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ダンジョン&ガンマン  作者: コウ
4章 温泉と鍛冶師
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4話 鍛冶師

 温泉に入った後、豪華な食事を胆嚢して、フカフカのベッドで寝た翌日。


 俺達は協会に来ていた。


「しかし……小さいな」


 見た目、何処にでもある商店だ。


「ダンジョンのない協会はこんなもんよ」

「ワーカーの依頼の斡旋が主だからな」

「なるほど」


 レンとロゼの説明に納得する。


 中に入ると、掲示板とカウンターがあるだけの質素な部屋だった。


 掲示板の方を見ると、殆ど依頼者は貼ってない。よくて下水道の清掃や、荷物運びの依頼ばかりだ。


「いらっしゃい」


 人がいない部屋の、カウンターにいた受付の老婆が話しかける。


「私達はアシト山の悪獣討伐の依頼で来たのだけど」

「ああ、あんた達かい」


 受付はそう言うと、地図を出して俺達に見せる。


 「ここがアレト街。でここがアシト山だよ」


 受付が地図を指でなぞりながら説明する。


「バスが出ているから直ぐに着くよ。で、問題の悪獣の方だが、坑道に多数の蟻型が目撃されている」

「蟻型となると、母体がいるわね」


 虫の蟻と一緒で女王蟻みたいなのがいるのか。


「近いうちに行ってみるわ」

「頼むよ。この街は温泉と鍛治で成り立ってんだ。商売上がったりだよ」


 俺達は協会を出て、アシト山行きのバス停に向かおうとした時、


「ちょっといいか!?」


 協会の出口で、少女が待ち構えていた。


 身長は俺より低く、身体の凹凸もない。赤い眼と赤い髪を三つ編みにして、オーバーオールに似た服を着ている。何より特徴的なのは尖った耳だろうか。


 だが、エルフの様に長くはない。なんの種族だ?


「ドワーフの人が何の様ですか?」


 俺の疑問にレンが少女に尋ねて知った。


「噂であんた達がここに来ているって聞いた。そこのアンタに用があるんだ」


 ドワーフの少女が指差したのは、俺だった。


「…俺?」

「そう、あんただよ! あんたの待っている武器にアタイは用があるんだ!」


 どうも、少女が指差したのは俺ではなく、腰のホルスターのリボルバーらしかった。


「はあ、とりあえず貴女は?」


 少女の偉そうな態度に大人の対応で聞く。


「アタイはフォルン! 鍛冶屋『火鉄屋(てっかや)』の鍛冶師だ」

「俺はバンです…それで、この武器にどんな用が?」


俺はホルスターに収まったリボルバーを叩きながら聞いた。


「アタイはこの前の巨獣討伐で武器の卸売りを担当していたんだが、その時アンタの噂を聞いてね。なんでも奇妙な武器を使うとか」


 それで俺に接触してきたのか。


「頼む、アタイにその武器を調べさせてくれ!」


 フォルンは頭を下げて願い出る。態度の割には礼儀正しいな。


「え、嫌ですけど」

「なんで!?」


 フォルンは驚いて俺に詰め寄る。


「礼ならちゃんとする! なんならこの体を好きに――」

「それ以上は言ってはいけない!」


 俺はロリコンじゃない!


