなんか提案して!
「こんな話、聞いてねえぞ!?」
「た、助け…ぎゃああああ!!」
やがて部下も全滅し、レオン1人が残された。
「ああ……くそくそくそくそおおおおお!!」
レオンは自棄になって斧を振り回しモンスターを倒すが、一向に減らない。
「ぎゃあああああ!!」
やがて、モンスターがレオンに襲い掛かり、後には悲鳴だけが残された。
◇
「……来た」
4層のモンスターが向かってくる。
獣の様なモンスター、空を飛ぶモンスター、鎧のモンスター。
4層のモンスターは様々だ。
バンッ! バンッ! バンッ! バンッ!
俺はライフルで撃ち応戦する。
「空はまかせるっす!」
「マイ!」
「うん!」
エレが『浮遊』で宙に浮かびながらハルバートを振るい、アイ、マイがギフトで援護する。
「私だって!」
メルナも宙を蹴り、すさまじいスピードで飛行するモンスターを斬り落とす。
上空は任せて大丈夫だな。
「オラオラ!!」
ベアトリクスの一閃が複数のモンスターを斬り、剣圧で後方のモンスターを切り刻む。
「はあ!」
「やあ!」
ロゼとアウルムも負けじとギフトを上手く使いながらモンスターを倒していく。
「ふっ」
ミリアが細剣を地面に刺し、地面から氷柱が出て周囲にいたモンスターを突き刺す。
『明けの明星』と『白薔薇』の他のメンバーも善戦している。
今のところ、4層のモンスターの迎撃は順調だ。
だけど、
「何か変」
「やっぱりか」
4層のモンスターは確かに多いが、2層と3層のモンスターに比べたら少なすぎる。
バンッ!
やがて、最後の1体をライフルで撃ち倒し、モンスターが現れなくなった。
「……終わったのか?」
あまりのあっけなさに、誰かが呟いた。
「……終わったんだ!」
「やった! 生き残ったぞ!」
冒険者達が歓喜の声を上げる中、俺とミリアは難しい顔をする。
「……どう思う?」
俺はライフルのリロードを行いながらミリアに聞く。
「まだ終わってない」
だよなぁ。
4層で見た、月が割れて黒い水が出た時、俺は卵が割れて何かが生まれた印象を受けた。
もしもアレが地上に上がってくるなら……。
――
「……待って」
――ン
「おい……何か聞こえねえか?」
歓喜に満ちていた冒険者達の声がピタリと止む。
――ドン
「――全員! 戦闘態勢!」
ミリアの声と共に、全員が武器を構える。
――ドン!
そして、ソレは現れた。
狭い洞窟を押し広げるように壁や天井を削り、蠢くナニカ。
ソレは形が定まっておらず、不定形に形を変える。
俺の第一印象はスライムだ。
そのスライムが触手を伸ばしながら俺達に襲い掛かった。
「た、助けて!」
触手に掴まった冒険者がスライムの体内に取り込まれ、姿を消した。
「アレが原因か!?」
モンスターが少なかったのは、こいつが食ったからだ!
「とにかく近づくな! 遠距離で対応しろ!」
ミリアの言葉に従い、遠距離攻撃を得意とする者達を中心に攻撃する。
アイとマイもギフトで攻撃し、ロゼは『石壁』で進行を防ごうとする。
俺もライフルで応戦するが……。
「ちっ、効果なしか」
スライムにはまったく効いてなかった。
それどころかスライムは触手の一部を切り離し、地面に落とす。
「なにを?」
地面に落ちた触手は形を変え、人型になっていく。
「あ、ああ……」
ソレを見た男性冒険者が目を見開き驚く。
「どうした!?」
「あの顔……うちのメンバーだ!」
「何?」
と言う事は、奥にいた『明けの明星』のメンバーを食って模倣しやがった!
どんどん人型に変わる切り離された触手。
その中には……。
「……レオン」
『明けの明星』のギルドマスターもいた。
「ギルマス……」
「そんな……もう、おしまいだ」
悲嘆にくれる『明けの明星』のメンバー達。
バンッ!
