7話 アシト山
翌朝。
「こっちだ」
フォルンの案内の元、俺達はアシト山に向かう。
カナは旅館で留守番だ。
アシト山に向かう道は舗装され、隣りの道はトロッコで運搬が出来る様にレールが敷かれている。
暫く道なりを歩くと、
「着いたぜ」
そう言ってフォルンが指差したのは、レールが敷かれた坑道の入り口だった。
「中は入り組んでいるから、迷わない様にアタイに付いて来な」
フォルンは腰に付けた核石を光らせるランタンを翳して先頭を進む。
俺も背中のホルスターからライフルを抜いてフォルンの後に続く。
するとグレイがフォルンの前に出た。
「ワン!」
「フォルン。グレイが先頭を歩くってさ」
「はあ? まあ、いいけど」
フォルンは怪訝な顔をするが、了承して先頭を譲る。
そうして坑道に入って見ると、蒸し暑く薄暗い。
「場所によっては足場が悪い道もあるから注意しろよ」
グレイを先頭に、俺達は狭い坑道を進む。
暫く道なりに進み、広い場所に出た。ここが採掘場らしい。
「ワンワン!」
「来たみたいだ」
グレイが察知し、俺達は円陣を組み武器を構える。
「フォルンは私と真ん中に!」
レンがフォルンを円の中心に押し込む。
そして出て来たのが、腕が蟷螂の鎌の様になっている、子供サイズの蟻に似た虫だった。しかも多い。
こうデカいと気持ち悪いな。
バンッ!
ライフルで蟻の頭を撃ち、蟻が絶命する。
案外殻は柔らかいな。
「ロゼは『石壁』で周囲を覆って! 蟻の進行を制限する!」
「分かった!」
ロゼは石壁を三方に出して、蟻の信仰を制限しようとしたが…。
「ダメだ! 登ってくる!」
そこは蟻と同じか、壁を登って俺達の方に向かう。
バンッ! バンッ!
「ロゼ! 蟻が入らない様に石壁を小屋の様に出来ないか!?」
俺はライフルを連射しながらロゼに聞く。
「出来るが、万が一逃げ場がなくなるぞ!」
「外は俺とグレイ、アウルムでなんとかする。ロゼは小屋の前で防衛してくれ! 万が一は後ろから石壁を崩して逃げろ!」
「分かった!」
「グレイ、アウルム、いけるな?」
「ワウ!」
「任せて下さい!」
いい返事だ。頼もしい。
バンッ! バンッ! バンッ! バンッ!
「ワオーン!」
ロゼが石壁で簡易的な小屋を作る間、3人で蟻を倒し続ける。
「出来たぞ!」
「 よし、そのまま防衛を頼む!」
レンとフォルンを小屋に入れて、ロゼに防衛を頼む。
とにかく数が多い。これは結構手間取る。
バンッ! バンッ! バンッ! バンッ!
俺もライフルで撃ち続けるが、レバーアクションの弊害で弾数は多いが乱射出来ないな。
とにかく、狙いを付けて撃ちまくる。
「ワウ!」
グレイも頑張って蟻の頭を切り落とすが、一向に減らない。
「一体何匹いるんだ!?」
俺はぼやきながら、ライフルの銃弾が切れた。リロードには時間が掛かるのでライフルを背中のホルスターに戻してリボルバーを抜く。
バンバンバンバンッ!
使っている銃弾はライフルと同じなのでちゃんと効くな。射程が短くなったけど。
「任せください!」
アウルムが、昨日フォンルから作ってもらった剣で蟻を切り裂く。
「すごい! この剣よく切れるし、盾も鎧も軽い!」
「この槍もよく手になじむな!」
アウルムとロゼはフォルンに頼んで装備を一新してもらっている。性能はよさそうだ。
「アウルム、少し頼む!」
「はい」
俺はアウルムの後ろに隠れてリボルバーをリロード。本音を言えばライフルもしたいが、時間がない。
ライフルは弾倉型にしたかったが、嵩張るからなぁ。
バンバンッ!