「じゃあ、どうしたらいいんだよ!?」


 フォルンは地団駄を踏みながら憤慨した。


「そもそも、なんで俺の武器を調べたいんだ?」


 俺は敬語をやめて、根本的な事から聞いてみた。


「アタイは鍛冶師として名はそれなりに売れているが、何時も剣や槍なんか、ありきたりな物を作るばかりだ」

「はあ」

「それで、まったく新しい武器を作りたいが、インスピレーションが湧かない。どうしたもんかと思った時にバンの噂を聞いたんだ」


 なるほど、それでリボルバーを調べたいと。


「ダメだ。教えられない」

「なんでだ!?」

「それは……」


 教えられる訳ないだろ。


 銃は人を容易く殺せる武器だなんて。


 この世界で普及している剣や槍、弓も鍛錬が必要だが、銃は引き金を引くだけで殺せる。


 こんな物が普及して、悪獣やモンスター退治ならともかく、人間同士の争いに使われて堪るか。


「……わかった。条件を言え」

「条件?」

「ああ、私に出来ることならなんでもする」


 ……そう言われてもなぁ。


 フォルンの目は本気だ。多分引かないだろう。


「バン、教えてあげたら?」

「ああ、別に困ることでもないだろ?」

「バン。流石にここまでされたら……」

「ノアもこの押し問答に飽きました」

「みんな……」


 なぜか、俺が悪役になっているし。


「バン……」

「ワン!」


 カナ、グレイ…お前らもか。


「……分かった」

「本当か!?」

「ただし、条件がある」

「言ってみろ!」


 俺は指を3つ立てて条件を提示した。


「一つ、この武器を世間に広めないこと。設計図も破棄しろ」

「いいぞ。別に売るつもりもないし」

「2つ、アシト山の悪獣討伐に道案内を頼みたい」

「それもいいぞ、何なら鉱山の中も案内してやる」

「いいのか?」

「ああ」


 聞けば、鉱石を求めてアシト山の鉱山に採掘をしていたらしい。逞しいな。


「で、最後の一つは?」

「俺に、新しい武器を作ってくれ」


 ◇


「ここがアタイの工房だ」


 フォルンに案内されたのは、アレト街の外れにある鍛冶屋の集まった場所の一角にある鍛冶場だった。


 どの鍛冶場も似たり寄ったりなのに、フォルンの工房は一回り大きい。


「ここを1人で?」

「ああ。武器の卸売りに、偶に他から見習いが来るから場所を貸している位だ」

「立派な工房なのに?」

「なに、親父が遺したのを使っているだけだ…客も来ないし」


 ロゼの褒め言葉に、フォルンはなにげなく言った。


「あ…すまん」

「気にするな。もう3年前の話だ」


 フォルンは気にせずに言ったが、鍛冶は1人で大丈夫なのだろうか?


「なあに、その時親父から免許皆伝は貰ったからな。腕は確かだぜ」


 フォルンは鼻を擦りながら自慢した。


「フォルンは何歳なんだ?」

「アタイはまだ50歳だ。若造だと思うなよ」


 ドワーフも長命種なのか。見た目は幼女なのに。


 そうして中に入り、鉄と何かが燃えた匂いが充満する、いかにもといった場所だ。


「さて、それじゃあ見せてもらおうか」


 俺はリボルバーを抜き、カウンターの上に置く。


「じゃあ、早速」


 フォルンはリボルバーを手に取り、色々弄りまわっている。


「どういう仕掛けなんだ?」

「こいつを使うんだ」


 俺はスピードローダーから銃弾を取り、フォルンに見せる。


「ここの雷管と呼ばれる場所を銃の撃鉄で打って、中の火薬を爆発させるんだ」

「火薬ってなんだ?」


 あ、そこからなのね。


「火に触れると爆発する粉だ。製法は知らん」

「ふーん……どうやって仕入れているんだ?」

「企業秘密だ」

「そうか」


 フォルンはがっかりした様子も見せず、リボルバーを触る。


「うん、大体構造は分かった」

「見ただけで?」


 分解もしていないのに?


「アタイは武器の声が聞こえるんだ」

「武器の声? ギフトか?」

「いや、ギフトとは違うな。昔から分かるんだよ」


 それはすごい能力だ。


「それで、作って欲しい武器ってなんだ?」

「ああ、それは……」


 俺は覚えている限りの武器の説明をする。


「なるほど……作ってみるよ」

「ありがと。どのくらい掛かる?」

「明日には終わるよ」


 早っ!?


「まあ、見てな」


 驚いている俺の顔を見てか、フォルンは鉄塊を手に取る。


「『操錬』」


 すると、フォルンの持っていた鉄塊がぐにゃりと動き、形が変わっていく。


「おー」


 その光景にカナが珍しそうに見て感嘆した。


 鉄塊は見る見る変わっていき、あっという間に一振りのダガーに変わった。


「これがアタイのギフト『操錬』だ。素材の形も強度も思いのままだ」

「すごいな」


 まさに、鍛冶の為のギフトと言っていい。


「ま、槌を振るってやるのが基本だがな。ギフトは特別製だ」

「それは助かる……代金は?」

「いらねえよ」


 俺が金を払うと言ったが、フォルンはそれを拒否した。


「こっちが無理言って見せてもらったんだ。金はいらねえ」

「…そうか。だが、せめて材料費だけは払わせてくれよ」

「律儀なやつだな…嫌いじゃないぜ」


 そう言って、フォルンは笑った。


「明日の朝に来な」

「分かった」


 俺は代金をフォルンに渡して工房を出た。




 翌朝。


 俺は早速フォルンの工房に行く。


 残りのメンバーは買出しと言う名のショッピングに出かけた。


「来たぞ」

「おう、待ってたぜ」


 フォルンは待ってましたとばかり俺を出迎えた。


 ただし、疲れた顔をしており、目の下に隈が出来ていたが。


「寝てないのか?」

「ああ、久しぶりに楽しくて徹夜しちまった!」


 大丈夫なのか?


「それより見てくれ!」


 そう言ってフォルンが取り出したのは木と金属が組み合わさった1本の棒。


「これはなんていうんだ?」

「これは……ライフルだ」


 俺がフォルンに頼んだのは、1丁のライフルだった。

次回「ライフル」

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