1話 4つ子
5章の始まりです
「帰ってきたなー」
「楽しかった」
「あっという間だったわね」
「そうだな」
「……うう」
「アウルムさん、しっかりして下さい」
「ワン!」
俺達はアレト街でバカンスを楽しんだ後、『フォルト』に帰ってきて、今は列車のホームにいる。
「さて、家に帰りましょうか」
俺達はバスに乗って家に帰り、荷解きをする。
「今日はゆっくりして明日協会に行きましょう」
「賛成」
レンの提案に全員賛成して、旅の疲れを家で癒した。
翌朝。
「確認しました」
俺達は協会に行き、受付のカルラに受領書を渡して報告を完了する。
「所で、ベアトリクスさんから伝言を聞いています」
ベアトリクスから?
「「暇なら訓練場に来てくれ」だそうです」
「いるんですか?」
「ベアトリクスさんは毎日来てますよ。戦うのが好きですから」
ベアトリクス、バトルジャンキーだったのか。
「分かりました」
カルラに報告を済ませて、俺達は訓練場に向かう。
訓練場の観覧場に着くと、
「おらあああ!」
「「「「きゃああああ!?」」」」
ベアトリクスに、4人の女性が吹き飛ばされていた。
「お、バンじゃねーか!」
ベアトリクスが俺達を見つけて手招きする。
俺達は観覧場を降りてベアトリクスの元に行く。
「カルラさんから呼ばれて来たけど?」
「ああ、この前アレト街でギルドの話をしただろ?」
「ああ。新しいパーティーの」
「そこに寝転がっているのがそいつらだ」
ベアトリクスは剣を倒れている4人組に向けて言った。
「どうだ?実力は保障する。入れてギルド作れよ」
「待ってください」
レンがベアトリクスに待てと言う。
「ああ? たしか荷物持ちの……誰だっけ?」
「このパーティーのリーダーのレンです!」
「ああそうだった……それで?」
ベアトリクスはどうでもよさそうにレンに聞く。
「……私達はパーティーの件は会ってからって決めているんです。まず話をさせて下さい」
ベアトリクスの態度にレンはイラっとしたが、我慢して言う。
「ま、それはそうだな…おい、起きろ!」
ベアトリクスは倒れている4人に回復薬を掛けて無理やり起こす。
「うう……もっと優しく起こしてください」
「甘ったれんじゃねえ!」
ベアトリクスが怒鳴り、4人は渋々起き上がる。
「前に言ってたパーティーだ。挨拶しろ」
ベアトリクスが4人を前に出して自己紹介させる。
4人の年齢は俺より少し10代後半位。全員スレンダーな長身の青髪に青眼。4人とも同じ顔をして見分けがつかない。唯一、髪の長さが違う位だ。
「アイです」
「マイです」
「僕はミイ」
「メイです……見ての通り4つ子です」
長髪がアイ、ボブカットがマイ、短髪がミイ、ポニーテールがメイか。
「パーティーリーダーのレンよ」
「バンです」
「カナ」
「ロゼだ」
「アウルムです」
「ノアといいます」
「ワン!」
「この犬はグレイです」
「じゃ、自己紹介も終わったな。戦るか」
お互い自己紹介を終わらせた後、ベアトリクスが戦いをしようと言った。
「なぜそうなる?」
「そっちのほうが分かり合えるだろ?」
マンガじゃないんだから。
「……本音は?」
「戦うところを見てみたい!」
本能に素直だな。
「で、どうする?」
「「「「「「「いやいやいやいや」」」」」」」
全員首を横に振った。
「ちぇ、つまらん」
「ワン!」
ベアトリクスはむくれていたが、グレイがどうも戦いたいらしい。元気だね。
「グレイが戦いたいって。相手してくれない?」
「……犬と?」
はんっ! とベアトリクスはグレイを馬鹿にした。
「ガウ!」
「馬鹿にするな!ってさ。実力は剣じゃ俺より上だぜ」
俺の言葉を聞くと、ベアトリクスの態度が豹変。
「……面白えじゃねえか」
「ガウ!」
グレイもやる気を出して訓練場に置いてある模擬剣を咥えて、ベアトリクスの前に立つ。
「おらああああ!」
「わうううう!」
こうして1人と1匹が壮絶な戦いを始めた。
「……今のうちに話しましょうか」
「「「「そうですね」」」」
ベアトリクスとグレイの戦いを横目に、パーティー同士の話し合いが行われる。
「私達のパーティーは前衛がアウルムとロゼにグレイ、遊撃がバン、指揮と支援が私でやっているわ」
「ノアさんは何を?」
4つ子の1人が聞く。ええと、長髪だからアイか。
「ノアはダンジョンに入らず、拠点の管理をしているの」
「そうですか」
「私達は3層まで攻略できたけど、貴方達は?」
「私達は2層まで攻略しています。けど3層は途中で……」
冒険者の話を聞くと、3層から中級冒険者扱いになるらしい。
「何時もあのでかいモンスターに手も足も出ずで、ベアトリクスさんに訓練してもらってますけど……」
「なるほどね。使う武器は?」
「私達はギフトで戦います」
「……ギフト使いね。珍しいわ」
「ギフト使い? ギフト持ちと違うのか?」
「ああ、バンは知らないのね」
俺の疑問にレンが答える。
「ギフトは武器の補助として戦うのが主流だけど、戦闘用とか補助用が強くて、ギフト寄りの戦い方をする人がギフト使いよ」
なるほど。強いギフトだと武器になるのか。
「ちなみにギフトを聞いても?」
「……3人ともいい?」
「ああ」
「ええ」
「うん」
「大丈夫です。私は『炎術』、マイは『氷術』、ミイは『治癒』、メイは『鼓舞』です」
「『鼓舞』?」
「『鼓舞』は仲間の力を一時的に増幅させます。だけど戦旗を持っておかないと出来ないんで戦闘は無理です。あと人数が多いと効き目が弱くなるんです」
だから、アレド街でベアトリクスが大人数は嫌だといったのか。
「ありがとう。私達も戦い方を教えるわ。いいわよね」
「ああ」
「いいぞ」
「はい」
ギフトを聞いたからな、こちらも情報を渡さないと。
「バンは銃って言う武器で戦うわ。簡単に言うと高速で矢を連発できる武器って思えばいいわ」
「はい。バンさんの事は知っています。巨獣殺しの英雄さん。私達も後方部隊にいたんです」
そうなのか。ならギフトとか篭手の事も知っているな。
「俺を英雄って言うのやめてもらえませんか? あと、敬語もいいですよ」
「そう? なら遠慮なく。謙虚なのね」
素が出たのか、他人行儀がなくなり俺にフランクに話しかける。
その後パーティーの武器とギフトを説明してお互いに情報交換し、後日合同でダンジョン探索をしてギルドを作るか決めることになり、話が終わった。
……そして、こっちも。
「いやー強かったなワン公」
「ワン!」
あ、勝負してたの忘れてた。
「どうだった?」
「クゥーン……」
「そうか。負けたか。でも次があるさ!」
「……ワン!」
「そうだ! がんばれ!」
「実際強かったぞ。何回かヒヤッとした事があったからな」
「ワンワン!」
「次は勝つ! だってさ」
「そうか! いつでも待っているぞ!」
「……一つ質問いい?」
「言わなくても分かるわよ……私達も分からないんだから」
「そう……ベアトリクスさんが素直に受け止めているのもすごいけど」
ちなみに、これを機にグレイが定期的に散歩に加えてベアトリクスと戦うのが慣例になった。
次回「合同探索」




