4話 魂の解放者
あの後、廃城を探索して地下の転移陣を見つけた。
円状に並べられた石に幾何学模様の描かれた転移陣の中に入ると、転移陣が光り、気付けば同じ様に石が円状に並べられた草原にいた。
草原からは『フォルト』の街並みが見える。
「街の近くにこんな場所があったなんて……」
「……とにかく、帰りましょ」
俺達は街に戻り、4つ子とパーティーを解散する。
ギルドを作るかは、後日話し合うことになった。
俺達は誰も喋らず、家に着く。
「おかえり」
「……ただいま」
「……どうしたの?」
カナは俺達の様子に気付いたのか、怪訝な様子で聞く。
「なんでもないよ。ちょっと疲れてさ」
「そう……ノアお姉ちゃんの手伝いしてくる」
カナは心配そうに俺達を見るが、何も聞かずにノアの手伝いに行った。
「談話室で話そうか」
「そうね……」
俺達は談話室に行き、椅子に座る。
「……どう思う?」
ロゼが切り出すが、誰も答えない。
「考えている通りじゃない?」
「じゃあ、オレ達は人殺しをしていたってか!?」
レンの言葉に、ロゼが怒鳴るが、誰も言えなかった。
「他の冒険者は知っているのか?」
「知らないでしょうね……上層部以外は」
色々な情報が入ってくる上層部なら知っててもおかしくないか。
「これからどうする?」
「「……」」
ロゼの問いに、レンとアウルムは答えられなかった。
「俺は探索するぞ」
「バン!?」
俺の言葉に、レンは驚愕する。
「貴方、自分が何を言っているのか――」
「俺の話を聞いてくれ」
レンの言葉を遮って、俺は帰りに考えていた仮説の説明を始める。
「俺の考えはこうだ……多分、モンスターは元人間や動物だ」
「なら――」
「だけど、何かの原因でダンジョンに取り込まれてモンスター化した。廃城のモンスターを見たろ? ある程度意思のあるモンスターだったが、俺達が指輪を渡した結果消えた」
「……それで?」
「この屋敷の幽霊騒動を思い出してみろ。カナが言うには消えたらしい。それと似てないか?」
「……なるほど。私達はモンスターになった人達を解放していたと?」
アウルムが察して俺の仮説を引き継いだ。
「多分、核石で実体化した魂が自我を持たずに襲い掛かってくるんだ」
「……オレ達は殺しているんじゃなくて、魂をダンジョンから解放しているって訳か」
「仮説だけどな」
じゃないと、4層の廃城やモンスターの件が説明できない。
まあ、そう思わないとやっていけないてのもあるが。
しかし再出現するって事は、相当の数の魂が囚われているのか、解放出来てないのか。
いずれにしても、モンスターになってない時には安らぎがあると信じたい。
「遺物も案外、ダンジョンに取り込まれた武器や道具なんだろうな」
「なるほど……」
俺の説明が終わり、全員考え込む。
「そう思うことにしましょう」
「レン?」
何かを決意したようにレンが言う。
「私達はモンスターを倒していく、核石を手に入れて囚われている人達を解放する。私達はそれで稼ぐ。一石二鳥じゃない」
「そうですけど……」
アウルムは複雑そうにレンを見る。
「そうだな……真相は誰にも分からない。そう思ったほうがいいな」
ロゼも決意を固めたようだ。
「そうですね……今までと同じ様にやっていきましょう」
アウルムも覚悟を決める。
「なら、私達はこれからもダンジョンを探索する。生きる為と、ダンジョンに取り込まれた人達を解放するために!」
「「「おー!」」」
俺達が決意を固めて拳を上げる。
「……どうしたの?」
カナが談話室に来て俺達の行動を見ていた。
「な、なんでもない……」
「そう……元気でたね」
「そうか?」
「うん……ご飯だよ」
「分かった……行こう」
俺達は飯を食いに食堂に向かった。
◇
数日後。
「それで話と言うのは……」
アイ達4つ子パーティーを家に招き、食堂で対面した。
「まず、モンスターについてだけど――」