俺は、レオンだった者の眉間を撃ち抜き、ソレは黒い水になって地面に溶け込んだ。
「何しやがる!?」
「気持ちは分かるが、アレはもう人間じゃない!」
激昂して胸倉を掴む冒険者に、俺は怒鳴り返す。
「だからって……」
「戦え! それがあいつらの解放になる!」
俺に言えるのはそれだけだ。
俺は胸倉を掴まれた手を払いのけ、ライフルを連射して人型を倒していく。
「……行くぞ!!」
「「「「おおおお!!」」」」
冒険者達も覚悟を決めたのか、武器を持って人型と戦う。
士気はこれで戻ったが、問題は本体だ。
とりあえず、最大火力をぶち込む。
俺はライフルを納めてリボルバーを抜き、篭手から粒子を出して長大な砲を作る。
「全員!! 撃つぞ!!」
爆音の対処が出来ない冒険者もいるだろうがしょうがない。
俺は『貫通』も使い、引き金を引く。
ドオオオオオンッ!!
弾丸はスライムに直撃して爆発……スライムの体の半分を削った。
だが……。
スライムは残った体で触手を伸ばして、人型を捕まえて体内に取り込む。
「……再生している」
そして、スライムは再生して、再び元の形に戻ろうとしていた。
「はあっ!」
その隙に、ミリアは細剣をスライムに刺して凍りつかせる。
「やったか!?」
「無理! 時間稼ぎしかならない」
やっぱり駄目か。
「バン! アレもう一回出来る?」
「核石がないと無理だ!」
「そんな……」
ミリアの質問に俺は正直に答えると、彼女は絶望の表情を浮かべた。
「……撤退しよう」
俺はミリアに提案する。
「核石さえあれば俺が持つ限り何度でも出来る。ここは撤退するべきだ」
「駄目」
俺の提案にミリアは反対する。
「アレがダンジョンから出たら、もうお終い。際限なく喰らい、大きくなる。そうなるともう手が付けられない」
「じゃあ、どうする?」
「……核石があればいいんでしょ?」
「ああ」
「全員! 今回の討伐で拾った核石を全部出しなさい!」
はい?
「モンスター討伐の報酬が無くなるのは分かるけど、死ぬよりマシでしょ!?」
「ほら」
ミリアの言葉に、ベアトリクスが核石を俺に渡す。
「ギルマスの命令だしね」
メルナも、核石を渡す。
そうやって次々と『白薔薇』のメンバーは俺に核石を渡した。
「バン」
「ほら」
「どうぞ」
「受け取るっす」
「「「がんばって」」」
「みんな……」
俺の仲間も核石を渡す。
「あーあ、今回の探索は大赤字だ」
「ギルマスの仇、取ってくださいっ!」
『明けの明星』のメンバーと参加していた冒険者達も全員核石を俺に渡してくれた。
「……ありがとう」
「礼ならアイツをやっつけて」
「ああ!」
皆の気持ちは受け取った!
俺は核石をすべて篭手に吸収して、長大な砲を作る。
「全員! 耳塞いで口開けろ!」
全員が俺の言った事をやったのを見て『貫通』を込めて引き金を引く。
ドオオオオオンッ!!
凍り漬けのスライムの体を削り取るが、氷を砕き再生しようとしている。
「まだまだ!」
ドオオオオオンッ!!
2発目でスライムの体が少し残り、それでも再生しようと蠢いている。
「これでラスト!」
ドオオオオオンッ!!
最後の1発でスライムの体は完全に消滅し、人間大の大きな黒い核石が残った。
「……終わったー」
篭手も俺もエネルギー切れで粒子が消えて、俺はその場に倒れこむ。
「……お疲れ様」
ミリアが近づき、俺に労いの言葉を掛けた。
「回復薬持ってない? ……もう動けない」
篭手とギフトの連発使用で、疲労困憊でもう動きたくない。
「ええ、持ってるわ」
「頂戴」
ミリアは回復薬を取り出すと、自分の口に含み、
「んん!?」
「「「ああー!!?」」」
口移しで俺に飲ませ、レン、ロゼ、アウルムを驚かせた。
「これは私からのお礼」
ミリアは真っ白な頬を赤らめてはにかんだ。
その笑顔はまさに『白薔薇』の2つ名に相応しかった。
次回「ギフト教」




