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ダンジョン&ガンマン  作者: コウ
4章 温泉と鍛冶師
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3話 温泉街

 ブロロロロー!


 エンジンを吹かしながらバイクは進む。


「バン、どうだ乗り心地は?」

「最悪です! あと土煙で目と口が!」


 地面が均されただけの道は凹凸が激しく、サスペンションが効いてても激しく揺れる。あと、ゴーグルとマスクが欲しい。


 とりあえず持っていたタオルで口を覆う。これでだいぶマシになった。


「それだけ言えれば大丈夫だな!」


 レオは笑いながら俺の文句を聞いた。


「ほら、これ付けてろ」


 そう言って渡されたのはゴーグルだ。フレームは金属で帯状の紐で調整する。レンズはガラス製。こういうのは異世界でも変わらないんだな。


「いいんですか?」

「ああ、予備だから大丈夫だ」

「では遠慮なく」


 ゴーグルを付けると、目が開けるようになり、ようやく前が見えるようになった。


「到着までもう少し掛かる。我慢しろよ」

「はい!」


 こうしてしばらく道なりを進むが、トラブルは起きた。


「ちっ悪獣だ!」


 突如として後方から現れたのは、ジャガーに似た悪獣だ。


 疲れないのか、ものすごいスピードで俺達を追従する。


「どうするんですか!?」

「狙いは私達護衛だ! 対策はある」


 レオはそう言うと、丸いボール状の石をスチームサイクルに設置された鞄から取り出した。


「食らえ!」


 レオは石を後方に投げると、石は爆破、四散して破片が悪獣を襲う。


 だが――。


「くそ! 外したか!」


 悪獣には当ることなく、スピードを更に加速させて走り出す。


 他の護衛も投げつけるが一向に当らない。


 このままじゃ追いつかれるな。


 レオのスチームサイクルは俺が乗っているから真っ先に狙われるだろう。


(なら)


「俺がやります! レオさんは運転に集中を!」

「そういえば冒険者だったね! 頼むよ!」


 レオが前に集中し、俺はリボルバーを抜き、片手で構える。


 バンバンバンバンッ!


「GYA!?」


 流石に高速で飛ぶ弾丸は躱せなかったか、だが俺も揺れるスチームサイクルの上で片手での射撃。弾丸は悪獣の前足に1発だけ当たり、悪獣はスピードを落とす。


 本音を言えば仕留めたかったが、これで追ってこれないだろう。


「もう大丈夫です」

「やるじゃないか! あのすばしっこいヤツに傷負わせるなんて」

「まあ、このくらいは」

「あとで1杯奢るよ」


 レオも安心したのか、軽口を叩けるようになった。


 それ以降は特に悪獣に遭遇する事もなく、無事にアレト街に辿り着いた。




「じゃあなー」


 アレト街の入り口に着いて、レオたち護衛組みと別れた後レン達を降ろしたバス停に向かう。


「災難だったわね」


 バスから悪獣との闘いを見ていたのだろう。レン達と合流して、第一声が慰めの言葉だった。


「ほんとにな…まあ、いい物貰えたし、いいか」


 俺の首にはさっきまで付けていたゴーグルが掛けられている。


 悪獣退治の御礼としてレオから貰った物だ。


「ところで……アウルムは大丈夫か?」


 アウルムは車酔いで虚ろな目をして、完全に死に体だ。今はノアにおんぶされている。


「暫くしたら戻るわよ…さあ、行きましょう」


 レンは気にせず先頭を歩きアレト街に入る。


 流石温泉街と言った所か、至る所に旅館があり、お土産屋も充実していた。


「街の手前が温泉街で、奥が採掘場と鍛冶屋が盛んみたいだな」


 何処から手に入れたのか、街のパンフレットを持ってロゼが説明してくれた。


 鍛冶屋か……俺の短剣も新調しようかな。


 色々酷使してきたので、研ぎ直してもらうのも手か。


「とりあえず、協会が手配した旅館に行きましょう」

「オレが案内しよう」


 パンフレット片手にロゼが道案内をする。


 そうして着いた温泉旅館は――。


「……本当にここか?」

「ハクビ旅館はここで間違いないな」


 通りに面していた旅館と違い、でかく豪華な建物だった。


「豪華ですねー」


 道中、回復したアウルムがポツリと言いこぼす。


「えらく協会は奮発してくれたな」

「それだけ、バンに謝礼をしたかったんでしょうね」


 別に気にしなくて良かったのに。


「ま、好意に甘えましょう」

「ねえ、はいろう!」

「そうだな」


 カナが急かし、俺達はハクビ旅館に入る。


「いらっしゃいませ。バン様ご一行ですね」


 事前に知らされていたのか、受付の女性が丁寧に迎え入れてくれた。


「はい、そうです」

「それではお部屋に案内いたします」

「動物は大丈夫ですか?」

「問題ありません。ただ、トイレの管理はしっかりしていただくと」

「だってさ」

「ワン!」


 グレイは「分かっている!」と一吼え。


 まあ、賢いヤツだから、そこは大丈夫か。


 そうして案内された部屋は豪華で、全員が寝泊りできるほどの広さだった。


 だが――。


「一部屋だけですか?」

「はい。予約はここだけです」


 ……マジか。


 さすがに女性だけの部屋に男1人は気まずい。


「男の俺はどうすればいいんだ?」


 1人個室を取るか?


