3話 4層
翌日。
レンのマッピングで四つ子の母親の手掛かりを探しながら進み、遂に3層の終わりに着く。
「ここからどうする?」
このまま引き返すか、4層に行くか。
「俺は行きたい」
「オレもだ」
俺とロゼは4層行きを提案する。物資も体力も大丈夫だからな。
「わ、私は反対です。今回は連携の為に探索していた訳ですし」
アウルムは反対か。まあ、特殊モンスターに出くわすことが多かったからな。
「ワン!」
グレイも反対で、アウルムの横に並ぶ。
「……貴女達は?」
レンは4つ子に聞く。
4つ子は円陣を組んで話し合って、
「「「「儲けも出てるので、どちらでもいい」」」」
結局こっちに判断を求めた。
「じゃあ、後はリーダーだな」
俺はレンの眼を見て聞く。
「……そうね。行きましょう」
レンは4層行きを決めた。
「だけど、浅い所まで。アウルムとグレイもそれでいいでしょ」
「……それなら」
「ワン」
アウルムとグレイも不安そうにしながらも反対はしなかった。
「貴女達もそれでいい?」
「はい」
代表してアイが頷く。
「それじゃあ、入りましょう」
こうして俺達2パーティーは4層に続く横穴に入っていった。
◇
「ここが4層ですか……」
3層の出口は崖の上に通じていた。
崖下を見下ろすと、構造は3層と同じ森林だが、上は満天の星と月がが広がる夜空だった。
地上と違い、月は1つだが満月で辺りを薄暗く照らしている。
「ランタン出すから待ってて」
レンが背嚢からランタンを出し、火を点ける。
「さて……目指すならあそこだよなぁ」
森林の奥、最奥と思われる場所には廃墟の城があるのが見える。
「……あの廃城が5層の入り口って聞いた事がある」
どこかで聞いたのか、マイが情報を喋った。
「僕達はどうする?」
「森林まで行きましょう」
ミイの疑問にレンが提案する。
俺達は反対することなく、崖から斜面を下って降りる。
「ここから注意ね」
レンの発言の通り、森林は静まり返っており、何が出るか分からない。
俺達はグレイを先頭に森林を歩く。
「あれ?」
すると、マッピングしていたレンが疑問をだす。
「どうした?」
「どうも……4層は1本道みたい。ここまで真っ直ぐに廃城に向かっているわ」
レンがかいた地図を見ると、2層、3層と違い、迷路状になってなく、真っ直ぐ1本の線が描かれていた。
「……なんか気味悪いな」
まるで、あの廃城に誘われているみたいだ。
「グルルルル!」
すると、グレイが唸り声を上げて森林の方を見る。
「メイ、『鼓舞』を」
「はい!」
メイが戦旗を振り、俺達の力を底上げする。
「――来たみたいだ!」
俺はライフルを構えてグレイの目線の先に標準を合わせる。
――ガサッ!
森林の茂みから出てきたのは、見た目はこれまでと同じ影法師の4足のモンスターだった。
見た目はデカい猪に似ている。鋭い牙と突進力で俺達に襲ってきた。
バンッ! バンッ! バンッ! バンッ! バンッ!
俺はライフルで連射するが、当っても勢いが止まらない。
「『鉄壁』!」
アウルムが咄嗟に『鉄壁』を使い、モンスターの突進を止める。
「はあっ!」
ロゼが槍をモンスターの首に刺して、ようやく黒い霧になりサッカーボール大の核石を落とした。
「まだ来るぞ!」
今度は、上空から人間大の蝙蝠型のモンスターが4匹襲い掛かる。
「「まかせて!」」
アイとマイが『炎術』と『氷術』で火の玉と氷柱を作りモンスターに撃つ。
バンッ! バンッ! バンッ! バンッ! バンッ!
