10話 浮遊
エレが新しく加わったことにより、彼女との連携を確かめるべく、俺達は4層の転移陣がある関所に向かう。
門番に許可証を見せて転移陣の中に入り、4層の地下室に着いた。
「こんな所があったなんて、知らなかったっす」
エレは呆然と転移陣を見る。
「……所で、なんでメイド服なの?」
そう、エレの服装は何故かミニスカメイドにハルバートと言った、ダンジョンに相応しくない装備だった。
「しょうがないじゃないっすか……メイド長の命令で」
ノア、何時の間にメイド長になったんだ?
「これでもこのメイド服、いい素材使ってるんでそこら辺の鎧より丈夫っすよ」
ノアはメイドに何させようとしているんだ? あと、どうやって作った?
「それじゃあ、再度確認ね」
レンが出発前と同じ説明をする。
「まずは4層で連携の確認ね。フォーメーションは円陣で私とミイ、メイが中心でメイは『鼓舞』で全員にバフを掛ける。アイ、マイが後方で援護。ロゼとアウルムが私達を守りつつ迎撃、バンとグレイ、エレが遊撃ね」
「うち、がんばるっすよー!」
今はノアの監視がない為、素が出てるな。
「じゃあ、行きましょう」
俺達は廃城を出て、森林に向かう。
暫く探索していると、狼型が5体、上空は蝙蝠型が3体のモンスターが出てきた。
「上は任せるっす!」
エレが言うと、宙を浮かび上がり、上空にまるで尾ヒレで泳ぐように向かう。かなり速い。
これがエレの『浮遊』か。
エレによると、空を泳ぐよう移動するらしい。半魚人ならではの使い方だ。
「エレ! アイとマイのサポートもあるから無理するな!」
「了解っす!」
俺はエレンに忠告しながらモンスターにライフルで連射。
「ワン!」
グレイも剣を口に咥えてモンスターに突撃する。
俺とグレイで地上のモンスターを倒した後、上空を見る。
「おわっ!?」
上空ではアイとマイのギフトで援護をして貰いつつも、苦戦しているな。
バンッ! バンッ! バンッ!
俺はライフルでエレを援護する。
「おおー! 凄いっすね!」
モンスターを撃破した後、エレが空から降りて賞賛する。
「うちのギフトで援護できる人がいなくて単独でやっていたので、これならいけるっす!」
「それはよかった」
実際、空からの奇襲は俺かアイとマイしか対応できないし、3層のモンスターのように耐性がある奴は困ったからな。
「『浮遊』は何処まで飛べるんだ?」
「10m位までっす。あと、1人だけで持ち運びはむりっすね」
うーん。核石の節約の為にも空で運んでもらおうと思ったが、上手くいかないか。
「単独ではどう戦っていたの?」
エレの会話に気になったようで、レンが聞いてくる。
「大体上から攻撃するか、低空飛行で斬りつけてましたね」
なるほど、上空からチクチク攻撃か、低空でヒット&ウェイの戦略か。
「……エレにやって欲しいことがあるけど」
「なんすか?」
何か思いついたのか、レンがエレに頼みごとをした。
「9時の方からモンスターが4体来るっす! 猪型!」
「分かった」
ドォン! ドオン! ドオン!
俺はリボルバーを抜き、『貫通』で猪を撃ちぬく。
「次、12時の方向! 飛行型が3体」
「まかせて!」
「……準備できてる」
「……今!」
アイとマイの火の玉と氷柱が飛んできたモンスターを倒す。
「1体はうちに任せるっす!」
残りの1体はエレのハルバートで叩き切った。
「順調ね」
「ああ」
レンがエレに提案したのはこうだ。
『浮遊』で上空から地上を観測し、敵の情報を俺達に伝えるアタッカー兼観測主だ。
エレが見えない場所はグレイに任せ、他はエレに観測してもらえる。
これで完全な情報網ができた。
「モンスターの姿は見えないっす!」
「ありがとう! 降りて休憩して!」
エレがゆっくりと地上に降り、レンが水を渡す。
「どうもっす」
「エレがいて助かるわ」
「いやー、うちも『浮遊』の使い方があったなんて……ただ、空を泳ぐだけのギフトだったんで助かります!」
エレもギフトの使い道を模索していたようだった。
「さて……そろそろ時間だし帰りましょうか」
時計を見ると、5時を回っていた。
今日は日帰りの予定だからいい頃合だな。
「うし、帰るか」
「上空偵察は任せるっす」
「ワン!」
ほんと、頼りになる斥候だよ。
俺達は廃城に戻り、地下室の転移陣に入り地上に戻る。
「お帰りなさいませ」
街に戻り、家に帰ると、ノアが出迎えてくれた。
「ノアの部下が気に障るような事はしませんでしたか?」
何時からエレはノアの部下になったんだ?
「メイド長! うちはちゃんと役立ってました! ねえ皆さん!?」
「うん。役立ってたよ」
「助かった所もあったし」
全員がエレをフォローする。
「皆さん……ありがとうっす!」
「まあいいでしょう……所で」
ノアの眠そうな目が見開き、エレを凝視する。
「言葉遣いをちゃんとしろと言ったはずですが?」
「……あ」
エレは完全に忘れていたらしい。呆然とノアを見る。
「もう一度、メイドとして勉強しなくてはなりませんね……皆様、失礼します」
「ア、アレは……アレだけは嫌ですー!!」
エレはノアに引きずられながら、悲鳴を上げて玄関を後にした。
「アレって……何されるんだろう?」
「……知らないほうがいいわよね」
数時間後、死んだ目をしたエレがノアと丁寧な言葉と仕草で給仕をした。
何があったんだ? ほんとに
次回「白薔薇」