俺はリロードを終えて蟻の大群に向かって撃つ。
「ロゼ、『石壁』で蟻1匹通れる位道を作れるか?」
ようやく数も減ったきた所で、ある事を思いついたのでロゼに聞く。
「出来るがどうするんだ? 意味ないぞ」
「考えがある」
「分かった」
ロゼが『石壁』で道を作る。
長く狭い道に蟻は中に入り一直線で進行。
ドォン!!
俺は『貫通』で蟻の先頭を撃つ。
赤い光弾はそれでも威力を落とさず、後続の蟻達を貫く。
これで結構数が減っただろう。
こうして、俺は達蟻を駆逐していった。
「うへぇ」
「ほら頑張って」
俺達は蟻を解体をして、殻と鎌の腕を取る。
2つとも武器と防具の素材になり、売れるらしい。
レンの『収納』で嵩張る事はないが数が多い。あとグロい。
粗方解体も終わった所で休憩を挟み、俺はライフルのリロードに専念する。
「威力はスゲーが回数制限があるのが難点だな」
リロードの行為を、見ていたフォルンがポツリと漏らす。
「まあ、そこはしょうがない」
ゲームの様に、撃ち続けるなんて無理だ。
「そこさえクリアできたらなー」
「フォルン、約束」
「分かってるよ。広めないけど、自衛の為なら作ってもいいだろ?」
「まあ、いいけど…銃弾はどうするんだ?」
「そこなんだよなー」
フォルンは腕を組み上を見上げながら考える。
「なあ、銃弾アタイに譲ってくれない?」
「嫌だ」
「ケチ」
フォルンが口を尖らせながら文句を言うが、正直、銃弾は何処か来て、何処まで使えるか分からん。
スピードローダーも銃弾を取った時点で消えたし、撃ってない銃弾もリロードした時に消えていた。フォルンに渡した時点で消えるかもしれん。
「ま、おいおい考えるか」
「そうしてくれ」
俺はライフルのリロードを終えて、ホルスターに収める。
「そろそろ行くわよ」
休憩を終えて、俺達は坑道を進む。
「そろそろ分かれ道だ」
フォルンの言うとおり、レールが三叉路に別れた道に出た。
「どっち行く?」
「ワン!」
グレイは右の道に向かって吼える。
「こっちにいるのか」
「なら行きましょう」
「おい、その犬を信じていいのか?」
フォルンは怪訝な顔をして聞く。
「大丈夫だ。グレイは鼻と耳が利くし、賢い」
「ワン!」
「グレイも任せろ! と言ってるぞ」
「いや、犬の言葉分からないし…」
フォルンは微妙な顔を浮かべる。
「右の道はどうなってるんだ?」
「あ、ああ。右は一番奥まで一本道で、広場に出る」
「ちなみに、他の道は?」
「入り組んでて迷路みたいになってるし、狭いな」
なるほど、あの蟻の大きさなら、母体は広い場所に居るしかないか。
「行こう」
俺達は右の道に向かい進んだ。
そうして時折現れる蟻を倒しながら、狭く長い道を進むと、大きな広場出た。
その中心に今まで見た蟻の3倍は大きい、腹の膨れた蟻と、その周囲に無数の卵。
「GYAAAAA!!」
母体は俺達を見て大声を上げる。
「仲間を呼ばれたわ!」
ドォン!!
俺はリボルバーを抜いて『貫通』を使い、母体の頭を吹き飛ばす。
「これで終わりだ。後は…」
「ここに群がる蟻と卵を討伐するだけですね」
「私はフォルンと卵を潰していくわ! 後はお願い!」
「アタイも!?」
レンの指示にフォルンは驚愕する。
「卵だからいいでしょ!?」
レンはフォルンに短剣を投げ渡して言い放つ。
「…あーもう分かったよ! あとで礼をしろよな!」
フォルンは自棄気味に言ってレンと卵の処理に掛かる。
「ならオレは『石壁』を使って出入口を塞ごう」
「俺は『貫通』で一掃していく。アウルムはリロード時のタンクを頼む」
狭い道だから、1体づつしか来れないだろう。
「任せてください!」
俺達は広場の出入口から、ガサガサと音が聞こえてくる道を睨みつけながら武器を構えた。
次回「バカンス」