俺も空のモンスターに向かってライフルを撃つ。
モンスターは1匹は火達磨になり、もう1匹は氷柱に貫かれ、残りは俺の銃弾で地面に落ちて黒い霧になり核石を残した。
「2種類いるのか……」
これまでの階層は、特殊モンスター以外は1種類づつしかいなかったから、同時複種類戦闘は初めてだった。
「あの猪は硬かったな」
「ああ。今度は『貫通』を使うよ」
猪や熊は頭蓋骨が硬いって聞くし、獣型はギフトを使って対応していくしかないだろ。
「ここからどうする?」
「……引き返しましょう。アウルムも怪我したし」
アウルムはモンスターの突撃を受け止めた時怪我したらしく、ミイに『治癒』で怪我を治してもらっている。
「……待って」
レンの発言に、マイが待ったをかけた。
「どうしたの?」
「……4層には地上に出入り出来る転移陣がある」
「転移ですって!?」
マイの発言にレンが驚愕する。
「昔、『転移』のギフト持ちが設置したらしい。私達も使える」
それが本当なら、今後のダンジョン探索の時間短縮になる。
「……なんでそんな事知ってるの?」
確かに、4層は初めてのはずだし、5層の入り口の件も知っていた。どこから聞いたのだろう。
「私の彼氏。冒険者」
「「「はああああ!?」」」
マイがピースしてアイ、ミイ、メイが驚く。
「聞いてないんですけど!?」
「言ってないから」
「僕達に抜け駆けした!」
「ふふん」
「今度逢わせて! そして他も紹介して!」
4つ子が姦しく喋っているが、今はそれ所ではない。
「確かな情報なの?」
レンがマイに問い質す。
「ええ……彼氏は『明けの明星』のメンバーだから」
なるほどね、3大ギルドのメンバーなら納得だ。
レオンは好かんが、実力はあるからな。
「でも、そんな話聞いたこと無いが?」
ロゼの言うとおり、転移陣の存在があれば他の冒険者も利用しているはずだが。
「『明けの明星』と傘下のギルドしか知らない」
……なるほど、情報の独占ってわけね。『明けの明星』のガイならやりそうだ。
「事情は分かったわ……場所は?」
「あそこ」
マイが指差したのは……廃城だった。
「あの地下に転移陣がある」
俺達はモンスターを倒しながら道なりに進み、廃城の前に立つ。
廃城は石積みの壁は崩れ、城も穴が開いている所が所々ある。
「なんか幽霊とか出そうだな……」
「「「やめて」」」
幽霊が苦手なレン、ロゼ、アウルムが俺に文句を言う。
「行きましょう」
俺の発言で怖がったレンに代わって、アイが言う。
4つ子でパーティーを組んでた時は長女のアイがリーダーだったらしい。
ちなみにマイが次女、ミイが三女、メイが四女らしい。
グレイを先頭に廃城の中を歩く。
ボロボロの絨毯に、落下したシャンデリア、破れた絵画等、いかにもな場所だ。
「グルルル!」
廃城の廊下を探索中、グレイがモンスターを見つけた様で唸り声を上げる。
俺達はそれぞれ武器を構える。
すると影から出てきたのは……ドレスを着たような見た目の人型モンスターだった。
顔は分からないが、輪郭は女性のようだ。
モンスターは俺達を見たように感じた後、後ろを振り返り廊下を歩く。
そして立ち止まり、俺達の方を振り向く。
「……付いて来いってか?」
「罠じゃないの?」
「あんなモンスター見たこと無い」
モンスターはこっちを見ている。
「……どうする?」
「付いて行こう」
アイの問いに俺が答える。
「……根拠は?」
「勘」
レンに聞かれるが、なんとなくだが、その方がいい様な気がした。
「……はあー。分かったわよ。この面子なら大丈夫だろうし。皆いい?」
レンの言葉に誰も反対しなかったので、俺達はモンスターに近づく。
モンスターは再び歩き始め、俺達は続くと、とある部屋に着いた。
モンスターは扉をすり抜け入っていく。
俺は扉を開けてはいると、そこは元々寝室なのだったのだろう。
ボロボロだが、天蓋付きのベッドや大きな鏡、化粧台もある。
モンスターは化粧台の前に立つと、引き出しを指差した。
「……開けろって事かしら」
「だな」
ロゼが開けようとするが……。
「開かないぞ?」
引き出しは開かなかった。
「おかしいな……鍵穴はないのに」
ロゼが化粧台を見回しながら確認しているが、開かない。
「じゃあ俺が」
俺がロゼに代わって引き出しの取っ手に手をかけて引くと、
「開いたぞ?」
引き出しは普通に開いた。
「何でだ?」
「さあ?」
俺に聞かれても。
「……中は?」
あ、そうだった。
引き出しの中を見ると……青い宝石が付いた金の指輪が入っていた。
宝石の大きさといい、装飾といい、売ればかなりの値になりそうだ。
モンスターの目的はこれか。
俺は指輪を取ると、モンスターに指輪を渡す。
モンスターは指輪を受け取ると、両手で大事そうに握り締めた後、黒い霧になって消えて核石だけが残った。
「……」
俺達はその光景を黙って見ているしかなかった。
「……なあ、モンスターってなんなんだろう?」
俺の問いに、誰も答えることが出来なかった。
次回「魂の解放者」