「別にいいんじゃない?」

 

 レンは気にする様子もなく言い放った。


「ダンジョン探索の時も一緒に寝てるんだし」

「それとこれとは話が別では?」


 一応反論するが、


「オレも別にいいぞ」

「私も大丈夫です」

「ノアも構いません……妙なことをしたらあそこを切り取りますが」


 全員が反対しなかった……ノアの発言が怖いが。


「バン、私と一緒はいや?」


 カナが眼を潤わせながら聞く。


「……わかった。お邪魔するよ」


 俺は折れて、同室する事にした。


「それじゃあ、協会に行くか」


 俺は荷物を置いて、協会に行く事を提案した。


 ダンジョンがなくても、協会はある。


 主にワーカーとしての依頼があるからだ。


「依頼の詳細を聞いとかないと」

「何言ってんの?」


 俺の発言にレンが怪訝な顔をした。


「何って…その為に来たんだろ?」

「そんなの明日でいいわよ……それより、温泉でしょ!?」


 レンの発現に全員がウンウンとうなずく。


「えー?」

「依頼を見る限り、今の所人的被害もないみたいだし、もう遅いし、私達は移動で疲れているわ。まず、疲れを取らなきゃ」


 それは言い訳で本音は温泉に入りたいだけだろ。


「ここの温泉、疲労、肩凝り、腰痛に効いて、なんと! 美肌効果もあるらしいわよ」

「それならはいらないとなー。オレつかれてるしー」

「そうですねー。まずはつかれをとらないと」


 ロゼッタ、アウルム、喋り方が棒読みだぞ。


「温泉入りたい!」

「ノアも日頃の疲れをとりたいです」


 カナとノアは素直だなー。


「ワンワン!」


 グレイ、おまえもか。というか入れるのか?


「分かった。今日はゆっくりしよう」


  俺も折れて、温泉に入ることにした。


 ◇


  女湯にて。


「ちっ!」


 レンがロゼ、アウルム、ノアの裸体を見て舌打ちした。


 ロゼとアウルムはスレンダーで筋肉質でありながら、出るとこはでて、腰もくびれている。


 特に目を引くのがノアだ。


 頭と同じ程の大きさの胸を見せつけんばかりに披露している。


 レンは自分の寸胴の身体に平べったい胸を見た。


「…世の中不公平だわ」

「レンお姉ちゃん、どうしたの?」


 カナがレンの様子を伺い、近寄ってくる。


「カナちゃん! 私の味方は貴女だけよ!」

「きゃ!?」


 レンはカナに抱きついて、カナを驚かせる。


 カナは、レンと同じ体格にシンパシーを感じていた。


 ……まあ、カナはまだ子供だからこの後の成長に目を背けていたが。


「レン、お前と違ってカナはまだ成長期だぞ」

「あー聞こえない!」


 ロゼの言葉にレンは耳を塞いだ。


「レンさんは美人ですから、気にしなくてもいいのでは?」

「そうです。こんなの重たくて肩が凝るだけですよ」

「そんなこと、持ってる人に言われたくない!」


 アウルムとノアの言葉は、レンに敵対心を募らせるだけだった。


「なんでそんなに気にするんだ? むかしは全然気にしてなかっただろ」

「それは…」


レンの脳裏に、チラリとバンの顔が浮かんだ。


「好きな人でもできたの?」

「そ、そんな事ないわよ!」


 カナの言葉に、慌てて否定したが、


「怪しいな」

「そうですね」


 ロゼとアウルムはレンの様子にニヤリとした。


 まるで、新しいオモチャを見つけた感じだ。


「いるんだろ? 白杖しろよ」


 ロゼは青く塗られた爪で、レンの頬をつつく。


「そう言うアンタ達はどうなのよ!?」

「オレ(私)?」


 レンは誤魔化す様に、2人に問い詰める。


 2人の脳裏に、ふとバンの横顔が浮かんだ。


「べ、別にオレは何もないぞ」

「わ、私もです…」

「怪しいなぁー」


 2人の様子に、意趣返しをしようとレンが詰め寄る。


「わたしはバンが好き。だってもうお嫁さんになったし」


 カナの発言に、3人は固まる。


「カナちゃん。結婚はまだ早いかなー」

「そうそう。まだ結婚できる歳じゃないし」

「カナちゃん? お嫁さんは大人になってからですよ?」


 三者三様、カナの発言を慌てて横槍を入れる。


「やれやれです」


 4人の姦しい会話を、ノアは遠くから眺めていた。




 一方男湯では、


「良い湯だなー」

「ワウー」


 1人と1匹は、女湯の一悶着を知ることなく、のんびり温泉を堪能していた。

次回「鍛冶屋」

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