レンが代表して、モンスターの正体についての仮説を話す。
「それで、私達はこれからも探索を続けるつもりだけど、貴女達はどうする?」
「……」
アイ達は目配せして確認しあう。
「そういう理由なら、私達も探索を続けます。母も捜したいですし」
「分かったわ。それで本題だけど……」
「はい。ギルドの件ですね」
アイ達は姿勢正しく聞く。
「私達は貴女達とギルドを組みたいと思っているけど……どうかしら?」
「私達も同じ事を思ってました」
レンの話にアイ達は即答した。
「決まりね……これからよろしく」
「よろしく」
レンとアイが握手する。
「この家の部屋は空きがあるから使っていいわよ」
「本当ですか!? 助かります!」
やったー! とアイ達が喜ぶ。
「安宿で4人で一部屋使っていたのでありがとうございます!」
「そ、そう……」
ギルド創設よりも喜んでいる4つ子に、レンは若干引いていた。
「それじゃあ、ギルドマスターは……」
レンかアイと俺が言おうとした時、
「ギルドマスターはバンに決まってるじゃない」
レンは当然の様に言い、他のメンバーも頷く。
「俺!?」
「当然じゃない。巨獣殺しの英雄さん」
アイがからかい気味に言う。
「それはやめて!」
まじで嫌だ!
「と言う訳で、ギルドマスターはバンね」
「……わかったよ。だけど戦闘指揮はレンがやれよ」
「わかってるわよ」
これで一応話し合いが終わり、アイ達が引越しの準備に戻る。
俺達は協会に行き、核石の換金とギルド結成の申請を行う。
「では、こちらに記入を」
そう言われ、渡された書類に名前やサインを書き込んでいき、ある欄で筆が止まる。
「どうしたの?」
レンが書類を見て、ああ、と納得する。
「ギルド名、考えてなかった……」
「そうね……」
4つ子達もいないし、話し合ってない。どうしたもんか。
「書類の持ち帰りは出来ますか?」
「はい。大丈夫ですよ」
「すみません。後日持ってきます」
「はい……すみませんが、ギルド申請の場合、全員来て貰わないといけない規則でして」
そうだったのか。
「分かりました。また伺います」
俺達は家に戻ると、4つ子達は引越しを終えて食堂で昼食を取っていた。
「ほかえり」
「ただいま……カナ、はしたないぞ」
パンを頬張りながら喋るカナを嗜める。
「ゴクン……どうだった?」
「ああ、それな。実は――」
「とりあえず、昼食をどうですか?」
ノアがご飯をトレーに乗せて持ってくる。
「ああ。食べながら話そう」
俺は昼食を食べつつ協会での経緯を説明した。
「そういうことね」
「協会に何時行ける?」
説明が終わり、俺は全員に聞く。
「何時でもいいわよ」
「同じく」
「私も」
「ノアも大丈夫です」
「「「「私達も」」」」
「なら、明日行こう」
俺は登録の日時を決め、次に進む。
「後は、ギルド名なんだけど……」
これがなかなか決まらなかった。
「『英雄団』は?」
「絶対嫌だ」
「『バンと愉快な仲間達』」
「ふざけてる?」
あーだこーだと意見を言い続る。
「結局オレ達の目的はダンジョン攻略だ」
「まあ、そうだけど……」
唐突にロゼが初心に帰って言う。
「ダンジョンの攻略で稼ぎながら囚われた人を解放する。それにあやかった名はどうだ?」
ダンジョンあやかった名ね……。
「じゃあ、これはどう?」
カナがギルド名を言う。
「いいな、それ」
「カナちゃん、センスあるわ」
「オレもいいぞ」
「私も賛成です」
「ノアもいいと思います」
「「「「賛成!」」」」
翌日。
メンバー全員でギルド結成の手続きを行い。承認された。
「はい。これでギルドの結成の手続きが終わりました。おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「『魂の解放者』のご活躍をお祈りいたします」
『魂の解放者』。
それが、俺達のギルド名だ。
次回「同盟」




